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マスキュリズムとは・意味

マスキュリズム

マスキュリズムとは?

マスキュリズムとは、男性に対する性差別を無くすための思想や運動のこと。男性への性差別の例として、「男性は一家の大黒柱として家族を養うべきだ」等、伝統的な男らしさに対する社会的期待が挙げられる。

以前は、男尊女卑を意味する言葉として使われていたマスキュリズム。しかし、フェミニズム運動が始まった1970年代以降、女性の性差別を無くすためのフェミニズムに対して、男性の性差別を無くすための概念として、ワレン・ファレル氏等により提唱され始めた。

男性差別の例

  • 男性が仕事をしてお金を稼ぐのが当たり前だ
  • 男性がリーダーシップを取るのが当たり前だ
  • 男性はお酒に強い方が良い
  • 男性が育児休暇や介護休暇を取るのは、仕事へのやる気がない証拠だ
  • 女性より収入が多い男性の方が好ましい
  • 男性は喧嘩をするものだ、男同士の喧嘩で多少の暴力は仕方がない
  • 兵役は男性のみに課されるべきだ

男性の生きづらさ

男性として期待される社会的役割が、生きづらさにつながる可能性がある。2021年に電通総研が実施した調査によると(※)、日本では全世代の男性の約半数が「最近では女性より男性の方が生きづらいと感じる」と回答。その背景として、女性差別に対する社会の評価は年々厳しくなっている一方で、家族や職場からの伝統的な男らしさに対する無意識の期待が依然として残っている点が挙げられる。

また、若い世代ほど、「女性活躍推進の政策を支持する」回答の割合が低い傾向にあった。これは、男性優位社会の恩恵を受けてきた中高年世代の男性と比べ、将来への不安を持つ若い世代は、女性への政策的支援を「男性の疎外」と捉えやすいためだと考えられている。

マスキュリズムとフェミニズム

それでは、マスキュリズムとは反フェミニズムなのだろうか?たしかに、男性優位社会を維持するために、マスキュリズムが主張されることもある。また、女性の社会進出に伴い男性としてアイデンティティが否定されたと感じたり、女性差別を無くす様々な取り組みが男性差別を促していると考えたりし、フェミニズムに反対する声もある。

その一方で、マスキュリズムの代表的な提唱者であるファレル氏は、「支配と性差別は(男性から女性への)一方通行的なものではなく」、男女平等を目指すためには「女性差別と同時に男性差別の存在を可視化する必要がある」という考えから、マスキュリズムを提唱している。このように、マスキュリズムには、幅広い主張が含まれ、幅広い文脈で使われているのだ。

まとめ

ジェンダー問題は、男性と女性の二分法的な考え方で議論されやすい。しかし、「男性らしさ」「女性らしさ」に対する無意識の偏見や期待が、男性、女性それぞれへの性差別となり、生きづらさにつながってしまっている。誰もが生きやすい社会となるには、性別に関わらず、個人としての価値観や意思決定を尊重する社会づくりが求められている。

※ 電通総研、「男らしさに関する意識調査」の結果を発表(Dentsu Group)

【参照サイト】マスキュリズム(Google Arts & Culture)
【参照サイト】男性ばかり優遇され続ける日本社会で、それでも男性が生きづらいままなのはなぜか(Presidnet Woman)
【参照サイト】ワレン・ファレル著/久米泰介訳『男性権力の神話―《男性差別》の可視化と撤廃のための学問』(評者:田中俊之)
【参照サイト】Masculinism in Europe(DIGITAL ENCYCLOPEDIA OF EUROPEAN HISTORY)
【参照サイト】Blias, M. and Dupuis-Deri, F.、(2012)「Masculinism and the Antifeminist Countermovement」(Social Movement Studies)




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