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グリーンスチールとは・意味

グリーンスチール

グリーンスチールとは?

グリーンスチールとは、温室効果ガスが発生しない、もしくは排出量が極めて少ない方法で製造された鉄のこと。

製造過程で発生する温室効果ガスを抑えた金属は、グリーンメタルと呼ばれている。グリーンスチールはその一例であり、その他にグリーンアルミニウム、グリーンステンレス等が挙げられる。

なぜグリーンスチールが注目されるのか

2050年の温室効果ガス排出量ネットゼロ(カーボンニュートラル)実現を目指し、各国、各企業が脱炭素化に取り組んでいる。例えば欧州委員会は、様々な製品やサービスに関するカーボン・フットプリントの開示義務化を検討している。2024年7月1日からは、バッテリーに関連したカーボン・フットプリントの申告が義務化される予定だ。

カーボン・フットプリントと向き合う上で避けることのできない課題が、金属の二酸化炭素排出量である。多くの製品に用いられる金属は、鉱石の採掘・輸送から各金属の製造・輸送等、サプライチェーンの各段階で大量の二酸化炭素が排出されるためだ。

また日本では、産業部門別の二酸化炭素排出量において、鉄鋼業部門が全体の約4割を占めている。グリーンスチールは、カーボンニュートラル実現のために重要な役割を担っているのだ。

グリーンスチールに向けた動き

欧州政府は、グリーンスチールの製造に向けて積極的な水素戦略を打ち出している。従来の製鉄プロセスでは、石炭を還元剤及び燃料として用いている。石炭を蒸し焼きにしたコークスと鉄鉱石や石灰石を高炉に投入し、高温に加熱することで、鉄鉱石から酸素を除去する還元を行い、鉄鋼の鋼材となる銑鉄を生成するのだ。しかし、還元プロセスやコークスを作るプロセスで大量の二酸化炭素が発生するのが課題であった。

このような状況を打開するため、還元剤をカーボンフリーの水素に置き換え、またエネルギーを水素やカーボンフリーの電力に切り替えることで、製鉄プロセスのネットゼロを目指している。以下は、こうした欧州政府や企業の動きの一例である。

  • 世界鉄鋼大手のアセロール・ミッタル(Arcelor Mittal Europe)は、2020年から水素技術を用いたグリーンスチールの開発を開始
  • ドイツ政府は、同国の鉄鋼メーカー、ザルギッター・AG・グループ(Salzgitter AG group)のグリーンスチール生産に向けた水素プロジェクトへの支援(500万ユーロ、約6億5000万円)を発表(2020年)
  • ドイツのエネルギー会社STEAG GmbH、鉄鋼最大手のティッセンクルップ(thyssenkrupp Steel Europe AG)、電解設備メーカーのティッセンクルップ・ウーデ・クロリン・エンジニアーズ(thyssenkrupp Uhde Chlorine Engineers)の3社が、グリーンスチール生産のための共同水素プロジェクトを発表(2020年)
  • 欧州委員会の外郭団体であるEIT イノ・エナジー(EIT InnoEnergy)は、グリーンスチール生産に向けたスウェーデンの水素プロジェクトへの支援(50億ユーロ、約6,500億円)を発表(2020年)

また、世界的自動車メーカーのBMWや、ドイツの大手自動車部品メーカーのシェフラーが、2025年以降グリーンスチールの調達に切り替えることを発表している。

グリーンスチールの課題

積極的な水素戦略により、グリーンスチールの需要の高まりが期待される一方で、課題もある。

  • 大量の水素を安価に安定供給するためのインフラ整備が必要となる
  • 水素を用いる電炉等に設備を移行する際、鉄鋼メーカーにとって巨額投資が必要となる
  • 近年、日本では高炉の設備寿命が20年を超えており、新設の高炉は設備寿命を25年以上として設計・建設されている。設備投資の回収も長期化傾向にあることから、将来的に水素を用いた設備に切り替えた場合、現在の高炉設備が座礁資産となるリスクがある
  • 初期のグリーンスチールはコスト高となる傾向にあることから、自動車業界等、鉄鋼の大口需要家に需要をけん引してもらい、コスト増加と消費者負担の増加を抑える必要がある

まとめ

カーボンニュートラル実現のため、普及が期待されるグリーンスチール。しかし、技術開発や設備投資における鉄鋼事業者の負担は大きい。政府の支援に加え、鉄鋼の大口需要者である産業界とのパートナーシップ等により、いち早いグリーンスチールの導入が期待される。

【参照サイト】グリーンスチールとは?日本の現状と企業の先進的な取り組みを紹介(脱炭素チャンネル)
【参照サイト】脱炭素で産業界のリセットを促すグリーンメタル【前編】(株式会社ブライトイノベーション)
【参照サイト】ArcelorMittal Europe to produce ’green steel’ starting in 2020(ArcelorMittal Europe)
【参照サイト】日本におけるグリーンスチールへの道、脱炭素製鉄への転換をめざして(自然エネルギー財団)




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