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グリーンコンシューマーとは・意味

グリーンコンシューマーとは

グリーンコンシューマーとは、“環境に配慮した”や“地球に優しい”などを意味する「Green」と、“消費者”を意味する「Consumer」を掛け合わせた造語。自身の消費行動の中で、環境に配慮された商品や、積極的に環境問題に取り組む企業の製品を選択し、地球環境の改善や、より良い社会の実現を目指す消費者のことを指す。

グリーンコンシューマーが誕生した背景

1970年代頃より、欧米では経済成長・人口増加が進む一方、産業廃棄物による汚染や環境破壊などが地球規模で拡大し、問題視されるようになった。また、1973年のオイルショック以降は、化石燃料に代わる再生可能エネルギーが注目され始めた。

こうした時代の中で、1988年、イギリス人のジョン・エルキントン(John Elkington)とジュリア・ヘイルズ(Julia Hailes)によって『グリーンコンシューマー・ガイド(The Green Consumer Guide)』が出版され、グリーンコンシューマーという言葉が広く知られるようになった。彼らは著書の中で、“You can buy products that don’t cost the earth(地球に負担をかけない製品を買うことができる)”と述べており、消費者の環境問題への意識が高まるきっかけとなった。

グリーンコンシューマーとしての行動

日本においてもその後、グリーンコンシューマーの概念を広める活動が各地で行われるようになり、平成12年の環境白書には「グリーン購入」という言葉が登場した。この白書の中では、複数の民間団体で構成されたグリーンコンシューマー全国ネットワークが提唱する「グリーンコンシューマー10原則」が紹介されている。

グリーンコンシューマー10原則

1. 必要なものを必要なだけ買う
2. 使い捨て商品ではなく、長く使えるものを選ぶ
3. 包装はないものを最優先し、次に最小限のもの、容器は再使用できるものを選ぶ
4. 作るとき、使うとき、捨てるとき、資源とエネルギー消費の少ないものを選ぶ
5. 化学物質による環境汚染と健康への影響の少ないものを選ぶ
6. 自然と生物多様性を損なわないものを選ぶ
7. 近くで生産・製造されたものを選ぶ
8. 作る人に公正な分配が保証されるものを選ぶ
9. リサイクルされたもの、リサイクルシステムのあるものを選ぶ
10. 環境問題に熱心に取り組み、環境情報を公開しているメーカーや店を選ぶ

上記のような原則を見ると、グリーンコンシューマーは消費を削減したり、我慢をしたりしなければならないと思われるかもしれない。だが、ただ消費行動を控える考え方が推奨されているわけではなく、「どうすればごみを多く排出しないか」「どうすれば気候変動を抑えられるか」といった視点が設計段階から織り込まれた製品、サービスを選択することが目的とされている。

グリーン消費における課題

現在では、気候変動への危機感の高まりなどから、グリーン消費を始める人が増えつつある。しかし、依然として世の中の大きな潮流にはなっていないという見方もある。

その理由としては、環境に配慮し設計された商品は、そうでない商品と比べて比較的高価であり、経済的に余裕がなければ買い続けることが難しいこと、地域によっては環境に配慮された商品を取り扱う店舗が少なかったり、商品カテゴリーによっては環境や人に配慮された製品がなかったりするなどが考えられる。そのほか、製品の情報や供給が足りていないという側面もある。

企業や行政に求められる取り組み

2019年、ブリティッシュ・コロンビア大学の教授らが『Harvard Business Review』で発表した記事では、消費者に実際に行動を起こしてもらうアプローチとして下記の5つを提案している。

1. 社会的影響力を利用する
・周りの人々が何を選択し、どう行動しているかを示す
・自身がとった行動を周囲に伝えさせる
・相対的な比較をする

2. 良い習慣を形成する
・通勤、買い物、食事、ゴミ出しなど人々が習慣として行っていることの中に、持続可能な行動をデフォルトの選択肢として設定する
・「促す」「フィードバックする」「インセンティブを与える」を繰り返し習慣化する

3. ドミノ効果を活用する
・人々が一貫性を好む習性があることを活かし、小さな行動からスタートし、より意味ある行動へつながる動線を作ることでプラスの波及効果を生む

4. 心や脳に語りかける
・肯定的な感情を与え誇りを持たせたり、適度な罪悪感を持たせ心理的影響を与えたりするなど心に訴えかける
・一方で、具体的な数値や例を示し、どういった効果が得られるのかなど、脳に語りかけ納得させるなど、状況やターゲットによってそれぞれの側面から提案する

5. 所有よりも経験を優先する
・物質的な商品ではなく、体験型ギフトなどを贈ることで、廃棄につながらない持続可能な消費を楽しんでもらう
・シェアリングサービスを通じてカーボンフットプリントを減らすことに参加する、使用後の製品をリサイクルしてもらうなどサスティナビリティを体感してもらう

こうしたマーケティングの力で消費者により良いメリットを示し、サステナブルな消費を魅力的なものにすることは企業側に求められると同時に、グリーン消費の促進には、行政による働きかけも不可欠である。たとえば、ごみの分別回収や環境教育、さらには制度を整えたり正しい情報を伝えたりするなど、人々が環境保全への取り組みを持続的に行うことができるよう、枠組みを作る必要がある。個人、企業、行政がそれぞれの役割を理解し、手を取り合って積極的な行動を起こしていくことで、より大きなインパクトは生まれていく。

気候変動や環境汚染による地球の変化は人間を待ってはくれない。「もの」や「お金」を豊かさの象徴としていた時代から大きく転換することが求められている今、人のつながりや時間を大切にし、人間らしく生きる本当の豊かさを暮らしに取り入れていくため、グリーンコンシューマーとしての行動は、我々に与えられた一つの提案である。

一人の行動は小さなものでも、個人個人がより良い消費を選択していくことで、マーケットや社会を変えていく原動力となるのである。

【参照サイト】環境省 平成12年環境白書 ‘第2章 第3節 個人の環境保全への取組と他の主体に与える影響’
【参照サイト】Harvard Business Review ‘The Elusive Green Consumer’
【参照サイト】環境市民 ‘グリーンコンシューマーとは’




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