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インパクト投資とは・意味

インパクト投資

インパクト投資とは?

インパクト投資は、経済的なリターンと並行して、社会や環境へのポジティブかつ測定可能なインパクトを生み出すことを目的とした投資と定義される。新興国および先進国における、社会課題や環境問題に取り組む企業、非営利組織、ファンドなどの様々なセクターを投資対象としている。

インパクト投資を実践するための具体的な手法として、例えば以下のようなものが挙げられる。

  • ポジティブ・スクリーニング:ESG関連指標を参考に、評価が高い企業やセクターを投資対象として組み入れる手法
  • サステナビリティ・テーマ投資:持続可能性に関する特定のテーマに投資する手法。再生可能エネルギーや持続可能な農業、グリーンボンドなど

これらの手法は、ESG投資とも重なる部分があり、共通する方針を持つ概念でもある。ただしインパクト投資は、より意図的に社会・環境課題の解決を目指すとされる。

具体的には、ESG投資では、あくまでも経済的リターンが十分に生まれることを前提とする。一方、インパクト投資では「質の高い医療の普及」など重視する社会的リターンを設定した上で、投資判断において「その社会的リターンをどれだけ生み出せるか」を定性・定量的に評価するため、経済的リターンが比較的低いケースを許容することもある。

より良い社会の実現に貢献する投資へ

1960年代後半から台頭したSRI(社会的責任投資)は、社会や環境に悪影響を与える事業を行う企業を投資対象から除外するという「ネガティブ・スクリーニング」の傾向が強いものであった。これに対し、1990年代後半頃から、社会や環境に良い影響を与える事業を行う企業を積極的に投資対象に加えることで、より良い社会の実現に貢献できるのではないかと考えられるようになった。

インパクト投資もその流れを受けており、2007年に初めて言葉として使われたとされる。2008年の金融危機をきっかけに、健全な社会の実現を求めて、インパクト投資への参入は加速。2009年にはロックフェラー財団の主導で「Global Impact Investing Network(GIIN)」が設立され、現在においても世界的なネットワークとしてインパクト投資の発展を牽引している。

2013年には、先進国首脳会議において英国のキャメロン元首相の呼びかけにより、インパクト投資をグローバルに推進することを目的とした「G8社会的インパクト投資タスクフォース」が設立された。2015年にはブラジルやメキシコなどの5か国を加えた「Global Social Impact Investing Steering Group(GSG)」へと発展した。日本においても国内諮問委員会が2014年に創設されている。

欧米ではインパクト投資が一種のトレンドとなりつつある一方で、インパクト投資が社会課題の解決に本当に効果を発揮しているのかという問いや、「インパクト投資」という言葉で投資を呼び込むものの実際には社会的価値の低い「インパクト・ウォッシング」ではないかといった懸念も生まれている。これらを受けて、インパクト投資の要素を整理したり、行動指針や運用原則を整理する動きがある。

日本のインパクト投資の市場規模は急拡大

GIINが2019年4月に発表したレポートによると、インパクト投資の世界での市場規模は2018年末の時点で5020億ドル(約55兆円)に達した。日本では2018年度の推計が3440億円となり、前年度比で5倍近くに急拡大している。生命保険、都市銀行、ベンチャーキャピタルといったメインストリームの金融機関の新規参入と、すでに参入していた機関が投資残高を増やしたことの双方が、急拡大の要因となっている。

一般の個人投資家がインパクト投資を実行できるクラウドファンディングや投資信託などの金融商品も拡大しており、今後もこうした金融商品のさらなる充実とともに、より多くの資金がインパクト投資に集まることが期待される。

金融庁は2024年3月に「インパクト投資(インパクトファイナンス)に関する基本的指針」を公表した。官民が連携したインパクトコンソーシアムを通じて、議論を進めていくと示されている。指針が固まった今、さらに取り組みが加速するのではないだろうか。

社会課題や環境問題の解決の原動力へ

これまでもSRI(社会的責任投資)などの動きはあったが、従来の主流な投資は、投資判断の基準がリスクとリターンの2軸のみで、効率性ばかりが追求されるものとなってしまっていた。その結果、本当に必要なところに資金が行き届かないといった問題が起きている。現代において、気候変動、貧困問題、飢餓など、社会課題や環境問題は世界規模で深刻化・複雑化している。経済的リターンと同時に社会的リターンを求めるインパクト投資は、社会課題や環境問題の解決スピードを速める原動力になるはずだ。

また、インパクト投資の一種として、官民パートナーシップである「ソーシャル・インパクト・ボンド」も広まりつつある。「がん検診受診率向上」といった社会的な目的達成に向け、行政が社会的サービスの 提供を民間企業やNPOに委託し、投資家が資金拠出を行い、成果の達成状況に連動した報酬を、行政が投資家に支払うという仕組みだ。自治体の財政支出が限られる中、社会的課題を効果的に解決する手法として注目される。

【参照サイト】Global Impact Investing Network
【参照サイト】インパクト投資とは|GSG Impact JAPAN National Partner
【参照サイト】Impact Investments: An Emerging Asset Class




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