パーパス(Purpose)とは・意味
Purpose(パーパス)とは?
パーパス、またはパーポスとは、一般的には目的、意図、目標、趣旨などと訳される英単語で、「何かが存在する理由、あるいは何かがなされる意味」といった意味を持つ。日常生活で例を出すと、暖房をつけるのは部屋を温かくし、心地よく過ごすため。鉛筆を削るのは字を書きやすくするため。これらはどちらもパーパス(目的)のある行動だ。
ビジネスにおけるパーパスとは、組織や企業の存在理由や存在意義、つまり「何のためにこの会社があり、何を実現するために事業をするのか」を意味する。マーケティング用語の9P(Product、Performance、Position、Purpose、Potential、Price、Place、Promotion、Profit)のうちの一つだ。
パーパスが注目されるようになったきっかけ
2019年以降、このパーパスを明確に示す企業が増加傾向にある。そのきっかけは、同年に米国トップ企業が参加する大手経済団体「ビジネス・ラウンドテーブル」が、「企業のパーパスに関する宣言」を発表したことにある。
それまでの米国は、「企業の社会的責任は利益を増やすことにある」という「株主資本主義」が主流だった。しかしこの宣言で、「企業は顧客への価値の提供、従業員の能力開発への取り組み、サプライヤーとの公平で倫理的な関係の構築、地域社会への貢献、そして最後に株主に対する長期的利益の提供を行う」という「ステークホルダー資本主義」が広く認知されるようになった。
経営におけるパーパスが重要な理由
自社が社会の中で存在する意義や志といったパーパスを軸とした経営を行うことをパーパス経営と呼ぶ。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックや、ウクライナ情勢、気候変動問題など、社会情勢が大きく揺れ動く中、企業は対応のための指針となるパーパスが必要とされている。また、リモートワークやデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進など、ビジネスの仕組みを変革する必要が出てきている今、意思決定の軸となるパーパスを全従業員に浸透させることが重要となっている。
更に、今後大きな消費行動の中心となるミレニアル世代やZ世代などの若年層からは、ただお金を稼いでいるだけの企業ではなく、課題解決をしてより社会に貢献する、というパーパスドリブンな企業・団体が支持を受けている。そのため、パーパスを明確にしない企業はもはや生き残れないとまで言われるようになっている。
現に、IDEAS FOR GOODが2019年に行った調査では、ミレニアル世代が企業に求めるキーワードは3つあることがわかった。「パーパス(企業の存在意義)」「オーセンティシティ(真正性・ありのまま)」「デザイン(かっこよさ・美しさ)」である(※1)。会社の目指す方向がポジティブであり、正直で、そして受け入れやすいデザインであることが大切なのだ。
パーパス・マーケティングとパーパス・マネージメント
自分の企業・団体の社会における存在意義を明確にし、投資家や消費者など、外部に向けてWebサイトやSNSなどで「うちの会社はこれを目指す」と発信することをパーパス・ブランディングと呼ぶ。
たとえばホームレス状態にある人々を支援するNPO法人などでは「誰がいつ貧困になってもおかしくない、そんな中でも何度でもやり直せる社会を実現する」ことをパーパスだと明示したうえで日々の活動を行うことで、彼らの思想に共感した人々からの支持・寄付金などのサポートを受けている。
また、会社の方向性を提示したうえで、従業員一人ひとりの「なぜ働くのか、何のために働くのか」を引き出すことでモチベーションやパフォーマンスの向上をはかるパーパス・マネージメントを行う企業も多い。グーグルなどのシリコンバレー企業で、従業員が幸せに働ける職場環境づくりに取り組む「CHO(Chief Happiness Officer 最高幸福責任者)」という役職も登場し、日本では2021年4月にオンライン採用/研修プラットフォーム「playse.」等を運営する株式会社manebiがCHOを新設した。
「ミッション」や「ビジョン」「バリュー」との違い
事業でよく見聞きするミッション、ビジョン、バリューといった言葉とも一見似ているが、少し異なる文脈で使われる。まとめると以下の通りだ。
- パーパス:何のために存在するのか、何のために事業を行うのかという存在意義
- ミッション(任務):パーパスを達成するために、自分たちが行う物事の内容・戦略
- ビジョン(展望):ミッションの見通しや、将来こうありたいという姿
- バリュー(価値):上記により生みだされる価値
パーパスは、将来何をしたいかというよりは、事業を始める際の原点となる。なぜ事業を行うのかという根拠になる部分をより広い見方、公に近い立場から述べたものだ。
フェイスブックの創設者であるマーク・ザッカーバーグは、ハーバード大学での講演で「パーパスは、私たち一人ひとりが小さな自分以上の何かに関わっていると感じられる感覚のことです。パーパスが真の幸福感をつくるのです。」と語る。彼は、自分が必要とされている、取り組むべき事業に携わることの大切を強調した。
パーパスを実現するためのキーポイント
パーパス経営を掲げながら実質が伴わない企業を指す「パーパスウォッシュ」という言葉が生まれている。これは、あたかも環境に配慮しているように見せかけて消費者の誤解を招く「グリーンウォッシュ」から派生した言葉である。では、パーパスを実現するには、どうすればよいのだろうか。
大手会計事務所EYは、「優れた企業は、リーダー陣の認識を一致させ、従業員のエンゲージメントを高める機会を作ることで、パーパスを実現している。また、パーパスをカスタマーエンゲージメント向上の中核と考え、戦略に自社のパーパスを据えて重要な経営判断を周知する手段としている。」とし、組織のパーパスを実現する際に柱となる4つの重要項目を定義している。
パーパスを実現する4つの方法
- パーパスに関してリーダー陣の認識を一致させる
- パーパス追求に対する従業員のエンゲージメントを高める
- パーパスをカスタマーエクスペリエンスに組み込む
- パーパスを戦略に据える
パーパス経営の事例
実際にパーパスを掲げている企業の例を見てみよう。
- ソニーグループ:クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす
- 富士通:イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく
- ソフトバンクグループ:情報革命で人々を幸せに
- 花王:豊かな共生世界の実現
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ:世界が進むチカラになる
- パタゴニア:故郷である地球を救うためにビジネスを営む
- ユニリーバ:サステナビリティを暮らしのあたりまえに
- コカ・コーラ:世界をリフレッシュし、変化をもたらす
- エアビーアンドビー:地球上のすべての人がどこにでも住める世界をつくる
企業のパーパスは何か、改めて考えてみる
「稼げる本業」とは別に社会貢献活動を行うというのが、これまでの一般企業の取り組みだった。しかし昨今は、本業そのものに社会的なパーパスがあるかどうかが、問われるようになってきている。
なぜなら、企業のパーパスが人々の「共感」を生むからだ。多くの人々が事業に共感するということは、パフォーマンスが高まり成果がでやすいだけでなく、働く人々の労働意欲が高まることも意味する。人々は、個人の価値観にあっているもの、そして社会的意義があることに幸福感を覚えやすいのだ。
たとえば、大手企業のビニール袋工場の生産ラインで働いているとする。CSR部門では社会貢献活動も行っているようだが、自分はビニール袋を毎日生産し出荷している。かたや、別の会社ではビニール袋の有用性をうまくつかいながら環境負荷がかからない製品をつくるという目的を掲げ、水に溶けるビニール袋を生産しているとしよう。後者の方が、より多くの人から支持されるのではないだろうか。
いま、付け焼刃のCSR(社会的責任)活動よりも、企業の本質的な存在意義を考えてみる必要性が問われている。大手電気機器メーカーのオムロンや、世界最大の食品・飲料会社ネスレも、パーパスを経営で重要な指針としているという。パーパスは、ビジネスを行うにおいて今後ますます重要なキーワードとなるだろう。
※1 PRのプロたちに聞く!ミレニアル世代に響くコミュニケーションのあり方。パーパスがうむ「共感」の連鎖とは
【参照サイト】EY パーパスを実現する4つの方法
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- Farm to Fork
- FemTech(フェムテック)
- FinTech(フィンテック)
- First Movers Coalition(FMC)
- Flight shame
- FOMO(Fear of missing out)
- FSC認証
- FtM(Female to Male)
- FTSE4Good Index(フッツィー・フォー・グッド・インデックス)
G
- GHG排出ピークアウト
- GNR革命
- GovTech(ガブテック)
- Green Climate Fund(緑の気候基金)
- Green Dating
- GRI(Global Reporting Initiative)
H
I
- IaaS(Infrastructure as a Service)
- IIRC(国際統合報告評議会)
- Inner Development Goals(IDGs)
- InsurTech(インシュアテック)
- Internet of Abilities(能力のインターネット)
- Internet of Animals(動物のインターネット)
- Internet of Behavior(行動のインターネット)
- Internet of Customers(顧客のインターネット)
- Internet of Human(ヒトのインターネット)
- Internet of Skills(スキルのインターネット)
- Internet of Things(モノのインターネット)
- IPCC
- ISSB
- IUU漁業
J
L
- LAC(Living Anywhere Commons)
- LCA(ライフサイクルアセスメント)
- LEAPアプローチ
- LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)
- Learning by doing
- Less is more
- Life-Centered Design
- LOHAS(ロハス)
M
- MaaS(Mobility as a Service)
- MAPA(Most Affected People and Areas)
- MENA(ミーナ)
- Medtech(メドテック)
- MDGs(ミレニアム開発目標)
- MSC認証
- MtF(Male to Female)
N
O
P
Q
R
S
- SaaS(Software as a Service)
- 里山イニシアチブ
- SASB
- SBT(Science Based Targets)
- SBTs for Nature(Science-Based Targets for Nature)
- SDGsウェディングケーキ
- SDGsウォッシュ
- SFDR
- Shecession
- Shecovery
- SOGI(ソジ)
- SPO(Sustainable Public Equity Offering)
- STEAM教育