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インフォーマルセクターとは・意味

インフォーマルセクター

image via Mabelin Santos/ Shutterstock

インフォーマルセクターとは?

インフォーマルセクター(informal sector)とは、経済活動を行っていても法的な手続きを取っていない企業や活動のこと。このような非公式の企業、活動、労働者の雇用関係を包含して「インフォーマル経済」という。インフォーマルセクターの対義語に、正規雇用を意味する「フォーマルセクター」がある。

インフォーマルセクターの使われ方は、途上国と先進国で異なる。職業の例として、途上国ではミニバス運転手や屋台、路上での販売などがあり、先進国では、単発で仕事をするギグワーカーや建築労働者など幅広い職種を指す。

ILO(International Labour Organization : 国際労働機関)によると、世界では成人のうち労働力の60%に当たる20億人がインフォーマルセクターに従事している。

インフォーマル経済は世界的な現象であるが、国によってその割合は異なる。中低所得国ではGDPの35%を占めるのに対し、先進国では15%程度である。インフォーマルのレベルが最も高いのは、サブサハラ・アフリカやラテンアメリカで、最も低いのは、ヨーロッパや東アジアだという。

非正規雇用とインフォーマル雇用の違い

一見似たような意味に捉えてしまいそうな2つの単語だが、その意味には違いがある。

  • 非正規雇用
  • 一定期間のみの雇用契約で働く人のこと。契約社員、派遣社員、パート、アルバイトなどを指し、長期的な契約を結ぶ正社員以外の働き方である。

  • インフォーマル雇用
  • 社会保障や法制度により保護されていない雇用形態のこと。職場がインフォーマルセクターかどうかは問わない。

    つまり、非正規雇用は雇用期間、インフォーマル雇用は、法で決められた労働時間や社会保障が適応対象かどうかが定義である。

    インフォーマルセクターの問題点

    世界で多くの人が働くインフォーマルセクターにはどのような問題点があるのだろうか。ここでは、途上国に焦点を当て3つの課題を挙げる。

    1. 不安定な雇用形態
    インフォーマルセクターの労働者は、フォーマルセクターの労働者に比べて低賃金で貧しい可能性が高い。また、社会保護を受けられず、金融へのアクセスや教育水準も低いことも少なくない。

    2. 国としての経済成長が十分に望めない
    インフォーマルセクター企業は小規模で生産性が低い。事業を行うにあたっての法的な手続きをしないため税金を支払わない。その結果、政府に資金が集まらずに国民へサービスが提供されなくなってしまう。

    3. ジェンダーの不平等
    世界的に見て、インフォーマルセクターで働く割合は、男性よりも女性が多くを占める。サハラ以南のアフリカでは、農業部門以外の女性は83%がインフォーマルセクターに従事している。

    さらに、有給休暇や在宅ワークのできないインフォーマルセクターは、パンデミックの影響が大きかった。サハラ以南のアフリカでは、女性が経営する企業の41%が閉鎖するなど、大打撃を受けた。

    インフォーマルセクターの解決策

    問題が山積しているインフォーマルセクターだが、唯一の収入源をそこに頼っている人も少なくなく、仕事自体を簡単になくすことはできない。賃金やジェンダーの格差を是正し、国力を上げるにはどうしたら良いのだろうか。インフォーマルセクターから脱却し、フォーマルセクターで生計を立てるには、教育、制度、経済などあらゆる分野で基盤を整える必要があり、具体的には下記に挙げたような改革が大事だとされている。

  • 少年、少女の公平な教育アクセスの確保
  • 電子マネーを取り入れるなど、金融アクセスの向上
  • 法的手続きの簡略化
  • 労働市場の改革

    では、インフォーマルセクターは、1度就労したら貧困から抜け出せないのだろうか。ここでは、フォーマル化に成功した事例を紹介する。

    事例:ネパール・インフォーマルセクターのフォーマル化

    南アジアでは、就業者の8〜9割が中小企業で働いている。ネパールで手工芸の事業を行うシレンタさんは、日本政府の任意協力金を受けて展開するILOの「南アジアにおける持続可能なグローバル・サプライチェーン(SGSCs)プロジェクト」の支援で、フォーマル化に成功した。SGSCsは、インフォーマル経済で働く人々へディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の促進を目的の1つにしている。

    ライガ手工芸は、わずか4人の女性労働者で構成された在宅就労形態だった。製品を作る技術が向上しても、正式に事業化をするには、登録が複雑で難しく、申請費用もかかる。このような理由でフォーマル化に踏み切れなかったが、SGSCsと「ネパール女性企業連合会(FWEAN)」のサポートを受け、申請に成功した。

    フォーマル化に成功した後は、従業員を雇い売上も上向きだ。成功した理由は、正式に登録していると、顧客からの信頼性が高く、卸売業者と直接取引ができることで、ビジネスチャンスが一気に広がったからだ。

    中小・零細企業は成長のポテンシャルがあり、雇用を生み出す。この事例のように、事業の推進力があっても、手続きの複雑さや申請費用などを理由にインフォーマルセクターの就労を継続している人がいる。資金の提供だけでなく、より多くの事業者が正式に経済活動ができるよう制度や教育の充実が求められる。

    まとめ

    インフォーマルセクターのような不安定な雇用形態は、貧困やジェンダーの格差を加速させることにもつながりうることもある。とはいえ、自力でそこから抜け出し、フォーマル化をすることは簡単ではない。まずは、国や団体などが、人々への教育の機会提供などの基盤づくりから始め、少しずつ格差が広がらない雇用のあり方を目指してバックアップしていくことが必要ではないだろうか。

    【参照サイト】IMF NEWS Five Things to Know about the Informal Economy
    【参照サイト】ILO サプライチェーンを通じたディーセント・ワーク:日本の任意資金協力事業を通じてネパールで女性の起業家精神を育成
    【参照サイト】エン転職 非正規雇用って何?
    【参照サイト】THE POVERTIST 開発途上国のインフォーマルセクター・経済・雇用に関する用語解説




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