ヘイトスピーチとは・意味
ヘイトスピーチとは?
人種、出身国、民族、宗教、性的指向、性別、容姿、健康(障害)、経済的・社会的出自あるいは他のアイデンティティー要素など、自分から主体的に変えることが困難な事柄に基づいて、個人または集団を攻撃、脅迫、侮辱する発言や言動のこと。日本語では「憎悪表現」などと言われる。
ヘイトスピーチの形態として、スケープゴート化、ステレオタイプ化、汚名を着せるなどのスティグマ(偏見)化、軽蔑的な言葉の使用などがあるが、対象となるのは個人または個人からなる集団のみで、国家や国の機関、国の象徴または公務員に関するコミュニケーションや、宗教指導者や信仰上の教義に関するコミュニケーションは、ヘイトスピーチには含まれない。
ヘイトスピーチがなぜ問題か
憎悪がもたらす破壊的な影響は今に始まったことではないが、歴史的に繰り返されてきた残虐な犯罪の前兆としてヘイトスピーチがあった事例も少なくない。ナチスによるホロコーストや、ルワンダのツチに対するジェノサイド(集団虐殺)、ミャンマーのロヒンギャ難民の危機などもそれにあたる。
アメリカなどの学校で使用される「Pyramid of Hate(ヘイトのピラミッド)」(※)は、そうした仕組みを説明する概念図である。社会全体に「偏見や先入観」が蔓延すると、「偏見や先入観に基づく行為」が増え、このような行為が頻繁に起きると「差別行為」「暴力行為」 が発生しやすくなるということを表している。偏見や先入観から始まるヘイトスピーチを放置すると、そうした態度や行動は常態化し、さらにエスカレートすると憎しみによる暴力に発展し、ジェノサイドなどが起こりうる危険性を孕んでいる。
また、ヘイトスピーチによる影響は、憎悪を向けられた被害者に経済的・心理的ダメージを与えるだけではなく、日常生活を破壊し、地域社会での孤立をもたらしたり、地域の分断を生み出したりすることもある。
しかし、私たちが自分自身や他者、組織の偏った態度や行動に異議を唱えることで、偏見がエスカレートするのを阻止し、差別や憎しみが助長されにくい社会を作ることは可能だ。
オンライン上でのヘイトスピーチ
インターネットやSNSの普及に伴い、近年では従来のメディアに代わりオンライン上でのヘイトスピーチが急速に増加している。オンライン上のヘイトスピーチは、制作も共有も簡単なことに加え以下のような特徴がある。
- 永続性:一度インターネットやSNS上に掲載されたヘイトスピーチは取り消すことが難しいことが多く、半永久的に残るものもある。また、長く公開されることや拡散されることで加害者側の力が強くなり、被害者によりダメージを与えることにつながる。
- 巡回性:
労力やコストがそれほどかからないため、該当の投稿が削除されても、別のところで再投稿されたり、Webページが削除されても規制の弱い環境下で再度制作されたりするなど、何度も同じことが繰り返される。 - 匿名性:
オンライン上では仮名や匿名で投稿することも可能なため、「見つからないのであれば何を言っても構わない」といった心理が働き、表現がよりエスカレートする可能性が高い。
さらに、インターネットやSNS上のやりとりは国境を超え、複数の国で行われるため、1つの国の法律などで規制することが難しく、その対策には課題が残る。
国際社会や各国での取り組み
こうした状況を憂慮し、国連をはじめとする国際社会や、各国での対応の動きも広がっている。ここではそれぞれの取り組みを紹介する。
国際連合
国際連合では、1965年に「人種差別撤廃条約(あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約)」、翌1966年に「自由権規約(市民的及び政治的権利に関する国際規約)」を採択し、あらゆる立場における平等や人権の尊重や、プロパガンダや扇動につながる行為を禁止するなど国際社会の中でヘイトスピーチへの対策を試みてきた。
さらに、近年世界中で外国人嫌悪、人種差別、不寛容、暴力的な女性差別、反ユダヤ主義、反イスラム憎悪が拡大しているという憂慮すべき傾向を受け、アントニオ・グテーレス国連事務総長は2019年6月18日、「ヘイトスピーチに関する国連戦略と行動計画」を発表した。これはヘイトスピーチに取り組むことを目的とした国連全体として初めてのイニシアティブであり、各ステークホルダー間での協力が必要であることを謳っている。また2021年6月18日を「ヘイトスピーチに対抗するための国際デー」と宣言する決議を採択した。
EU
EU各国では、オンラインのヘイトスピーチに対する規制についても早くから取り組みを開始。2016年に「オンライン上の違法ヘイトスピーチに対抗する行動規範」を策定し、2022年には「デジタルサービス法(DSA:Digital Services Act)」を施行するなど、規制を強化している。
ナチスによるユダヤ人迫害の歴史を持つドイツはEUの中でこうした動きを先導してきた国のひとつだ。国内ユーザ数が200万人以上のプラットフォーム事業者に対し、違法コンテンツを嫌疑の内容に応じ、24時間以内または1週間以内に削除することを義務付ける法律「ネットワーク執行法(NetzDG)」を世界で初めて導入した。これに沿って各プラットフォームには半年ごとに調査結果の報告義務が課され、違反をした場合最大5000万ユーロの罰則金を支払わなければならない。
フランスやイギリスも早くからヘイトスピーチの問題に取り組んでおり、オンライン上のコンテンツの規制についても積極的な姿勢を見せている。
日本におけるヘイトスピーチ
2013年から2014年にかけて在日コリアンの人々に向けたヘイトデモや街宣がたびたび行われたことで社会問題となり、日本でもヘイトスピーチという言葉が広く認識されるようになった。こうした流れを受けて、国としても対策を講じるべきという動きがあり、2016年に「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」が施行された。この法律はヘイトスピーチを解消すべきものとし、国や地方自治体にそのための施策を実施することを求めているが、具体的な禁止や罰則は定められていない。そうした中、川崎市は2019年に日本で初めて、ヘイトスピーチを禁止し、違反に対し最大50万円の罰金を科す「差別のない、人権を尊重するまちづくり条例」を制定した。
日本は世界の中でもヘイトスピーチへの対策が遅れていると言われている。しかし近年一部のクルド人に対するヘイトスピーチがエスカレートしていることや、オンライン上のヘイトスピーチも社会問題となっており、国レベルでの早急な対策も求められている。
ヘイトスピーチと言論の自由
ヘイトスピーチを規制する取り組みに対し、しばしば引き合いに出されるのが言論の自由だ。自由に意見を述べたり表現をすることは人権の基礎となっており、これらを禁止することは人権侵害にあたるのではないかという議論もたびたび繰り返されている。しかし国連のアントニオ・グテーレス国連事務総長も「ヘイトスピーチに対処することは、言論の自由を制限または禁止することを意味するのではありません。それは、ヘイトスピーチがより危険なもの、特に国際法が禁じる差別、敵意、暴力の扇動へとエスカレートしないようにするということを意味します」と述べている。すべての人の平等と社会参加を実現するためにも、相互理解や配慮も必要だろう。
ヘイトスピーチをなくすために
世界ではオンライン、オフラインを問わず、様々な形でヘイトスピーチが発生しているが、どういった状況であれ決して許されるものではない。ヘイトスピーチを解消するために私たちはどういったことができるのだろうか?
- ヘイトスピーチについて学習し、理解を深める
- 情報を鵜呑みにせず、出どころや事実をきちんと確認する
- 憎悪に満ちた表現や誤った情報を拡散しない
- 寛容、平等、真実を広めるポジティブなメッセージを発信し、ヘイトスピーチや憎悪に満ちたコンテンツを弱体化させる
- ヘイトスピーチなどを見かけたらプラットフォーム管理者らに報告し、被害を防ぐ
グローバル化や多様化が進む今日、私たち一人ひとりが、個人を尊重し、異なる価値観や文化の違いを認め、対等な関係性を生む多文化共生の社会を育んでいくことが大切だ。
【参照サイト】United Nations |Say #NoToHate – The impacts of hate speech and actions you can take
【参照サイト】国連広報センター | ヘイトスピーチを理解する:ヘイトスピーチ VS 言論の自由
【参照サイト】UNESCO | What you need to know about hate speech
【参照サイト】京都府 | ヘイトスピーチと人権
【参照サイト】反差別国際運動(IMADR)| 香港、韓国、日本におけるヘイトスピーチ
【参照サイト】マルチメディア振興センター | EUで進むオンライン・ヘイトスピーチ規制議論
【参照サイト】東京新聞 TOKYO Web | なぜ今、クルド人ヘイトが増えている? 夜回りや被災地支援など「溶け込む努力している人たちもいること知って」
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- Climate Clock(気候時計)
- Climate Sience(クライメートサイレンス/気候沈黙)
- Climate Tech(気候テック)
- COP(国連気候変動枠組条約締約国会議)
- Country as a service
- Cradle to Cradle(ゆりかごからゆりかごへ)
- CSA(地域支援型農業)
- CSR(社会的責任)
- CSV(共通価値の創造)
- Cycle Logistics(サイクルロジスティクス)
D
E
- eスポーツ
- EBPM(証拠に基づく政策立案)
- Eco-DRR
- EdTech(エドテック)
- e-ヘルス(e-Health)
- ELSI
- Environmental Gentrification
- ESD
- ESG投資
- ETS(排出権取引スキーム)
- EUタクソノミー
- EU-ETS
F
- FaaS(Farming as a service)
- Fab Lab(ファブラボ)
- Farm to Fork
- FemTech(フェムテック)
- FinTech(フィンテック)
- First Movers Coalition(FMC)
- Flight shame
- FOMO(Fear of missing out)
- FSC認証
- FtM(Female to Male)
- FTSE4Good Index(フッツィー・フォー・グッド・インデックス)
G
- GHG排出ピークアウト
- GNR革命
- GovTech(ガブテック)
- Green Climate Fund(緑の気候基金)
- Green Dating
- GRI(Global Reporting Initiative)
H
I
- IaaS(Infrastructure as a Service)
- IIRC(国際統合報告評議会)
- Inner Development Goals(IDGs)
- InsurTech(インシュアテック)
- Internet of Abilities(能力のインターネット)
- Internet of Animals(動物のインターネット)
- Internet of Behavior(行動のインターネット)
- Internet of Customers(顧客のインターネット)
- Internet of Human(ヒトのインターネット)
- Internet of Skills(スキルのインターネット)
- Internet of Things(モノのインターネット)
- IPCC
- ISSB
- IUU漁業
J
L
- LAC(Living Anywhere Commons)
- LCA(ライフサイクルアセスメント)
- LEAPアプローチ
- LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)
- Learning by doing
- Less is more
- Life-Centered Design
- LOHAS(ロハス)
M
- MaaS(Mobility as a Service)
- MAPA(Most Affected People and Areas)
- MENA(ミーナ)
- Medtech(メドテック)
- MDGs(ミレニアム開発目標)
- MSC認証
- MtF(Male to Female)
N
O
P
Q
R
S
- SaaS(Software as a Service)
- 里山イニシアチブ
- SASB
- SBT(Science Based Targets)
- SBTs for Nature(Science-Based Targets for Nature)
- SDGsウェディングケーキ
- SDGsウォッシュ
- SFDR
- Shecession
- Shecovery
- SOGI(ソジ)
- SPO(Sustainable Public Equity Offering)
- STEAM教育