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サステナビリティリンクローンとは・意味

サステナビリティリンクローン

サステナビリティ・リンク・ローンとは

サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)とは、借り手のサステナビリティ・パフォーマンスの向上を促すために、借り手のESG戦略と整合したサステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPTs)を設定し、この達成状況に応じて、借入人にインセンティブやディスインセンティブが発生するローンのこと。

サステナビリティ・リンク・ローンはグリーンローンと異なり、調達資金の融資対象が特定のプロジェクトに限定されず、一般事業目的に使用されることが多い。様々なローン商品、または債券枠(Bonding Lines)・保証枠(Guarantee Lines)・信用状等の融資枠がある。融資後のレポーティングが義務付けられており、透明性が確保されている。

国際的な指針である 「サステナビリティ・リンク・ローン原則」によってフレームワークが制定されており、SPTsの設定にあたっては、自社独自の重要業績評価指標(KPI)を設定するか、外部機関による格付等を用いることができる。その際、借り手は「サステナビリティ・コーディネーター」または「サステナビリティ・ストラクチャリング・エージェント」を1社又は複数選定し、サステナビ リティ・リンク・ローン商品を組成する交渉支援をしてもらうことができる。

サステナビリティ・リンク・ローン原則とは

サステナビリティ・リンク・ローン原則(SLLP)とは、世界のシンジケートローン市場で活動する主要な金融機関の代表で構成される経験豊富な作業部会によって策定された、サステナビリティ・リンク・ローン商品の基本的特徴を捕捉するガイドラインである。また、商品の開発を推進し、その誠実性を維持・管理することを目的として策定された。SLLPは任意の推奨ガイドラインであり、取引の基本的な特徴に応じて取引ごとに市場参加者が適用することができる。具体的には、以下の4つの核となる要素に基づき、市場参加者がこのローンの特徴を明確に理解できるよう、フレームワークを規定している。

  1. 借り手の全体的な企業の社会的責任(CSR)戦略との関係
  2. 目標設定 ― 借り手のサステナビリティの測定
  3. レポーティング
  4. レビュー

サステナビリティ・リンク・ローン普及の経緯

2017年頃から欧州を中心にこのローンの組成額が急速に増加し、2018年時点では320億ドル、2019年にはその2倍以上の713億ドルに達した。2019年3月に国際的な指針として、ローンマーケットアソシエーション(LMA)などにより、「サステナビリティ・リンク・ローン原則」が整備され、今後さらに組成額の増加が見込まれている。

日本では、2020年3月に環境省が「グリーンローン及びサステナビリティ・リンク・ローンガイドライン2020年版」を策定し、今後の取組拡大が注目されている。このガイドラインの制定にあたっては、銀行部門や証券部門、コンサル・外部レビュー部門との意見交換会を実施するなど、市場関係者の意見を取り入れつつ、現場の実務担当者にとって参考にしやすい実践的な内容となっている。

借り手と貸し手のメリット

サステナビリティ・リンク・ローンの借り手のメリットは、融資を受ける際にビジネスにとって野心的なSPTsを設定することで、その達成に向けて強く動機付けられ、企業等の組織内のサステナビリティ戦略、リスクマネジメント、ガバナンスなどの体制整備の促進につながることがあげられる。また、こうした取組は、借り手の中長期的なESG評価の向上につながり、企業価値やサプライチェーン全体の価値向上にも資すると考えられる。

貸し手のメリットとしては、一定規模のESG融資を行うことにコミットしている金融機関であれば、このローンは自らの目標に合致し、借り手のデフォルト(債務不履行)などがない限り安定的なキャッシュフローをもたらす融資対象となることがあげられる。また、そのようなコミットを行っていない金融機関も、持続可能な経済活動を支援していることをアピールすることができる。

サステナビリティリンクローンの事例

2020年12月、日本政策投資銀行は芙蓉総合リース株式会社に対し、対話型サステナビリティ・リンク・ローンを実行し、リース業界では初めて環境・社会両面からの指標を設定した。日本政策投資銀行によると、これは貸付期間中の両者の定期的な対話を通して、SPTsの達成に向けて伴走を行う融資メニューである。

また、2021年1⽉、ジャパンリアルエステイト投資法⼈が農林中央⾦庫から借り⼊れたサステナビリティ・リンク・ローンが、環境面においてモデル性を有し資金調達手法の先駆的事例を⽰すものとして、環境省よりモデル事例として選定された。

海外では、英のTESCO(小売り)、チリのCMPC(紙パルプ)、中国のCOFCO International(食糧・穀物)、スペインのIberdrola(電力)など幅広い業種でのサステナビリティ・リンク・ローンの発行事例がある。

サステナビリティリンクローンを行う国内の金融機関

現在サステナビリティリンクローンを行っている国内の金融機関は以下の通りだ。

  • 三井住友銀行
  • 滋賀銀行
  • 三菱 UFJ 銀行
  • 京都銀行

【参照サイト】グリーンローン及びサステナビリティ・リンク・ローンガイドライン2020年版(環境省)
【参照サイト】Sustainability Linked Loan Principles
【参照サイト】サステナビリティ・リンク・ローン原則(環境省和訳)
【参照サイト】環境省「令和2年度サステナビリティ・リンク・ローン等モデル創出事業に係るモデル事例等」選定に関するお知らせ
【参照サイト】DBJ-対話型サステナビリティ・リンク・ローンの実行-リース業界で初、環境・社会両面からの指標設定-
【参照サイト】海外における先進的なサステナビリティ・リンク・ローン事例




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