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ジェンダーの社会化とは・意味

男の子のおもちゃと女の子のおもちゃ

Image via Shutterstock

ジェンダーの社会化とは?

個人が社会の中で自身のジェンダーを認識し、それに関する規範や行動、社会からの期待や役割を学ぶプロセスのこと。出生時の生物学的な性別(セックス)と異なり、社会的バイアスを知る中で、自分自身をどのように認識し、世の中とどのように関わっていくかというジェンダー・アイデンティティを形成する過程である。

一般的に幼少期からジェンダーについての理解がはじまり、3歳ごろまでには自分のジェンダー・アイデンティティを認識するようになると言われている。どういったものや、活動、行動、態度が各ジェンダーに関連付けられているかなど、文化のジェンダー規範を学び始めるのだ。

例えば、幼少期、男の子にはアクションフィギュア、車、積み木などといったおもちゃが、女の子には赤ちゃん人形、着せ替え人形、料理や掃除などのおままごとセットなどのおもちゃが買い与えられることがある。そこからはそれぞれ、「男性には冒険心や強さ、論理的思考が必要だ」「女性には母性や、家事や育児などの役割が求められる」といった考え方が暗に読み取れる。こうした状況のなかで、個人はジェンダーに関する信念やアイデンティティを育んでいくのだ。

ジェンダーの社会化を形成する要素

子どもたちは成長過程において、周囲の人々と触れ合い交流することで、世の中でのジェンダーに関する役割や期待というものを学んでいく。その際に大きな影響を与えるのが、エージェント(担い手、仲介者といった意)と呼ばれる以下の4つの要素である。

子どもにとって親は、多くの場合ジェンダーに関する最初の情報源だ。子どもの性別がわかると、生まれる前から、それに合わせた名前、洋服やおもちゃを準備する人も多い。また、生まれてからも、男の子は外で元気に遊ぶもの、女の子は家でおとなしく遊ぶものといった考えや、接し方、話す言葉などによって子どもたちは影響を受ける。特に男の子は父親、女の子は母親と、それぞれ同性の親をより観察し、行動をとる傾向がある。またジェンダー平等を尊重する親であっても、親自身がジェンダーに対して社会化されていれば、無意識のうちに子どもの固定観念を強化してしまう可能性がある。

教師・教育システム

学校や教師は、伝統的なカリキュラムに沿って、性別ごとにグループ化し、異なる活動をさせたり、制服などの服装規定を課したりすることにより、子どもたちの発達途上の信念や思い込みを強化する原因をつくることがある。

仲間

子どもたちはジェンダーを認識しはじめる3歳ごろから、同じ性別同士で集まったり遊んだりする傾向があると言われている。男の子と女の子で遊び方に違いがあることなどもひとつの理由で、これは文化圏に関わらず多くの地域で見られる。その中で、ある行動が自分の性別にとって「適切」、または「適切でない」といった概念など社会的に期待されることを相互に学んでいく。

メディア

映画やテレビ、本などのメディアがジェンダーに対して与える影響も大きい。男性はヒーローや力強いリーダー的な存在として描かれ、女性はサポーティブで、か弱く美しいヒロインとして描かれるなど、それぞれの性別に対してこうあるべきといったジェンダーステレオタイプを強化する可能性がある。時代と共にジェンダー平等やダイバーシティなどを描くメディアも増えてはいるが、依然として男性、女性に対しての固定観念的な表現は多く残っており、ジェンダーの社会化の永続性にもつながる。

社会に対する影響

ジェンダーの社会化は、社会に対して大きな影響を持ち、社会構造を形成する一因となっている。具体的には下記のような点においてその影響が表れる。

ジェンダー・アイデンティティや個人の行動

ジェンダーの社会化は個人の考え方や興味、職業選択などに結びつく。これにより成長や可能性、また多様性のある考え方を制限することもありうる。さらにジェンダー規範が内在化することで社会の期待と自身のアイデンティティが一致せず、世の中に不適合であると感じるなど、その自尊心やメンタルヘルスを傷つけかねない。

人間関係

ジェンダーの社会化で培われたジェンダー規範は対人関係にも影響を及ぼす。それはコミュニケーションのスタイルや、パワーバランスとして現れ、職場における男女格差や社会の中での機会の不平等などを生み出すこともある。

また、ジェンダーの社会化によって性別に対する固定観念が強まり、ジェンダーの役割を永続化してしまうことで、体系的な格差を助長する懸念もある。

まとめ

ジェンダーの社会化はさまざまな問題を内包している。幼少期に身につけたジェンダーに関する固定観念は、生涯を通じて私たちに影響を及ぼし、自分らしく生きたいと思っても、なかなかその考えから脱することができない状況を作りだしてしまう。まずはそれぞれのジェンダーに基づいて個人がどのように社会化されているかを理解することが必要だろう。知ることで、自分の行動が社会化による影響なのか、自身の選択によるものなのか、といった客観的な視点で判断できるようになる。また、親、教育者、メディアなどがジェンダーの違いを強調する社会を作るのではなく、ジェンダーの役割にとらわれる必要がないことを伝えていくことも大切だ。社会的期待から解放され、個人が自分らしく潜在能力を最大限に発揮できる社会であることを願いたい。

【参照サイト】Simply Psychology | Gender Socialization: Examples, Agents & Impact
【参照サイト】ThougtCo. | What Is Gender Socialization? Definition and Examples
【参照サイト】Medical News Today | What to know about gender socialization




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