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間接差別とは・意味

身長計

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間接差別とは?

一見、性別などの属性において中立的な基準や取り扱いであっても、適用することによって、もう一方の属性に対して合理的理由もなく不利益を与えること。英語ではindirect discriminationという。反対に、例えば男女間で、女性であることを理由に不利益を与える場合などは直接差別となる。主に性別において用いられることが多いが、人種や障害に関することでも発生しうる場合がある。

間接差別という概念自体は1970年頃にアメリカで生まれ、その後ヨーロッパでも広まった。1979年に国連で採択された「女性差別撤廃条約」では直接差別も間接差別も同様にいかなる差別も認めず、男女の平等を定義している。日本ではこの条約の批准に際し、1985年に「男女雇用機会均等法」を制定した。しかしその後も女子差別撤廃委員会(CEDAW)から勧告を受け、2007年の改正時にようやく以下の3つについて、合理的な理由がなく講じた場合は間接差別にあたるとして禁止した。

  1. 労働者の募集や採用にあたって、身長、体重、または体力を要件とするもの
  2. コース別雇用管理における総合職の労働者の募集、採用にあたって、転居を伴う転勤に応じることができることを要件とするもの(※)
  3. 労働者の昇進にあたり、転勤の経験があることを要件とするもの

※ 2014年の改正では、さらに職種の変更・昇進についても間接差別とされるケースとして追記された

間接差別の例

先述した3つのケースをはじめ、具体的にどういった場合が想定されるのか、また合理的理由とはどういったものなのかを、ここでは紹介する。

(1)身長、体重、体力を要件とするもの

募集や採用にあたり、身長、体重、体力を要件とした場合に、女性の採用数が男性に比べ相当数少ない場合。また、これらの要件を満たしているものは平均的な評価基準でも採用されるが、要件を満たしていない候補者は、特に優秀な評価を得ていなければ採用されない場合など。

合理的理由として認められる場合

職務上着用しなければいけないものがサイズに合わないなどの職務関連性がある場合、機械を導入するなど他の方法で身長、体重、体力を補うことが難しい場合、またその他の方法を採用することが使用者側にとって過大な負担となる場合などは合理的理由として認められる。

(2)転居を伴う転勤を要件とするもの

募集や採用、また昇進にあたり、転居を伴う転勤に応じることができることを要件とした際、女性は結婚や出産などのライフステージ上の理由などで応募を断念せざるを得ないことが多く、女性の事例が男性に比べ相当数少ない場合。また、総合職の採用基準に転勤要件が含まれている場合など。

合理的理由として認められる場合

広域にわたって支店、支社があり、各地域での現場での業務の経験や、地域の特殊性等を経験することが幹部としての職務能力の育成に必要とする場合や、不正行為の防止などを目的とし、全国転勤を含む人事ローテーションが組織運営上必要とみなされる場合などは合理的理由として認められる。また、実際の運用にあたっては当該労働者の状況に配慮し、不利益を緩和する措置をとることや、事前の周知が必要である。

(3)学歴や学部を要件とするもの

募集や採用にあたり、一定の学歴や学部を要件とした場合に、女性の採用数が男性に比べ圧倒的に少ない場合など。

合理的理由として認められる場合

一定以上の学歴において期待される知識や教養、特定の学部において習得される専門知識などが、従事する職務との関連性があり、実際に遂行するにあたり必要とみなされる場合は合理的理由として認められる。

(4)住民票上の世帯主を対象とすることを要件にするもの

福利厚生の適用や家族手当等の支給にあたり、住民票上の世帯主を対象とすることを要件にしたことで、支給を受けられる女性の割合が男性に比べ相当数少ない場合など。

合理的理由として認められる場合

原資に制約があることなど、また対象でない側に不利とならない策を講じた場合に、使用者側に過大な負担が生じる場合は合理的理由と認められることがある。

(5)正社員の総合職を有利に扱うもの

処遇の決定や、福利厚生の適用などで、正社員の総合職を有利に扱い、一般職やパートタイムの従業員を除外したことで、有利な処遇を受けられる女性が男性に比べ相当数少ない場合など。

合理的理由として認められる場合

職務の内容や人材活用の仕組みや運用、労働者の定着に対する期待が実質的に異なる場合などは合理的理由として認められることがある。

日本以外での規定等

EUで2006年に施行された「雇用及び職業における男女の機会均等及び均等待遇の原則の実施に関する指令(Directive 2006/54/EC)」をはじめ、ドイツ、スウェーデンなどのヨーロッパ諸国や、アメリカなどでも間接差別に関する規定を設けている。その中でイギリスでは2010年に平等法を定め、下記の9つを保護特性として掲げている。男女間におけるものだけでなく、様々な場面での間接差別を定義し取り組みを行っている。

  1. 年齢
  2. 障害(メンタルヘルス合併症を含む)
  3. 性別変更
  4. 結婚およびシビル・パートナーシップ
  5. 妊娠・出産
  6. 人種
  7. 宗教・信条
  8. 性別
  9. 性的指向

日本における女性への間接差別の初認定

2024年5月13日、大手ガラスメーカーAGCの子会社「AGCグリーンテック株式会社」の社員で一般職の女性が、総合職のみが利用できる社宅制度は実質男女差別ではないかと訴えた裁判で、東京地方裁判所がこれは男女雇用機会均等法における「間接差別」にあたると認めた。これにより同社は当該女子社員に対して387万円の賠償金を支払うことを命じられた。

同社が実施していた家賃の8割を補助する借り上げ社宅制度は、総合職の社員にのみ適用されていた。一方、一般職に対しても住宅手当は支給していたが、実質的には最大24倍の格差が生じていたという。さらに営業職に転勤があることを理由としていたが、実際には転勤のない人や営業職以外の総合職もこの制度を利用していた。

また、同社は総合職、一般職などに分けられる「コース別雇用管理制度」を導入しているが、総合職は過去を遡っても1名を除きすべて男性であり、一般職は1名以外すべて女性の従業員だった。これに対し、東京地方裁判所は「事実上男性従業員のみに適用される福利厚生の措置として社宅制度の運用を続け、女性従業員に相当程度の不利益を与えていることについて、合理的理由は認められない」との判決を下した。

この事例は2007年の改正男女雇用機会均等法で「間接差別」そのものが法規定された後、初めてそれを認めるものとして言い渡された判決だ。また、この社宅制度に対し認められたことは、規定の中で明記されている3つの措置以外に対象が広げられたということにおいて大きな意義があると言われている。

まとめ

日常の中であたりまえと思っている慣行、規則、取り決めなど、実はこうした間接差別を含んでいるものも少なくない。間接差別をなくすためには、国による踏み込んだ法改正ももちろん必要だが、雇用する側やされる側としても、また会社や業務以外の日常の場面においても、法律などを正しく学び知識を持つことや、疑問に対し声を上げていくことが大切だ。

【参照サイト】厚生労働省 | (3)間接差別
【参照サイト】厚生労働省 | 男女雇用機会均等法の変遷
【参照サイト】厚生労働省 | 諸外国における性別を理由とする差別の禁止に関する規定等
【参照サイト】男女共同参画局 | 男女雇用機会均等政策研究会報告書の概要
【参照サイト】男女共同参画局 | 女子差別撤廃条約全文
【参照サイト】弁護士JPニュース | 一般職が「社宅制度」利用できないのは“間接的な男女差別” ガラス大手AGC子会社に賠償命令
【参照サイト】Acas | Indirect discrimination – Discrimination at work




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