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メントリフィケーションとは・意味

メントリフィケーション

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メントリフィケーションとは?

メントリフィケーション(mentrification)とは、産業や文化的な瞬間など、その形成に貢献した女性たちの功績が男性によって上書きされてしまう過程を指す。

たとえば、コンピュータソフトウェアの開発初期やSFテレビドラマシリーズ『スタートレック』のファンダム(ファン集団)など、現在では男性が多く携わる分野が、もともと女性が携わっていたことを忘れ去られるにつれて、徐々にその価値を高めていく過程を表している。

また、現在では女性が多く携わる分野が、もともと男性が携わっていたことが忘れ去られるにつれて、徐々にその価値を失っていく過程も表す。

この新しい言葉は、女性たちが貢献した産業や文化的な瞬間から、女性たちが排除されてきたことを示すものだ。

なお、メントリフィケーションという用語は「ジェントリフィケーション」をもじったもの。ジェントリフィケーションとは都市の富裕化現象を指し、日本語では「高級化」や「階級浄化」などの翻訳が当てはまる。この言葉も、裕福な階層の人が住む空間に都市が変化する一方で、低所得者層が立ち退きさせられることへの批判性が含まれている。

ジェントリフィケーションが、ある場所を「裕福な階層の人の趣味に合う」ように「改良」するプロセスを表すとすれば、メントリフィケーションは、女性の参加と貢献の歴史を取り上げ、その物語を男性的なシンボルで飾り立てることによって「男性的」に「改良」するプロセスとなる。

マニフィケーションとメントリフィケーション

似たような言葉に「マニフィケーション(Manification)」という言葉がある。イギリスを拠点とし、社会学と心理学の教師と生徒のためのデジタル・リソースを制作する映画制作会社「ShortCutsTv」のウェブサイトでは、ステレオタイプジェンダーバイアスアンコンシャス・バイアスを気づかせる以下の有名なクイズを例に、マニフィケーションとメントリフィケーションについて解説している。

父親と息子が交通事故に巻き込まれ、父親は重傷を負い、息子は緊急手術のために病院に運ばれた。
しかし、外科医は息子を見て「手術はできない」と言う。
その理由を尋ねると、外科医は『私の息子だから……』と答える。

一体どういうことだろうか?

マニフィケーションとは

もし、この外科医が交通事故に巻き込まれた少年の母親であると即座にためらいなく答えられた場合にはマニフィケーションの罠を見事に回避したといえる。

マニフィケーションとは、男性的でないものを男性的または男性的であると思わせる、引き起こす過程を指す。このクイズにおいては、外科医が男性的な職業であるという誤った前提が無意識のうちに作られる過程がそれだ。

たとえばある種の仕事やサッカーやビデオゲームといった娯楽、コンピューターなどの物は本質的に男性的/男性的だと思わせるものといった意味合いだ。

対してメントリフィケーションとは

メントリフィケーションはマニフィケーションと密接に関連する概念だが、冒頭で紹介したように、もともと女性と結びついていた、あるいは女性によって生み出された製品や文化的な活動が、男性により、または男性のために再認識される過程を示す。

たとえばビールは、数百年前までは家庭内で女性が家族で飲むために独占的に醸造していたとされている。美術史や政治、経済、社会学など人文科学の幅広いテーマに関する記事を掲載するブリストリアン誌の記事によれば、古代メソポタミアまでさかのぼると、ビールは女性によって造られていたという記録が残っている。しかし資本主義の発展とともに、ビール醸造は工場に移行し、やがて男性による、男性のための飲み物として売り出されるようになったのだ。

メントリフィケーションのより現代的な例にはインターネットや人工知能、ロボティクスといった分野の最先端技術、「ニューテクノロジー」の開発があげられる。この分野は男性的な職業/男性が夢中になることとして再創造された分野といえ、マニフィケーションとメントリフィケーションの両方が進んでいる。

たとえば、パーソナルコンピューターの開発には女性が大きく貢献したが、女性が開発に参加したこととその功績は、多くの点で消し去られ、今も消し去られ続けている。科学分野も同じようなメントリフィケーションの事例だ。放射線の研究でノーベル物理学賞とノーベル化学賞を受賞したマリー・キュリー、また19世紀の数学者で世界初のコンピュータープログラマーとして知られるエイダ・ラブレスなどを除けば、女性科学者の名前をあげるのが難しいことに気づかされるはずだ。もちろん、男性の場合はその逆だ。

メントリフィケーションはいまだよく知られていないが……

なお、「Mentrification」という言葉は@obstinatecondolementというユーザーがTumblrで作った造語である。この言葉は、イギリスのガーディアン紙が、この言葉のTumblrでの大流行を取り上げたこと、そして「広く認識され、本質的に知られているにもかかわらず、まだ説明されていないものを表現する一つの単語が登場した」と紹介したことで、一躍注目を集めた。

しかし調べてみると、ガーディアン紙の記事をリツイートして称賛する数人の人々の存在以外には、ウェブにアクセスしてみてもほとんど何も見つからない。ソーシャルメディアにはこの造語に関するトレンドになるようなハッシュタグもない(たとえば2024年8月22日時点で、Instagramで「#mentrification」と検索したところ投稿は26件だけだった)。

だが、ここでX(旧Twitter)の男女別利用状況を見てみる。ドイツ・ハンブルクに本社を置く統計データ会社Statistaによると、2024年1月の時点では、世界中のX利用者のうち男性は60.9%、女性は39.1%となっている。この比率は少しずつ変化していくものだと思うが、男性優位の環境において、そのことを指摘する言葉が注目を集めるのに苦労するのも不思議ではない。皮肉にも、メントリフィケーションという言葉がなかなか表に出てこないということが、支配的な利害関係者が代替的な提案を聞かないようにするために結束を固めている一例となっている。

まとめ

メントリフィケーションは、女性の文化的業績が男性的な神話に包摂され、その功績が完全に忘れ去られるか、男性が残した功績の影に隠れてしまうという側面につながる。加えて、この言葉には、もともと女性が開拓したものを男性が手柄にするという考え方も含まれる。

先述したように、メントリフィケーションという用語は現在、この言葉を使ったり、広めたりする人々を見つけるのに苦労しているかもしれない。だが、メントリフィケーションも、ともに紹介したマニフィケーションも日常的に用いられる概念でなくとも、フェミニストの視点について議論する時、あるいは非フェミニストの視点を評価するために使う時など、社会学的に有用な言葉となるはずだ。

コンピューターや『スタートレック』、サッカーやビデオゲーム、ビールは男性のもの、あるいは男性的なもの、という無意識のうちに結びつけられる印象は、社会の公正さではなく、私たちが理解している不公正さに向けられている。メントリフィケーションという新しい言葉が広く知られるようになれば、徐々に歴史的なジェンダーバランスを取り戻すためのムーブメントが巻き起こるのかもしれない。

【参照サイト】Urban Dictionary: mentrification
【参照サイト】The Waves on “mentrification,” the rise of femtech, and Always Be My Maybe.
【参照サイト】Manification and Mentrification
【参照サイト】Understanding the Male Gaze and How It Objectifies Women
【参照サイト】Women and Beer: Is it just a ‘Man’s drink’? — The Bristorian
【参照サイト】‘Mentrification’: how men appropriated computers, beer and the Beatles
【参照サイト】mentrification – Wordability




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