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グローバル・ストックテイク(GST)とは・意味

Aerial view from high altitude of little planet earth covered with white puffy cumulus clouds on sunny day

グローバル・ストックテイクとは?

グローバル・ストックテイク(Global Stocktake、GST)とは、温室効果ガスの排出量削減に関する国際的な枠組み「パリ協定」の長期目標達成に向け、世界の国々の実施状況を国際的に評価する仕組みのこと。

各国の政府が、気候計画において「これまでに何を達成したか」「目標を達成するために、あと何をするべきか」を特定できるようにし、より野心的な気候変動対策を行うようにするためのものだ。以下の三つのフェーズに分けられる。

  1. 情報収集と準備:UNFCCC事務局が評価に必要な情報を収集して報告書をまとめ、各国政府や非政府主体が意見書の提出などを行う
  2. 情報の技術的評価:各国の交渉担当官や実務担当者、国際機関・NGOの代表者などが「技術的対話」および「交渉会合」を三回にわたって実施する。交渉会合においては政治的な議論も含まれるが、技術的対話の中では技術的・科学的な議論に終始する
  3. 技術的評価から導き出された政治的メッセージ:世界の事例や、政治的メッセージなどを成果物とし、各国が国連事務総長の特別イベントでNDCを発表する

第一回のグローバル・ストックテイクは、2021年11月に開催された「COP26(※1)」からすでに始まっており、2023年に開催予定の「COP28」にはすべての評価が終了する予定だ。

※1 「Conference of the Parties(締約国会議)」の略称で、国連気候変動枠組条約締約国会議のこと。26とは26回目の開催を指す。

グローバル・ストックテイクが生まれた背景

パリ協定において各国は、世界197の国・地域が「世界の平均気温上昇を、産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」という共通の長期目標を掲げている。

これらを踏まえて各国は、自国が定める貢献(以下、NDC)を決定し、温室効果ガス削減に向けた取り組みをそれぞれ実施してきた。しかし、2020年末までの取り組み実施状況を鑑みると、21世紀中に世界の平均気温上昇は1.5℃を超えてしまう可能性が高いことが示唆されている。

こうしたギャップを解消するため、国際的なプロセスであり、より透明度が高いとされるグローバル・ストックテイクの概念が発案された。

グローバル・ストックテイクが機能するメカニズム

持続可能な開発の実現をめざすIGES(公益財団法人 地球環境戦略研究機関)は、「パリ協定野心度引き上げメカニズム」を以下の図で説明している。

図の通り、以下の三要素を順に実施していくことで、パリ協定における温室効果ガスの削減目標への意識を高め、確実に達成していこうという試みだ。グローバル・ストックテイクは、貢献と枠組み作りの次の「評価」の部分を担うことになる。

  1. 目標設定:自国が定める貢献(NDS、5年ごとに更新)
  2. 実施報告:強化された透明性枠組(BTR、排出量の情報などを報告)
  3. 進捗の評価:グローバル・ストックテイク(GST、5年ごとに評価)

IGES – COP27の焦点:グローバル・ストックテイク(GST)とは より転載

グローバル・ストックテイクの課題と今後

グローバル・ストックテイクの考え方は取り入れられて間もないため、その効果についてはいまだ未知数だ。

2022年に行われた第一回技術的対話について、IGES(公益財団法人 地球環境戦略研究機関)の津久井あきび氏は、以下のように述べている。

参加者が多様で、非政府主体も政府主体と平等に意見する機会を与えられるなど新しい対話スタイルへの挑戦が見られた。

一方で、収集した情報が対話にどのように活用されたがが不透明であったり、ステートメント形式の発言が多く、建設的・具体的な議論に発展しづらかったり、歴史的な排出量の責任など、技術的対話と政治的議論の切り離しがうまく行っておらず、政治的な議論が対話につながらなかったり、という課題もあった。

IGES – COP27の焦点:グローバル・ストックテイク(GST)とは より転載

国連のウェブサイトには、2022年に行われた「第一回技術的対話」の内容に関するメモも残されている。実際の内容が気になる方は、こちらを見てみても良いかもしれない。

▶︎ Summary report on the first meeting of the technical dialogue of the first
global stocktake under the Paris Agreement
(英語)

のちに開催予定の第二回・第三回技術的対話においては、第一回のさまざまな反省を活かし、より建設的なコミュニケーションが生まれるよう改善されていくことがのぞまれる。

まとめ

気候変動という地球規模の課題に対してできることは、世界中の国々が共通した目的を持って、それぞれが努力し、その努力を正しく評価していくことだ。

グローバル・ストックテイクの有効性や必要性を語るために十分な実績はまだ得られていないが、こうした各国の環境への意識を高め保つための一つの方法として、今後効果が発揮されることを期待したい。

【参照サイト】Global Stocktake
【参照サイト】IGES – COP27の焦点:グローバル・ストックテイク(GST)とは
【参照サイト】経済産業省 – あらためて振り返る、「COP26」(前編)~「COP」ってそもそもどんな会議?
【関連記事】パリ協定とは・意味
【関連記事】COP(国連気候変動枠組条約締約国会議)とは・意味




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