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インダストリアル・シンバイオシスとは・意味

インダストリアル・シンバイオシス

インダストリアル・シンバイオシスとは?

インダストリアル・シンバイオシス(Industrial Symbiosis)とは日本語で「産業共生」と訳され、ある企業から出た廃棄物を別の企業が原料として活用するという、産業・企業間での結びつきのことを指す。

こうした企業・業界間の協業は、廃棄物の排出やエネルギー使用を減らすことにつながり、かつその中での資源の循環サイクルを生み出す。循環経済(サーキュラーエコノミー)や環境にやさしい社会の実現に大きく貢献する仕組みだと言える。

インダストリアル・シンバイオシスの活用事例

環境先進国の集うヨーロッパでは、EUが循環経済行動計画の中で目標として掲げる「経済競争力やサステナビリティ、資源効率、資源の安全性の向上」のために、インダストリアル・シンバイオシスの考え方が重要な役割を果たすと考えられている。そして、すでにいくつもの地域でインダストリアル・シンバイオシスの考え方が導入されている。

その代表的な例としてあげられるのが、デンマークの人口およそ1万6,000人ほどの小さな都市カルンボーでの取り組み「Kalundborg Symbiosis(カルンボー・シンバイオシス)」だ。カルンボー市は古くから工業都市として知られており、多くの産業が発展している地域である。

カルンボー・シンバイオシスは、1961年にノルウェーの石油・ガス会社が、限られた地下水を節約するために地元の湖の地表水を再使用するプロジェクトを実施したことから始まった。1970年代には、同社が地元の石膏製造企業と余剰ガスの供給に関する契約を結んだことをきっかけに他の企業とも次々と協業を始め、1980年代にはシンバイオシス(共同体)の形を成すまでに至ったのだ。

image via Kalundborg Symbiosis

現在では14もの企業がパートナーシップを結び、熱や水、蒸気など20以上もの異なる余剰資源の循環の流れを築き上げている。カルンボー・シンバイオシスによる主な環境への影響は以下のとおりだ。

  • 地下水の代わりに地表水を利用することで、年間約400m3の地下水を節約
  • 年間58.6万トンのCO2排出を削減
  • 年間6.2万トンの残留物処理量を削減

今後も新たな分野のネットワークを拡大するなど次世代のカーボンニュートラルの実現に向かって活動を進めるとともに、その知識や考え方を世界に広めることを目指している。

▶︎ デンマークの小さな工業都市で50年前から育まれた「サーキュラーエコノミー」

インダストリアル・シンバイオシスを拡大していくためには

インダストリアル・シンバイオシスはサステナブルな社会を築くための一つの理想的な取り組みだと言える。しかし一方で、異なる産業・企業間での廃棄物の循環を広げていくためには、以下の点について正しく理解し対処しなくてはならないという課題がある。

  • 環境および社会全体に与える影響
  • テクノロジー・作業や処理の工程・政策の調和
  • サーキュラーエコノミーへの市民の高いエンゲージメント
  • 廃棄物についての知識や情報
  • 廃棄物処理技術
  • ビジネスモデルの在り方やバリューチェーンに関わる人々の間の協業

日本においてはまだインダストリアル・シンバイオシスの考え方が浸透しているとは言えないが、自治体や企業が広い視野を持ち、社会全体の利益について考えることができれば十分に実現は可能だろう。ただしそのためには、市民である私たちも、長期的な視点を持ってサステナブルな社会に必要なことを考え抜き、日々行動することが求められる。

【参照サイト】What is industrial symbiosis? – FISSAC
【参照サイト】Kalundborg Symbiosis
【関連記事】デンマークの小さな工業都市で50年前から育まれた「サーキュラーエコノミー」【ウェルビーイング特集 #19 循環】




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