Browse By

シェアレンティングとは・意味

シェアレンティング

シェアレンティングとは?

シェアレンティング(Sharenting)とは、親が自分の子どもの写真や情報を、SNSなどオンライン上に投稿(シェア)すること。「Overshare(過剰にシェアすること)」と「Parenting(子育て)」を組み合わせた造語だ。

インターネットやSNSの普及により、自分の思い出や体験を他人とシェアすることは、頻繁に行われている。子どものかわいらしい姿やおもしろい瞬間を捉えた投稿は、一見ほほ笑ましく、無害であるかのように見える。また、投稿をする親同士にとっては、育児のアドバイスを与えあったり、大変な時期に支えあったり、新たなつながりを得たりなど、様々なメリットもあるだろう。

しかし、テクノロジーが発達した現在、オンライン上にシェアされた写真やビデオはデータとして扱われ、悪用されるリスクを伴う。特に子どもの場合、本人の同意なく、また知らされることもなく、投稿されることがあり、それらはデータとして半永久的に残るため、子どもの生涯を通して何らかの悪影響を受けるリスクがあるのだ。

シェアレンティングが持つリスク

それでは、シェアレンティングを行うことで、どのような影響・リスクがあるのだろうか。

  • 子どもの個人情報がなんらかの形で流出し、詐欺に遭うリスク
  • 投稿した写真やビデオを加工され、悪用されるリスク
  • 自分の子どもの写真が、第三者によってその人の子どもの写真であるかのようにSNSに再投稿されたり、別の目的で再利用されたりするリスク(デジタル誘拐<Digital kidnapping>)
  • 子どもの同意なしに情報がシェアされることで、親子関係に悪影響を与えるリスク
  • シェアレンティングの目的が「いいね」を多く獲得するためなど、より大きな反応を求めるものだった場合、必要以上に子どもに要求をしたり他の子どもと比較したりすることで、子どもにプレッシャーを与えてしまうリスク
  • 「いいね」や「再投稿」の数など、ソーシャルネットワーク上の評価基準を、子どもが常に意識してしまうリスク

シェアレンティングによるなりすましや詐欺の影響として、イギリスのバークレー銀行は、2030年頃には年間被害額が667百万ポンド(約1,227億円相当)、被害件数が740万件程に上るだろうと予測している。子どもの名前、誕生日、住所や、パスワードの設定の際に求められやすい親の結婚前の氏名、ペットの名前などが何らかの形で公開されることで、本人の知らない間にローンを組まれたり、クレジットカード利用やオンラインショッピングに使われたりする可能性があるためだ。

また、アメリカのFBIが1997年におこなった研究では、子どもに対する犯罪は親戚や知人によって行われたケースが7割から9割を占めているという研究結果もある(※1)。このことを考えると、公開範囲を知人に限定したとしても、過剰に子どもの情報を共有することの危険性は伴う。

子どものオンライン上のプライバシーに関する意識

それでは、子どものオンライン上のプライバシーに対して関心を持つ親はどれくらいいるだろうか。イギリスの大学、London School of Economics(LSE)が、2018年にイギリスで実施した調査結果(※2)では、大半の親が子どものプライバシーに関して何らかの懸念は持ちつつも、社会とのつながりを主な目的に、シェアレンティングを行っているという結果であった。また、子どものプライバシーに対する懸念の度合いは、自分の子どもの年齢などにより様々であった。詳細は以下の通りである。

月に一度はインターネットを使用すると答えた96%の親のうち、

  • 75%が、子どもの写真やビデオをオンライン上に投稿(シェアレンティング)したことがあり、なかでも25%が週に一度は投稿すると回答。
  • また、シェアレンティングをする親のうち、広範囲に公開する親の割合は10%である一方、身近な人々に公開範囲を限定する割合は54%。
  • シェアレンティングをする親の中で、子どものプライバシーに関してなんらかの懸念を持つ割合は、4分の3程度。また、4分の1程度が、子どもの意思を確認したうえで、子どもの写真やビデオを投稿すると回答。
  • 子どもが成長するに従い、子どものプライバシーに対する親の関心は高くなる傾向にある。子どもにはオンライン上でプライバシーがあると考える親の割合は、9歳から12歳の子どもを持つ親では14%に過ぎなかったが、13歳から17歳の子どもを持つ親では48%に上昇。
  • 子どもの成長に伴い、親の投稿数は減少傾向にある。4歳以下の子どもを持つ親は60%以上が投稿しているのに対し、13歳から17歳の子どもを持つ親では47%に減少。
  • シェアレンティングを行う主な理由は、60%前後が家族や友人とのつながり維持のためと回答。

シェアレンティングへの海外の対応状況

アメリカでは、1988年に制定された児童オンラインプライバシー保護法(Children’s Online Privacy Protection Act)や、過程の教育の権利とプライバシー法(Family Educational Rights and Privacy Act)など、子どものプライバシーに関する法律が制定されている。しかし、これらの法律は、親以外の第三者による子どもの情報の収集や利用から子どもを守ることが目的だ。そのため、親がどこまで第三者に情報を開示するかは、親の判断に委ねられているという前提だ。

また、欧州では、他者に知られたくない自身の過去の情報について削除や消去を求める「忘れられる権利」や「削除を求める権利」に関する議論が進んでいる。2018年にEUが施行した「一般データ保護原則(General Data Protection Regulation、GDPR)」では、「削除権」が規定されている。今後も、テクノロジーの発展とともに顕在化する新たなリスクに備えて、子どものプライバシーに対する権利の確立や、子どものプライバシー保護に関する法律の整備が求められていくだろう。

シェアレンティングへの対応

様々なリスクを伴うシェアレンティング。私たちは、どのように対応したらよいのだろうか。下記は、日ごろからできることの一例だ。

  • SNSなどのプライバシー設定を再確認する
  • SNS上のコンタクト先を改めて確認する
  • 投稿の際、何をシェアするか、どこまでの情報を公開するかを考える
  • 投稿の前に、子どもに投稿することを伝え、子どもの意思を確認し尊重する
  • 投稿内容が子どもの将来に与える影響を考えた上で、投稿するかどうかを決める

まとめ

人と人とのつながりを活発化させ、情報共有の手段として欠かせないものとなった、SNSやインターネット。しかし、オンライン上で子どものプライバシーは、必ずしも十分に保護されているとは言い難い。オンライン上の様々なリスクから子どもを守るゲートキーパーとして、親が果たす役割は依然として大きい。私たち大人は、意図しない形で子どもに不利益を与えてしまうリスクから子どもたちを守るため、プライバシー設定などに関して十分な知識を持ち、注意して利用する必要があるのではないだろうか。

※1 アメリカにおける「シェアレンティング」(Sharenting)の現状と法的問題 The Current Situation and Legal Issues of “Sharenting” in the U.S.(兵庫教育大学 今出和利)
※2 What do parents think, and do, about their children’s online privacy? Parenting for a Digital Future: Survey Report 3(London School of Economics、Media and Communications)

【参照サイト】‘Sharenting’ puts young at risk of online fraud(BBC News)
【参照サイト】子供のプライバシーを無視、「シェアレンティング」が生む2つのリスク(Forbes)




用語の一覧

あ行
か行
さ行
た行
な行
は行

ま行
や行
ら行
わ行
A
B
C
D
E
F
G
H
I
J
L
M
N
O
P
Q
R
S
T
V
W
X
数字

FacebookTwitter