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学習障害(LD・SLD)とは・意味

学習障害(LD・SLD)とは?

発達障害のひとつとされ、知的発達に遅れはないものの、「聞く・話す・読む・書く・計算する・推論する」という学習能力のうち1つ以上の習得や使用に、著しい困難を示す状態のこと。

教育分野では learning disabilityと呼ばれることが多く、世間的にはLDという名称のほうが広く知られているが、医学的には米国精神医学会の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)における「限局性学習症(Specific Learning Disorder: SLD)」という診断名で知られる。

LD・SLDは、主に3つの領域に分類される。

  • 読字障害(ディスレクシア):文字を正確に、または流暢に読むことに困難がある
  • 書字表出障害(ディスグラフィア):文字を書き写したり、文章を構成したりすることに困難がある
  • 算数障害(ディスカリキュリア):数の概念の理解や計算、数学的推論に困難がある

学習障害(LD・SLD)の根本的な原因はまだ完全には解明されていないが、生まれつきの脳機能の違いに起因すると考えられている。文部科学省は、「中枢神経系に何らかの機能障害があると推定される」としており、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではないこと、本人の努力不足や親の育て方が原因ではないことが明確に記されている。また、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)など他の発達障害と併存することもある。

学習障害(LD・SLⅮ)への認知の広がりとその特性

学習障害(LD・SLD)の概念は1960年代にアメリカの心理学者Samuel A. Kirkらによって用いられるようになった。日本においては1990年代より公的な検討がなされるようになり、2002年に全国の小中学校の通常学級に在籍する児童生徒約4万人を対象に実態調査が実施された。その中で「知的発達に遅れはないものの学習面や行動面で著しい困難を示すと担任教師が回答した児童生徒の割合が6.3%」という報告がされている(※)

また俳優のトム・クルーズ氏が自身が識字障害であることを公表した例は広く知られている。特に、2006年に国連で採択され、日本も2014年に批准した「障害者権利条約」は、障害を医学モデルではなく、社会にある障壁との関係で捉える「社会モデル」の視点を広めた。この理念に基づき、日本でも2007年以降、インクルーシブ教育や合理的配慮の普及が進められている。

大人の学習障害(LD・SLD)

学習障害の困難は子ども時代に限らず、社会人になってから業務上の困難に直面し、初めて自身の特性に気づくケースも少なくない。

職場で見られる困難の例

  • 会議の内容を理解しながらメモを取ることが難しい
  • 長文のメールや資料の要点を掴むのに時間がかかる
  • 報告書や企画書を論理的に構成することが苦手
  • 複数のタスクを同時に管理することが困難

こうした状況を見て、「やる気がない」と誤解されたり、「仕事ができない」と判断されてしまったりすることもあり、キャリアや精神的健康に影響が出てしまうことも多い。さらに、診断を受けていなくても同様の困難を抱える「グレーゾーン」の人も少なくない。

学習障害(LD・SLD)に対する支援方法

学習障害のある人が能力を発揮するには、本人の努力だけでなく、環境調整つまり合理的配慮が不可欠である。
ここでは、具体的な支援や対応についていくつか紹介する。

学校における合理的配慮

  • プリントの文字を大きくする
  • 問題を読みあげる
  • 別室でテストを受ける
  • デジタルカメラやタブレットなど学習をサポートする電子機器等のツールの使用を許可するなど
  • 職場などで合理的配慮を行う
  • 指示・伝達を口頭だけでなく文書やチャットで補足する
  • PCの読み上げソフトや音声入力ソフトを活用できる環境を整える
  • 会議資料を事前に共有し、UDフォントなど読みやすい書体を使用する
  • タスク管理アプリやスマートペンなどのテクノロジーを導入する
  • 本人の得意・不得意を考慮して業務を分担する

なお、2024年4月施行の改正障害者差別解消法により、民間事業者も合理的配慮を提供する義務を負うようになった。

専門性のある機関との連携

  • 特別支援学校や発達障害者支援センター、就労移行支援事業所、ハローワークなどとの連携を行う

災害時の支援体制や施設・設備の整備や配慮

  • 災害時に避難指示や掲示物に従った迅速な行動ができない場合における避難訓練を実施する
  • 必要な情報を選択しやすくするため不要な情報を隠す
  • 視覚的にわかりやすい表示を設置する

まとめ

学習障害(LD・SLD)はその原因などまだ明らかになっておらず、周囲からも理解されにくい障害である。だが、その環境を整えたり、ツールや代替方法を用いたりすることで、生きづらさや困難を軽減することはできる。今後はAIやテクノロジーの発達によって個別に最適化された支援がさらに発展していくことも期待される。家庭・学校・地域社会が連携し、正しい知識の習得と、配慮ある環境を作っていくことが大切だ。

文部科学省 | 参考2「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調査」調査結果

【参照サイト】文部科学省 | (8)学習障害
【参照サイト】文部科学省 | 9 学習障害
【参照サイト】文部科学省 | 学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)及び高機能自閉症について
【参照サイト】 一般社団法人 日本LD学会 | LD等の用語解説
【参照サイト】発達障害ナビポータル | 限局性学習症
【参照サイト】就労移行支援 CONNECT(こねくと)精神・発達障害専門 │ 学習障害(LD)とは?特徴や仕事探し、働き方のポイントを解説
【参照サイト】メディカルノート |「特性」としての学習障害―学習障害の人が勉強や仕事をするとき本人と周囲が意識すること
【参照サイト】発達障害教育推進センター | 学習障害(LD)のある子どもの合理的配慮
【参照サイト】AIAI VISIT | 学習障害(LD)とは?原因から特性に合わせた支援方法までくわしく解説




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