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エコ・ウェルフェア・ステート(the eco-welfare state)とは・意味

エコ・ウェルフェア・ステートの写真

エコ・ウェルフェア・ステート(the eco-welfare state)とは?

これまでの従来的な福祉国家でなく、地球環境の限界を認識し、社会的に正当で公正な手段を用いて持続可能な環境と社会福祉を実現する国家のこと。フィンランドにおいて、タンペレ大学、フィンランド環境研究所(Suomen ympäristökeskus, SYKE)、VTTフィンランド技術研究センター、アアルト大学による共同研究プロジェクト「Orchestrating for Systemic Impact(ORSI)」で研究が進められている。

フィンランドでは1960年代頃より、福祉国家の建設に舵を切ったことで、教育水準、平均寿命、生活水準は向上し、不平等と貧困が減少した。世界の幸福度ランキングで3年連続1位に輝くなど、北欧型福祉国家としての道を歩み、最も豊かな国のひとつとも言われている。

一方で、その豊かさを実現するために、CO2排出量と天然資源の利用が他の国々と比べて高い水準となっていた。しかし、地球温暖化による気候変動や生物多様性の喪失が顕著となり、フィンランドの現在の政府は2035年にカーボンニュートラル、その後はカーボンマイナスを目指すという目標にコミットすることを決定した。

​この目標を達成するには、社会全体とその慣行を変革するシステム的な移行が不可欠である。そのためには、技術的な変化だけでなく、行動的、政治的な変化が必要になるが、これまでにこのテーマに関する実証的な知見は少ない。また、エコ・ウェルフェア・ステートへの移行には、具体的な社会的インパクトを生み出すような政策を採用するよう、国や地方のガバナンスに影響を与えなければならない。ORSIのプロジェクトでは、行動変容を促すためのイノベーションを促進するアプローチやベストプラクティスを生み出すことが期待されている。

「Orchestrating for Systemic Impact(ORSI)」の掲げる4つのテーマ

Orchestrating for Systemic Impact(ORSI)は、その名の「orchestrating」が表すように、政治的な意思決定者、市民、企業らが同じテーブルに着き、共通の目標に向け協奏、協働することを基本としている。ここでは、ORSIが焦点を当てている4つの研究テーマを紹介する。

1. 変革のための公的ガバナンスと予算編成

気候変動に関する法律や循環型経済へのロードマップなどの包括的な政治的措置や、指標の改善による持続可能な開発の促進方法などを研究。国や自治体が効率的かつ公正に持続可能な社会へ移行を進める能力を高める、インパクトベースの政策手段に関する情報の提供に努める。

また、公共調達などを中心に、国や自治体レベルでの長期的かつセクター横断的な予算編成手法を開発。様々なレベルでの社会変革を支援する仲介組織のためのベストプラクティスを導き出す。

2. 市民の日常生活における公正な移行

エコ・ウェルフェア・ステートへの移行段階で、生じる可能性のある対立や社会的不平等を無くし、公正な移行を可能にする意思決定者向けのガイドラインとツールの作成を目的とする。

実際に、ラハティ(Lahti)市やラッペーンランタ(Lappeenranta)の地域、タンペレ(Tampere)市のヒエダンランタ(Hiedanranta)地区など、異なる都市で実施されている社会的持続可能性の開発活動の実証研究を進めている。

3. 責任あるイノベーションプロセス

これまで競争上の優位性を高めることを目的としていたイノベーションプロセスを、社会的課題を実用的に解決するシステムレベルの変革をもたらすものとして、共通の認識を浸透させていくことを目指す。

具体的には、革新的な公共調達、インパクト投資、イノベーション競争、プロジェクトアライアンスモデル、地域開発プロジェクトなどに関するイノベーションプロセスなどを研究。公正で持続可能な社会への移行に向けてインパクトベースの政策の可能性について理解を深めることを目的とする。

4. 消費者の選択の規制

この研究は、持続可能なライフスタイルとは、消費者の日常の選択とそれに影響を与えるアクターとの間の相互作用であるという考えに基づいている。インフラや政治的意思決定によって、持続可能で公正な消費を伴うよう消費者の行動変容を促すための手段を提供する。具体的にはカーボンフットプリントの計算機や個人のカーボンバジェットの管理ツールなどのデジタルツールやオンライン環境の開発や情報提供を行う。

まとめ

気候変動、都市の分離、生物多様性の損失、経済的不平等など私たちの周りには多くの問題が立ちはだかっている。社会や地球環境の観点から見ると、今後10年以内にはより持続可能な暮らしへの移行が必要であり、環境に配慮した福祉国家(エコ・ウェルフェア・ステート)の実現が期待される。

これまでの社会の枠組みを大きく変革するインパクトを生み出すには、様々なレベルの人々が垣根を超え、共通の目標に向かうことが必要だ。そのためにも、決して圧力で人を動かすのではなく「Orchestrating」、調和と協働が大切である。こうした取り組みによって私たちひとりひとりの意識が変革し、美しい地球が守られることを願いたい。

【参照サイト】ORSI | Towards an Eco-Welfare State: Orchestrating for Systemic Impact (ORSI)
【参照サイト】Aalto University | Towards Eco-Welfare State: Orchestrating for Systemic impact (ORSI)
【参照サイト】TaSSu | Towards EcoWelfare State: Orchestrating for Systemic Impact (ORSI)




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