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人的資本経営とは・意味

ミーティング

人的資本経営とは?

人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方である。

人材を企業価値向上の原動力と位置づけ、中長期的な経営目標達成のため人材に戦略的に投資を行おうとする点で、従来の企業経営とは異なる。

日米欧で広がる企業の無形資産価値

人的資本経営が注目される背景に、企業価値に占める無形資産の重要性の高まりがある。世界各国・地域の代表的な株価指数の時価総額に占める無形資産の割合を見ると、米国は驚くことに90%を占めており、これに欧州が75%で続く。日本は32%にとどまっており、これは中国や韓国よりも低い水準だ。

各国上場企業の無形資産比較

図表 各国上場企業の無形資産比較(2020年)
米国:S&P500、欧州:S&P EUROPE 350、韓国:KOSDAQ、中国:CSI 300、日本(出典:Ocean Tomo“Intangible Asset Market Value Study”を基にIDEAS FOR GOODが作成)

無形資産にはブランド力や知的財産権が含まれるが、とりわけ重要性が高いのが人的資本だ。このVUCAと呼ばれる不確実性の高い時代に、将来にわたり持続的に価値を創造するには優秀な人材の獲得、育成が不可欠だからだ。

人的資本経営を考える「3つの視点・5つの共有要素」

日本における人的資本経営の考え方を体系化したのが、伊藤邦雄一橋大学特任教授が座長として2020年に取りまとめた「人材版伊藤レポート」である。同レポートは、株価低迷を打破するために日本企業のガバナンス改革を説いた「伊藤レポート(2014年公表)」の人材版だ。

企業が人的資本経営を実践するために、同レポートが提示したのが人材戦略に求められる3つの視点(Perspective)・5つの共通要素(Factor)、いわゆる「3P・5Fモデル」である。

経営戦略と人材戦略の連動(視点1)、問題を可視化する考え方「As is-To beギャップ」の定量把握(視点2)、企業文化への定着(視点3)の3つの視点から、下の図表に示す共通要素ならびに各社固有の重要なアジェンダについて、具体の戦略・アクション・KPI を考えることを企業に求めている。

図表 人材戦略に求められる3つの視点・5つの共通要素(3P・5Fモデル)(出典:人材版伊藤レポート2.0;経済産業省)

図表 人材戦略に求められる3つの視点・5つの共通要素(3P・5Fモデル)(出典:人材版伊藤レポート2.0;経済産業省)

人的資本に関する情報開示義務化の動き

このように企業価値向上のための人的資本経営の取り組みが進む一方、国内外で人的資本に関する情報開示を義務化する動きが広がっている。無形資産の重要性が増す中で、情報開示の充実を求める投資家の声に応えたものだ。

EUでは2017年会計年度から従業員500名超の企業に開示を義務化した。これに続いて、米国では2020年8月にSEC(米国証券取引委員会)の規則、日本でも2021年6月のコーポレートガバナンス・コード改訂により、上場企業に人的資本に関する情報開示が義務付けられた。

日本企業の生産性の低さが指摘されて久しい。さらにここに来て、労働力の減少や優秀な人材の海外流出など、人材に関する問題は山積している。日本企業の今後の人的資本経営の取り組みに注目だ。

【参照サイト】経済産業省 人的資本経営の実現に向けた検討会報告書~ 人材版伊藤レポート2.0~
【参照サイト】経済産業省 第6回 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会
【参照サイト】日本取引所グループ コーポレートガバナンス・コード(改訂前からの変更点)




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