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ETS(排出権取引スキーム)とは・意味

ETS

ETS(排出権取引スキーム)とは?

ETSとは、英語で「Emission Trading Scheme」の略で、日本語では「排出権取引スキーム」と呼ばれる。気候変動を生じさせる温室効果ガスを排出する権利を取引することを意味する。

排出権取引スキームは、京都議定書を背景に生まれた概念である。京都議定書では、温室効果ガス削減の自助努力に加えて補完的かつ途上国の持続可能な開発に寄与する措置として、京都メカニズムが定められた。

京都メカニズムとは、先進国が他国の温室効果ガスを削減した場合、その削減量も自国内での削減とみなされる、という仕組みである。これにより、世界全体の温室効果ガス削減を費用対効果に優れた形で実現できることになった。

ETSの二つの方式を解説

排出権取引スキームには主に、キャップ&トレード方式と、ベースライン&クレジット方式がある。

キャップ&トレード方式

キャップ&トレード方式とは、国や企業などの個々の主体に、温室効果ガスの排出可能量である排出枠(キャップ)を割り当て、過不足を売買させる仕組みである。この方式では、排出枠が決まる結果、全体の実際の排出量が削減される可能性が高まるとことが特徴的だ。また、削減に自力で取り組む場合と排出取引をした場合を比べて、コストが低い方を選択すればよく、国や企業にとっても効率的な選択ができる。

キャップ&トレード方式の導入事例として、EU(欧州連合)のEU-ETSがある。これは、EUのエネルギー気候変動政策枠組みの中でも約4割の排出量をカバーする主要な取り組みとして位置づけられている。

他にも、カナダ、米国、豪州、ニュージーランドの国内排出量取引制度、東京都の環境確保条例などが挙げられる。また、国際排出量取引における事例として、グリーン投資スキーム(GIS)がある。これは各国の削減目標達成のため、環境関連プロジェクトへの資金利用を条件に、先進国同士が排出量を売買する制度だ。

ベースライン&クレジット方式

ベースライン&クレジット方式とは、温暖化対策をしなかったときに排出されると予想される量を基準(ベースライン)とし、実際に排出した量との差を認証排出削減量と認定し、売買すること。先ほどの排出枠(キャップ)による規制がない地域でも排出削減を進められることが特徴的である。

ベースライン&クレジット方式の導入事例として、日本における国内クレジット制度がある。また、国際排出量取引における事例として、クリーン開発メカニズム(CDM)が挙げられる。これは、先進国と途上国が共同で事業を実施し、その削減分を投資国(先進国)が自国の目標達成に利用できる制度である。

排出権取引の課題

排出権取引の課題として、カーボンリーケージ(炭素リーケージ)の問題がある。カーボンリーケージとは、先進国における温室効果ガスの排出削減のための規制導入によ り、国内産品がそのような規制を受けていない 海外からの輸入産品によって代替されるようになり、結果的に地球全体の温室効果ガスの排出が減らないことだ。

これは、温室効果ガスの規制が厳しい国の産業と規制が緩やかな国の産業との間で国際競争力に差が生じることに起因する。規制が厳しい国の生産・投資が縮小し排出量が減る一方、規制が緩やかな国でも生産・投資が拡大しCO2排出量が増加。取引をしたのに、環境負荷が変わらないことが問題となっているのだ。

また、排出権取引を積極的に利用しすぎると、排出量を削減する努力をしなくても、他国や企業から購入すれば良いといった発想になってしまい、削減のための新たな技術開発への優先度が下がる懸念も指摘されている。

まとめ

このように、ETS(排出権取引スキーム)は、温室効果ガスを排出する権利を取引することであり、特に欧州の国々を中心に積極的に進められている。

実際、この取引スキームはカーボンリーケージの懸念など、課題も多いのが事実だ。環境だけでなく社会的な問題(国と国の競争力の摩擦など)の解決と同時並行で進めていくことが求められている。

【参照サイト】独立行政法人経済産業研究所「排出量取引制度について」
【関連記事】EU-ETSとは・意味

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