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セルフパートナーシップとは・意味

自分自身を抱きしめる女性

セルフパートナーシップとは?

セルフパートナーシップとは、自分自身を人生のパートナーとして幸福感や充実感を高めながら、より主体的に自己成長や自己実現を図っていくことを目指す概念である。

もともとは、恋愛や夫婦関係を持たないシングル(独身)であることをより肯定的に捉えて自分自身の人生に集中し、自立した個人として幸福や成長を追求していくセルフケア・ウェルビーイングの考え方だ。英語では「セルフ・パートナード(self-partnered)」とも呼ばれる。

欧米と日本では言葉のニュアンスが若干異なり、この言葉が英語で使われるときは、独身を肯定的に捉えるという意味合いを含むのに対し、日本ではセルフケアやウェルビーイング、自己啓発のための一手段として自己との関係を構築していくことを意味する場合が多い。

2019年に俳優であり活動家のエマ・ワトソンが雑誌の取材で、自身の人生観について「長い時間がかかったが、今はシングルでいることがとても幸せ。この状態を”セルフパートナーシップ”と呼んでいる」と発信したことで広まった。

独身を肯定的に捉える概念の広まり

女性の社会進出が進み、多様な人生観や価値観が受け入れられるようになってきたこと、社会・経済情勢の変化、フェミニズムの台頭などにより、独身や離婚をネガティブに捉える伝統的な固定概念や、「30歳までに結婚・出産すべき」といった社会で一般常識とされる考えに疑問を唱える声は国内外で大きくなっている。

エマ・ワトソンがセルフパートナーシップについて発言する以前から、独身であることを前向きに捉え自己実現につなげていくことを指す「シングル・ポジティブ」の考え方は世界的に広まってきた。

例えば2014年には、米国の俳優グウィネス・パルトロウが自身の離婚について”コンシャス・アンカップリング(意識的な関係解消)”と表現し、否定的に捉えられがちな離婚の話題をポジティブに発信した。そのほか、米国人歌手のアリアナ・グランデやセレーナ・ゴメスをはじめとして、独身であることの楽しさや利点について発言したり、シングル・ポジティブをテーマとした楽曲を発表したりする有名人も増えている。中には自分自身と結婚する行為である「ソロガミー」を選択する欧米女性もいるという。

日本でも恋愛や結婚、パートナーシップにおける概念は同様に変化してきており、あえて独身でいることを選択する人も増加している。

国立社会保障・人口問題研究所が2021年6月に実施した「第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」によると、「いずれ結婚するつもり」と考える18~34歳の未婚者は2015年の前回調査から男女、年齢、生活スタイルの違いを問わず減少したという。(男性:85.7 → 81.4%、女性:89.3% → 84.3%)対して「一生結婚するつもりはない」と答えた人は、1982年に比べて男性が7.5倍、女性が3.5倍に増えている(※)

セルフパートナーシップが注目される理由

多様性が尊重され、生き方を自由に選択することが認められ易くなった風潮があるとはいえ、「結婚は独身より幸せ」、「誰もが恋愛や結婚のパートナーを見つけるべきだ」とする暗黙の社会的プレッシャーを感じている人はまだまだ多く、独身者に対する偏見も依然として存在している。

また他人と恋愛や夫婦関係を築くことは幸福や安心感をもたらすものでもあるが、場合によっては依存や自己犠牲といった精神的にネガティブな側面が幸福度の低下につながったり、自己実現に悪影響を与えたりする可能性もある。

ウェルビーイングの概念が広がり、個人の成長や幸福、自己実現の追求が重要視されるようになったことで、そうした社会や人間関係における負担から自らを解放し、より自由に生きるべきだとする風潮が生まれ、セルフパートナーシップが注目され始めた。

欧米では、自分自身と良好な関係を築き、自己価値を高めていくセルフパートナーシップの考え方はパートナーの有無にかかわらず、全ての人にとって大切な視点だと主張する心理学者・精神科医もいる。

セルフパートナーシップを築くことには、ウェルビーイング、自己実現の観点から様々な利点があるとされている。以下がその一例だ。

  • さまざまな社会的負担からの解放、ストレス軽減
  • 自己実現に向けて自身の目標に集中できる
  • 自己理解が進み、自律性や主体性が高まる
  • 継続的な学びや成長、スキル向上
  • 自立し人生の舵を切っていると感じることによる充実感や自己肯定感の向上
  • 自身の幸福度が高まることによる家族や友人との関係性向上

セルフパートナーシップを構築する方法

セルフパートナーシップを築くためには、他人との良好な関係を築く場合と同様、まずは時間をかけて自分自身と向き合い、自己理解を深めていくことが重要だとされる。

一人で過ごす時間を十分に確保する、これまでの友人やパートナーなど他人に費やしてきた時間やエネルギーを自分自身に注ぐ、日常的に自分が好きなことや興味のあることをする、自身の長所や短所、価値観、興味、目標を知るためにジャーナリングなどを通して思考をアウトプットすることなどが有効だという。

また恋愛や結婚、人間関係に対する社会的な固定概念に強く囚われて精神的な負担やストレスを感じている人、共依存などの不健全な人間関係による精神的な傷を負っている人は、心理療法やセラピーなど専門家の力を借りることがセルフパートナーシップ構築の助けになるかもしれない。

パートナーがいてもいなくても、ウェルビーイングを

セルフパートナーシップを追求し、自分自身とのより良い関係を築いていくことは、確かにウェルビーイングや自己実現において大切な考え方だろう。

しかし、自己の利益のために他人との関係を軽視し過ぎたり、過度に協調性やコミュニケーションの機会を損なってしまったりすることは危険だ。人間は社会的な動物であり、自己成長や自己実現にはセルフパートナーシップと同じくらい他者との繋がりやサポートも欠かせない。

また新しい価値観、ウェルビーイングな概念としてセルフパートナーシップが注目されているからといって、「既婚者より独身者の方が幸福だ、優れている」、「独身でなければ自己実現ができない」といった偏った視点を持つべきではない。

人生観・価値観は十人十色であり、セルフパートナーシップを重視する人が必ずしも生涯結婚を望んでいない、パートナーを求めてないという訳ではないだろう。あくまで彼らが人生の一部分で自分自身により多くの時間を使い、自己成長や自己実現に集中する期間を設けているに過ぎないことを忘れず、多様な価値観を認め合う柔軟性を持っていたい。

自己理解、自己愛の深まりが他者との関係性向上に繋がり、また同時に他者との共感や協調が自身の幸福度を高めることにも繋がるという相互の関係性を大切に、自己と他者との関係のバランスをとりながら、互いの成長や自己実現に貢献し合っていけることが望ましい。

※ 第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)

【参照サイト】Why Everyone Should Be Self-Partnered
【参照サイト】Self-partnered: the sudden, surprising rise of the single positivity movement
【参照サイト】Self-partnering is necessary on path to self-love
【参照サイト】Emma Watson says she’s ‘self-partnered’. Here’s what that means — and why it’s not a bad idea
【参照サイト】What is Self-Partnering and How Can You be Self-Partnered?
【参照サイト】出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)|国立社会保障・人口問題研究所




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