ジェンダー・ノンコーフォーミングとは・意味
ジェンダー・ノンコンフォーミングとは?
社会的に受容される性をあらわす「ジェンダー(Gender)」と、従わない・準拠しない といったことをあらわす「ノンコンフォーミング(non-conforming)」をかけあわせた言葉。
社会的に期待される「ジェンダー規範」に異議を唱える人や、抗う人を表す言葉である。簡単に言うと、男の子ならブルーで女の子ならピンク、女性はスカートやヒールを履くのがマナー、など、「それぞれの性がどうあるべきか」というその社会で信じられてきた価値観に従わない、または覆したい、という考えだ。
ジェンダー規範に当てはまらない行動や服装、嗜好、考え方などを指す言葉としても使われる。
ジェンダー・ノンコンフォーミングの考えの背景
ジェンダー・ノンコンフォーミングという言葉は社会的・文化的な背景から生まれた。
たとえば、ある特定の社会で、女性は足の毛を剃ることが、男性は弱さを見せないことが求められるとする。しかし私たちの多くが、このジェンダー規範に完全に当てはまるかというとそうではない。ある意味では、ほとんどの人がジェンダー・ノンコンフォーミングといえる。とはいえ、誰もがそうかというと必ずしもそうとは限らない。
ジェンダー・ノンコンフォーミングという言葉を使うかどうかは、自分で決めることだからだ。この言葉を、自分のアイデンティティの一部だと考える人がいる一方で、アイデンティティというより決断や行動の一部であると感じる人もいる。
そして、「女は/男はこうあるべき」というジェンダー規範が、時代やシステム、宗教、文化によって異なることを忘れてはならない。ある文化圏では不適合とされることが、別の文化圏では歓迎される場合もある。たとえば、女性が足の毛を剃る代わりに伸ばすことが期待されている文化では、逆に足の毛を剃ることがジェンダー・ノンコンフォーミングとなる。
ジェンダー・ノンコンフォーミングは、必ずしもクィアやノンバイナリーであることを意味しないが、その両方である可能性もある。
クィアやノンバイナリーとの違いは?
関連する言葉に、クィアやノンバイナリー、ジェンダーフルイドや、Xジェンダー、クエスチョニングなども言葉が挙げられる。
それぞれの特徴と違いを以下に記す。
■ 性的マイノリティを包括する言葉
- クィア:すべての性的マイノリティのこと。クエスチョニングと同じくLGBTQの「Q」にあたる
■ 性的マイノリティに関して、違いを持つ言葉
- ジェンダーフルイド:性が流動的。状況や時間によって、性が変わる。
- Xジェンダー:自身の性自認を「男性・女性」という二つの枠組みに当てはめない。性的指向に関しては不問
- ノンバイナリー:自身の性自認を「男性・女性」という二つの枠組みに当てはめない。さらに、どの性別として振舞うか、どのような恰好をするかなどの「性表現」も従来の性の枠組みに当てはめない。性的指向に関しては不問
- クエスチョニング:性自認・性的指向の2つが定まっていない、あえて決めていない
一方、ジェンダー・ノンコンフォーミングは多くの場合、性自認としてではなく、行動や性表現(ファッションなど)などの文脈として書かれることが多い。もちろん性自認を表すのにジェンダー・ノンコンフォーミングを使う人もいる。
だからジェンダー・ノンコンフォーミングはクィアかもしれないし、ジェンダー・フルイドかもしれないが、常にそうとは限らない。ジェンダー・ノンコンフォーミングであることは、ノンバイナリーであることと同じではないが、両方の言葉を使い分ける人もいる。ジェンダー・ノンコンフォーミングになるために、ノンバイナリーになる必要はない。
誰でもジェンダー・ノンコンフォーミングになれるのか
YES。どのような性別の方も、その社会で期待されている役割をしないことができる。ジェンダー・ノンコンフォーミングという言葉は、女性的、男性的、アンドロジナス(※1)的な特徴やこれら3つが合わさった特徴を含むことができるからだ。
※1 「男女両性の特徴をもつ」の意。性の差異を超えて自由に考え行動しようという考え方。「アンドロギュノス」とも。(出典:小学館 – デジタル大辞泉)
例として、性自認と生まれ持った性別が一致している男性(いわゆるシスジェンダーと呼ばれる)が、自分の爪にマニキュアを塗るとする。この行動は“自身の性自認と性表現を「男性・女性」という二つの枠組みに当てはめない”ノンバイナリーであることを意味するものではないが、その一方で、まだまだ「男性がネイルをするなんて」といった考えが色濃い社会においては、そのジェンダー規範に当てはまるのをやめる方法、すなわちジェンダー・ノンコンフォーミングにはなり得る。
とはいえ、「ジェンダー・ノンコンフォーミングである」と表現するかどうかは自分で決めることができる。すべては個人の好みの問題であり、どんな言葉が自分に当てはまるのか、どう表現したいかを決めるのは自分自身であることを忘れてはならない。
既存の典型的な男らしさ、女らしさに当てはまらず、それら両方の特徴を併せ持っていたり、そのどちらでもなかったり、その間の特徴を持っていたりする。
まとめ
ジェンダー・ノンコンフォーミングの定義は、社会的に期待された性別ごとの役割や行動などに沿わないことである。
ほとんどの人は社会的に期待されているジェンダー規範に完全に当てはまるわけではない。そして人間の「性」は多様性に満ちている。性別の表現には正解も不正解もないことを忘れないでほしい。自分の性別はどのように表現しても良い。ジェンダー規範に「当てはまる」かどうかに関わらず、自分の人生をまっすぐ生きることを考えることが重要だ。
【参照サイト】What Does It Mean to Be Gender Nonconforming? 12 Things to Consider
【参考文献】アシュリー・マーデル著、須川綾子訳『13歳から知っておきたいLGBT+』(ダイヤモンド社、2017年)
【関連ページ】クィア(Queer)とは・意味
【関連ページ】ノンバイナリーとは・意味
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