Browse By

ジェンダーロール(性役割)とは・意味

ジェンダーロール

ジェンダーロール(性役割)とは?

ジェンダーロール(性役割)とは、性別に基づいて社会的、文化的に適切または望ましいとみなされる役割(態度や属性、行動など)を期待されること。またその役割のことである。例えば、「男性が外で働き、女性は家事や子育てをするもの」といった性別に基づく役割の固定観念などが挙げられる。

「男らしさ」「女らしさ」といった男女の役割に対する概念が中心となっているが、期待される内容は、民族や地域によって異なる場合があり、また時代によっても変遷がある。

似た言葉にジェンダーアイデンティティが挙げられる。これは自分の性に対する自身の内的感覚による認識のことで、このジェンダーアイデンティティが外在化されることで社会的な役割であるジェンダーロールが発生する。

また、ジェンダーステレオタイプもジェンダーロールと同じく性別に対する固定観念のことを指すが、ジェンダーステレオタイプのほうは役割だけでなく、「男の子は青」「女の子は赤」といったイメージや印象も含まれるのが違いである。

ジェンダーロールのタイプ

世界のすべての地域に該当するわけではないが、内閣府男女共同参画局が実施した性別の役割に関する調査研究(※1)の測定項目でも挙げられているように、ジェンダーロールは大きくは下記のような特徴で分けられる。ただし、これらは家父長制や、社会階級や性差が明確に階層化されていたヴィクトリア朝時代などの流れを汲み、ジェンダーが男女の2種であることを前提としているものである。

家庭・コミュニティ領域

  • 家事や育児を担当するのは女性
  • 男性は家を継ぐべき
  • 結婚したら女性は姓を変えるのが一般的
  • 男性は仕事をして家計を支えるのが当然

職場・職業領域

  • 組織のリーダーには男性が向いている
  • 事務作業やサポートの仕事は女性がやるべき
  • 育児を優先する男性は仕事へのやる気がない

 

性格や外見的特徴

  • 女性は感情的になりやすい
  • 男性は人前で泣くものではない
  • 女性は化粧をするべきだ
  • 男性は背が高くて筋肉質であることが望ましい

ジェンダーロールによる弊害

こうした固定観念は、押し付けることによって相手を傷つけたり、差別や抑圧を生んだりすることにもつながる。例えば男性は強くあることを求められ、過度なプレッシャーを与えられたり、女性は教育を受ける自由や行動制限を受けたり、男性に従属することを強いられることもある。また、LGBTQ+の人々は男女のどちらのカテゴリにも属さないことで生きづらさを感じるなど、社会的な疎外感を感じる原因にもなり得る。ジェンダーロールによって力の不均衡が生まれ、個々人が自分自身を正直に表現することを制限されることは、人々のメンタルヘルスや人間関係に良くない影響を及ぼす可能性が高い。

ジェンダーロールによる格差をなくす

依然として世の中にジェンダーロールの固定観念は存在している。しかしフェミニストたちによる男女平等を求める運動や、SDGsの採択で「ジェンダー平等の実現」の目標が掲げられたことなどにより、最近では人々のジェンダーに対する認識が変化している。性を男女に二分するのではなく、性的少数者を含めて性のあり方は一人ひとり異なることや、個々の人権を尊重するという考え方を受け入れることが広がりつつある。

ジェンダーロールによる格差をなくすために、有効な手段となるのが教育だ。実際、教科書などにおいてジェンダーに対する固定観念が描かれ、知らず知らずのうちにそうした考えが子供のうちから刷り込まれがちであるのも事実だ。

ユネスコの「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」では5歳からジェンダー・セクシュアリティ教育の対象となっている。ニュートラルに受け入れられる年齢から偏りのない教育を行うことで、差別やいじめを防ぐことができる。

また、ジェンダーロールによる性差別を見聞きした際に相手の立場に立った視点を持つことや自分が体験した際に、うやむやにせず、声を上げることも大事だ。性別ではなく、自分の希望や能力に基づいた役割を自分たち自身で選択できる機会を作っていくことが、ジェンダーの不平等をなくすことにつながる。

ジェンダーロールに対する取り組み

ここでは実際にジェンダーロールの問題に取り組み、ジェンダー平等を実現させている国と企業の例を紹介する。

アイスランド

アイスランドはジェンダー平等に関して最も先進的な国のひとつと言われている。実際、国会議員の男女比率は平等で、2018年には性別による賃金格差を禁止する法律を施行し、育休制度や子育て支援のインフラを充実させることで、ジェンダーギャップ指数で12年連続1位を獲得している。人々の意識の変化、実効性のある法律、それを支えるインフラの整備を国レベルで取り組んできたことで、平均4%の経済成長率を維持し、幸福度ランキングでも世界3位に入っている。

ロレアルグループ

世界最大の化粧品会社であるロレアルグループは、オランダのNGO「Equileap」による「Equileap Gender Equality Report and Ranking (世界ジェンダー平等ランキング)」の最初の発表依頼、7年連続で認定を受け、2024年には世界で9位、フランス国内ではトップの企業としてランクインした。ロレアルでは取締役会メンバーの半数、執行委員会メンバーの32%、全重要職位の57%、国際ブランドディレクターの62%を女性が占めている。また日本ロレアルでも女性の管理職の割合は54%、育児休暇取得後の復職率は100%を達成。その他にも男性の育休取得の促進や、女子中高生へ科学に対する啓発や支援を行い、ジェンダーバイアスをなくす取り組みを続けている。

まとめ

すべての人が平等であるためには、性別による役割分担をなくし、その人自身が誰であるかによって定義される社会の実現が求められる。日本は2023年のジェンダーギャップ指数で146ヵ国中125位と過去最低を記録し(※2)、先進国でも最下位となっている。国、企業、私たち個人がそれぞれ、あらためて意識や行動を見直し、幸福度を感じられる社会を創っていくことを目指したい。

※1 内閣府男女共同参画局 | 令和3年度 性別による無意識の思い込み (アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究
※2 EduTownSDGs | SDGs目標5. ジェンダー平等を実現しよう

【参照サイト】International technical guidance on sexuality education: an evidence-informed approach (jpn)
【参照サイト】Medium | The Roles of Men and Women in Modern Society; and How It Differs | by TLMUN Herald
【参照サイト】verywellmind | Understanding Gender Roles and Their Effect On Our Relationships
【参照サイト】Planned Parenthood | Gender Identity & Roles | Feminine Traits & Stereotypes
【参照サイト】WebMD | Gender Roles: What Are They?
【参照サイト】OHCHR | Gender stereotyping
【参照サイト】Yahoo! JAPAN SDGs | ジェンダー平等は経済力アップにつながる? アイスランドに学ぶ、誰もが生きやすい社会のヒント
【参照サイト】L’Oréal | ロレアルグループ、エクイリープが選ぶ世界で最もジェンダー平等なランキングで世界トップ10内に選出
【参照サイト】L’Oréal | 日本ロレアル 男性の育休促進 女子中高生への科学の啓発を通しジェンダー平等な社会の実現への貢献を宣言




用語の一覧

あ行
か行
さ行
た行
な行
は行

ま行
や行
ら行
わ行
A
B
C
D
E
F
G
H
I
J
L
M
N
O
P
Q
R
S
T
V
W
X
数字

FacebookTwitter