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セクシュアリティ(セクシャリティ)とは・意味

セクシュアリティ

セクシュアリティ(セクシャリティ)とは?

人間の性のあり方全般のこと。19世紀ごろに欧米で生まれた概念である。フランスの哲学者ミッシェル・フーコーは1976年にその著書「性の歴史」において、生物学的性別を表すセックス(sex)と社会的文化的性別を表すジェンダー(gender)のみに性を限定する二元論に疑問を呈し、あらゆる個人がそれぞれの性のあり方である「セクシュアリティ」を有すると主張した。

世界保健機関(WHO)はセクシュアリティについて以下のような定義をしている。

セクシュアリティ(性)は、生涯を通じて人間であることの中心的側面をなし、セックス(生物学的性)、ジェンダー・アイデンティティ(性自認)とジェンダー・ロール(性役割)、性的指向、エロティシズム、喜び、親密さ、生殖がそこに含まれる。セクシュアリティは、思考、幻想、欲望、信念、態度、価値観、行動、実践、役割、および人間関係を通じて経験され、表現されるものである。セクシュアリティはこうした次元のすべてを含みうるが、必ずしもすべてが経験・表現されるわけではない。セクシュアリティは、生物学的、心理的、 社会的、経済的、政治的、文化的、法的、歴史的、宗教的、およびスピリチュアルな要因の相互作用に影響される。

セクシュアリティの4つの要素

セクシュアリティは一義的に解釈されるものでなく、大きくは下記の4つの要素からなるものと言われている。

1:生物学的な性(Sex/セックス)

身体の性。生まれつきの身体的特徴(外性器、内性器、性腺、染色体など)で判断し、出生届の際に男か女か割り当てられる。身体的特徴だけで判別できない場合もある。

2:性自認(Gender Identity/ジェンダー・アイデンティティ)

こころの性。自分自身の性に対する認識。性同一性。男性、女性の他、自分の性が定まっていない、もしくは定めていないクエスチョニングや、医学的に割り当てられないXジェンダーなどがある。

3:性的指向(Sexual Orientation/セクシュアル・オリエンテーション)

好きになる性。恋愛感情や性的魅力をどの相手に持つかということ。異性を対象とするヘテロセクシュアル、同性を対象とするホモセクシュアル、男性・女性の両方を対象とするバイセクシュアル、他者に恋愛感情や性的魅力を抱かないアセクシャルなどが存在する。

4:性表現(Gender Expression/ジェンダー・エクスプレッション)

ふるまう性。社会から期待される行動や役割で、服装や言動などで表現する性。「男らしさ」「女らしさ」というような考え方もこれにあたる。ただし、必ずしも生物学的な性や性自認と一致するわけではない。性自認が男性であっても、性表現が男性とは限らず、またジェンダーレスのような中性的な表現を好む場合もあるため、性表現だけでその人を判断するのは難しい。

セックス、ジェンダー、セクシュアリティの違い

セックスとジェンダー、セクシュアリティはどれも「性」というニュアンスを持つが、実際にはそれぞれ異なる。上記にも述べたようにセックスは生まれもった生物学的や身体的特徴による性を表し、ジェンダーは社会的・文化的側面によって形成される「らしさ」の性であり、属する社会や世界によって必ずしも同じではない。セクシュアリティはそのどちらも含む包括的なもので、心理や行動、価値基準を表すものである。

  • セックス:生物学的な性
  • ジェンダー:社会的・文化的な性(女性らしさ/男性らしさなど社会によって規定されるもの)
  • セクシュアリティ:人間の性のあり方全般を示す包括的な概念

セクシュアリティの種類

「LGBTQ」は性自認が一致しないトランスジェンダーやクエスチョニングと、性的指向における女性の同性愛者(レズビアン)、男性の同性愛者(ゲイ)、両性愛者(バイセクシュアル)の頭文字を取ったもので、セクシュアリティの双方の要素を含んだ、性的マイノリティを表す言葉とされている。(また、LGBTQのQはクエスチョニングだけでなく性的指向や性自認について既存のカテゴリにとらわれず、多様性を支持し自由に自己を表現する人「Queer(クィア)」の頭文字でもある。)

しかし、セクシュアリティの種類はLGBTQ以外にも多数存在しており、アメリカ版Facebookでは性別の選択肢として58種が登録されているほか、最近では様々なセクシュアリティの頭文字を取った「LGBTQQIAAPPO2S」という言葉も登場している。以下にLGBTQ以外のセクシュアリティをいくつか紹介する。

Inter-sex(インターセックス):身体的性が一般的に定められた男性と女性の中間もしくはどちらとも一致しない曖昧な状態で、DSD(性分化疾患)とも言われる

Pansexual(パンセクシュアル):性的指向を性別によって限定せず、人間の全ての性別を恋愛対象とする人

Polyamorous(ポリアモラス):異性、同性を問わず複数人を同時に恋愛対象とする人

Omnisexual(オムニセクシュアル):パンセクシュアルと同じように、全ての性別を恋愛対象とするが、相手の性を認識するという点で、パンセクシュアルとは異なる

Two Spirit(トゥー スピリット):身体的性は男性、女性でありながら、それとは異質の性質などを持つ人。アメリカやカナダの先住民の中に存在し、女性と男性、両方の魂を自分のなかに持っていると感じる人

Cisgender(シスジェンダー):性自認と生まれ持った性別が一致している人

Nonbinary(ノンバイナリー):自身の性自認・性表現に従来の二元論的「男性」「女性」という枠組みを当てはめようとしない人

セクシュアリティ診断について

実際にはセクシュアリティの種類は「LGBTQ+」のみではなく、その組み合わせは様々で複合的にセクシュアリティを持つ人や、時期によって流動的になる人もいる。オンラインでの簡単な診断ツールなどもいくつかあるので、自分のセクシュアリティについて違和感を覚えることや、自分がどのセクシュアリティに当てはまるのか興味がある場合はこうした診断を受けてみるのも良いかもしれない。

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ただし、こうした診断は医学的に基づいたものではなく、あくまで自分を知るきっかけの目安とするもので100%正しい訳でもない。悩みが解消しない場合や、より自分のセクシュアリティについて理解を深めたい時は、LGBTQQの人々をサポートする支援団体などに相談してみることもひとつの方法だ。

社会の中のセクシュアリティ

セクシュアリティの問題は職場や学校、公共サービス、医療の現場など日常のあらゆるところに存在している。例えば、以下のような問題が挙げられるだろう。

  • カミングアウトによる偏見、差別
  • 就職活動における不利益
  • 男女で区分された施設を利用する際の心理的負担
  • 異性婚と同等の権利が得られない

さらに、アンコンシャス・バイアスなどが働いてセクシュアリティに関する差別や偏見が生まれたり、タブー視されたりすることなども多く、常に議論の的となっている。

セクシュアリティによって、不利益が生じる人たちをなくすためには正しい知識を広めることが大切だ。国によってセクシュアリティへの対応は様々だが、日本でも2020年に厚生労働省が国の事業として初めて職場でのLGBTQ+に関する実態調査を行い、セクシュアルマイノリティに関する情報の公開やリーフレットの作成など、取り組みを進めている。

まとめ

セクシュアリティは、「男/女」というように決まった枠に当てはめられるものではない。人によって性の捉え方は無数にあり、そこにはグラデーションが存在しているのだ。性についての話題は未だタブーのように扱われることもある。しかし、多様な人々を包括するためにも、私たちは性に関する問題を見つめ、対話していく必要があるのだろう。

▼ セクシュアリティに関する問題をもっと知りたい方はこちら

性の多様性

【参照サイト】COUNCIL OF EUROPE | Sexuality – Gender Matters
【参照サイト】Tokyo Sexual Health | セクシャリティーとは?
【参照サイト】厚生労働省 | 職場におけるダイバーシティ推進事業について
【参照サイト】 内閣府 | 第70回 性差:ジェンダーとセックスの違い : 内閣府国際平和協力本部事務局(PKO)




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