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グラスフェッドとは・意味

グラスフェッド

グラスフェッドとは?

日本語訳すると「牧草飼育」となり、牧草や干草などの飼料のみで家畜(主に牛)を飼育する方法のこと。グラスフェッドで育った牛の食肉や牛乳などはグラスフェッドビーフ、グラスフェッドミルクと呼ばれる。2015年にアメリカのIT起業家​​Dave Aspreyがその著書の中で「シリコンバレー式ダイエット」としてグラスフェッドバターやグラスフェッドビーフを取り入れることを紹介し注目された。健康志向に加え、近年アニマルウェルフェア(動物福祉)の問題や、持続可能な地球環境への意識向上などにより、さらに関心が高まっている。

グラスフェッドとグレインフェッド

家畜の飼育方法において、グラスフェッドとよく比較されるのが、グレインフェッド(穀物飼育)だ。その名のとおり、とうもろこしや小麦などの穀物の飼料で家畜を育てる方法だ。穀物飼料は高カロリーのため、早く太らせることができる。また、グレインフェッドは一般的に畜舎の中で育てるため運動量が少なく、霜降り肉と言われるような脂肪分の多い、柔らかな肉質になる。ただ、短期間で効率よく飼育することを優先するため、工業的な飼育であり、ホルモン剤や抗生物質を投与されることも少なくない。日本やアメリカ、カナダなどではこのグレインフェッドが主流となっている。

一方で、グラスフェッドは放牧を基本とするため、牧草を求め動き回ることで、運動量がはるかに多く、脂肪が少なく、赤みで引き締まった肉質になる。家畜をストレスフリーで育てられるが、出荷までに時間を要し、コストもかかるため、販売価格が高くなる傾向がある。オーストラリアやニュージーランドやアイルランド、南米などではグラスフェッドの飼育方法が広く行われている。

グラスフェッドの利点

グラスフェッドとグレインフェッドは、好みの問題や、飼育する場所の違いなどあり、一概にどちらが良いといった比較はできないが、ここではグラスフェッドが注目されている理由をいくつか紹介する。

低カロリーで栄養価が高い

グラスフェッドビーフは赤身が多く脂肪が少ないため、グラスフェッドビーフに比べカロリーが低いとされる。また、カロリー自体はそれほど変わらないバターや牛乳も含め、オメガ3といった健康に良いとされる良質な不飽和脂肪酸を多く含んでいる。これらは牛などの反芻動物が草を食べることで作られると言われており、人間の体内で生成できず不足しがちな栄養素の一つだ。その他にも共役リノール酸や、ビタミンAに変わるカロテノイドやビタミンEのビタミン類、タンパク質もグレインフェッドに比べ豊富に含んでいると言われる。

アニマルウェルフェアを考慮した飼育方法

グレインフェッドは畜舎やフィードロットといった狭く囲われた中での飼育が基本だが、グラスフェッドは広い牧場内を家畜が自由に移動できるため、ストレスが少なく病気にもかかりにくい。また牛などの反芻動物は、本来、草を主食としており、人工飼料やホルモン剤の投与などに頼ることなく育成できる。こうした自然に近い環境で育てられた家畜は健康を保つことができ、結果としてその肉や乳も私たちが口にするのに安全なものと言える。

持続可能な環境・土壌づくり

グレインフェッドでは家畜の排泄物の管理が行き届かないことなどで、水質汚染を引き起こす場合もある。飼料を生産するためにアマゾンの熱帯雨林が破壊される弊害なども起きている。一方で、グラスフェッドは牛などを草原に放牧させることで、土の中の有機物が増え、生物多様性が広がることで、空気中の二酸化炭素を土壌の中に蓄積させることができ、長期的には温室効果ガスを減らすことにつながるとされている。

グラスフェッドの問題点

利点の多いグラスフェッドであるが、いくつか懸念点もある。飼育期間が長いことや広大な土地を必要とすることからコストがかかることがまず大きい。その結果、流通量が少なかったり、高価であったりと、決して手に入りやすいものではない。国土の狭い日本などではなかなか取り組みづらいのも事実だ。飼料となる牧草に農薬や化学肥料が使われているところもゼロではない。認証制度などもあるが、基準も国や団体によってまちまちで、今後も整備が必要だ。また、飼育期間が長いという点において、牛から発生するメタンガスの量が相対的に多くなり、結果として温室効果ガスを減らせないのでは、と言ったグラスフェッドに対する懐疑的な意見もある。

まとめ

2023年に日本でも初めてグラスフェッド認証の規格が作られるなど、今後その需要はますます広がるだろう。しかし市場が大きくなることで、名ばかりのグラスフェッドが生まれる可能性も少なくはない。「You are what you eat」と言われるように、人間も家畜も食べるものによってその体は作られる。本当の意味で、人間も家畜も健康で持続可能な環境を手に入れるためには、一つの情報を鵜呑みにせずに、私たち一人ひとりが、生産者や流通、またその食し方に対して見極める目を持つことも大切だ。

【参照サイト】healthlie | Grass-Fed vs. Grain-Fed Beef — What’s the Difference?
【参照サイト】Food Insight | Grass-Fed Beef: Production, Regulations, and Food Labeling
【参照サイト】GRFC – Grass Roots Farmers’ Cooperative | Grass-Fed Grass-Finished Beef: What Does it Mean?
【参照サイト】A Greener World | Grassfed FAQ
【参照サイト】エシカルはおいしい!! | グラスフェッド・ビーフを考える 前編「グラスフェッドって何ですか?」
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