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リジェネラティブ・ツーリズムとは・意味

旅行

リジェネラティブ・ツーリズムとは?

リジェネラティブ・ツーリズム(Regenerative tourism)とは、「再生型の観光」を指し、旅行先の状況をより良くするような旅行を意味する。リジェネラティブ・トラベル(Regenerative travel)とも呼ばれる。

リジェネラティブ・ツーリズムは、サステナブル・ツーリズムの発展形と言える。サステナブル・ツーリズムが旅行先の地域文化と環境の保全を第一に考えた「持続可能な観光」を意味するのに対し、リジェネラティブ・ツーリズムは、その名のとおり観光地のリジェネレーション(再生)を意図したものであり、旅行先に着いたときよりも、去るときのほうが環境がより良く改善されているという状況を目指している。

なお、リジェネレーションのコンセプトは、土壌を回復し炭素を吸収することを目的としたリジェネラティブ農業など、さまざまな分野で応用されている。

コロナ禍で注目されたリジェネラティブ・ツーリズム

観光業は、新型コロナウイルスのパンデミックで世界的に大打撃を受けたが、そのような状況のなかでリジェネラティブ・ツーリズムがポストコロナの観光の在り方として注目されている。

コロナ禍の2020年には、Center for Responsible Travel(CREST)やSustainable Travel Internationalなどの6つの非営利団体が、より良い明日を築くことを目指した「Future of Tourism Coalition」という新たな団体を設立した。この団体は13の原則「ガイディング・プリンシプル」を策定しており、設立時には22機関、2021年9月時点では約600機関が署名している。

同原則では、リジェネラティブという文言は明記されていないものの、「地域社会に対して公平な所得分配を行う」「量より質を選ぶ(観光客の数ではなく地域への裨益を優先)」「観光の負荷を軽減して地域社会や環境にポジティブなインパクトをもたらす」「資源のループを閉じる」といった、観光をとおして地域をより良くするためのコミットメントを含んでいる点が注目される。

リジェネラティブ・ツーリズムの実例

リジェネラティブ・ツーリズムの実例として、サウジアラビアの「コーラル・ブルーム・プロジェクト」とメキシコの「Playa Viva」を紹介する。

コーラル・ブルーム・プロジェクト

本プロジェクトでは、サウジアラビアのシュライラ島周辺の海や陸を再生するリゾート地を2030年までに作る計画で、まずは2022年末までに国際空港と初めの4軒のホテルがオープンし、2023年には第一段階として計画されている残りの12軒のホテルが開業する予定だ。本プロジェクトでは、島のホテルやゴルフ場、マリンスポーツ場などの観光施設が一体となり、砂浜の自然浸食を最小限に抑え、島の自然環境を強化する修景によってマングローブやサンゴなどの新たな生息地を創出する計画であり、2040年までに希少種保全効果30%アップの実現を目指している。詳細は、サウジアラビアが始めた「再生型観光」とは?を参照されたい。

サウジアラビアが始めた「再生型観光」とは?

Playa Viva

メキシコのジワタネホの南にある小さなリゾート地であるPlaya Vivaは、リジェネラティブ・アプローチを用いて地域住民の生活を向上させることをコンセプトとしており、100%オフグリッド、水を節約してきれいな水を補充するスマートウォーターデザイン、地域の職人との協業、現地で収穫された再生可能な素材による建築などを実現している。このリゾート地を開発したのはリジェネラティブ・デザインを手がける米国のRegenesis社であり、同社によるこのリゾート地の評価では、自然環境や古代遺跡などの観光資源だけではなく、カメの密猟や村の貧しい学校といった問題についても調査している。結果的に、リゾートの玄関口となった小さな町では、有機農業システムがリゾートと地域住民の両方に利益をもたらし、また滞在費に追加される2%の手数料が、リジェネラティブ基金としてコミュニティ開発に投資されている。

リジェネラティブ・ツーリズムのこれから

リジェネラティブ・ツーリズムの歴史はまだ浅いが、Playa Vivaの予約代理店であるRegenerative Travelや、デンバーを拠点とするアドベンチャーツアーオペレーターであるOneSeed Expeditionsなど、取り扱いが増えている。

Regenerative Travelでは、炭素使用量、従業員の幸福、体験型のアクティビティ、地元の食材調達などの指標に基づいて登録メンバーを精査しており、今後はリジェネレーションの進捗状況を示すベンチマークシステムも立ち上げ予定であるという。また、OneSeed Expeditionsは旅行と経済発展を結びつけることを目的としており、収益の10%を使用して、ネパールやペルーなどで活動している地元の非政府組織に無利子のローンを提供するなどし、観光業をとおして地域をより良くする取り組みを進めている。

新型コロナウイルス感染拡大からの経済復興にあたり、環境や持続可能性に配慮した回復を目指すグリーン・リカバリーやサステナブル・リカバリーが注目されるなか、観光業においても同様に、持続可能性を犠牲にしない復興への注目が集まっている。リジェネラティブ・ツーリズムは、観光地の地域住民にポジティブなインパクトをもたらし、その地域をより良くするためのひとつの方法として、大きな可能性を秘めている。今後のさらなる発展が期待される。

【参照サイト】Move Over, Sustainable Travel. Regenerative Travel Has Arrived.
【参照サイト】Future of Tourism Coalition
【参照サイト】サウジアラビア、自然を生かしたリジェネラティブ・ツーリズム (再生型観光)プロジェクト、「コーラル・ブルーム」のコンセプトを発表
【参照サイト】Playa Viva




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