ニューラグジュアリーとは・意味
ニューラグジュアリーとは?
ニューラグジュアリーとは、従来のラグジュアリーが上流社会やエリートにしか手の届かない高額品やサービスを利用する贅沢のあり方を表していたのに対し、消費者の生活を本質的に豊かにするモノ・コトを表す。特定の購入者層だけでなく、一般的な消費者もアクセスしやすい選択肢となっている。
従来のラグジュアリーを象徴づけるものが「金銭的な豊かさ」であるならば、ニューラグジュアリーは「精神的な豊かさ」を求めるものだ。ニューラグジュアリーが重視するのは、富裕層にしか手の届かない「モノ」を手に入れたり、所有したりすることではなく、自分や他者、社会のために良いことを実践すること、消費者自身の生活を意味あるものにすることだ。
ベルリンに拠点を置き、音楽やファッションなどあらゆるカルチャーをカバーするブランドHighsnobietyは「ニューラグジュアリーとは、着るものだけでなく、何を知っているかということでもある」と定義している。
ニューラグジュアリーの定義はいまだひとつのものに収まるものではないが、従来のラグジュアリーとニューラグジュアリーの違いを見ることでその理解が深まる。
従来のラグジュアリー | ニューラグジュアリー | |
ブランドに求めるものは何か |
ステータス | 自己表現 |
ブランド品に見出す社会的称賛 | ブランド |
歴史や背景&文化的信頼性 |
「ラグジュアリー」が意味するものとは | 贅沢 |
高度な本質主義 |
ニューラグジュアリーの変遷
ニューラグジュアリーの背景にあるのはデジタル化の加速だ。従来のラグジュアリーからニューラグジュアリーへと転換した理由には、ミレニアル世代(1980〜1990年代なかば生まれ)やZ世代(1996年~2014年生まれ)の消費者によるデジタルベースの購買行動が増える中で、彼ら消費者が企業側の情報提供に透明化を求めるようになったことがあげられる。
ラグジュアリー分野はグルメや自動車、アートなど多岐に渡るが、ここではファッションの事例をもとに記述していく。
ラグジュアリーの歴史
中世・ルネサンス時代に遡ると、ラグジュアリーは社会階級の差異化の手段となっていた。
中世のはじめは、ラグジュアリーという言葉が表す「贅沢」は社会の否定的な側面と協調的に結びついていた。主に贅沢と悪徳の結びつきや社会における善良な男女の常識から逸脱していることが理由にあげられる。たとえば、贅沢は地上の快楽や楽しみと結びついており、それは罪ともみなされていた。
しかしルネサンス時代になると、人生の美と喜びに対する認識は変化し、ラグジュアリーが単に罪深いものとはみなされなくなる。美しくユニークなものは人間にとって人生の美の一部である、と捉えられるようになったのだ。ひいては地位や達成感に結びつくモノへの価値観が肯定されるようになり、社会の頂点にあった王侯貴族は、贅沢な楽しみや極上の品々を手にいれるようになる。
そして王侯貴族、また同様に強い権力を持っていた宗教が絶大な権力をふるう時代に、限られた階級に所属する者のみがラグジュアリーを享受できるようにすることで、彼らにとって都合の良い社会的秩序が保たれてきた。
その後、産業化社会が進み、資本家が社会の上位層を占めるようになると(新興ブルジョア)、彼らが自分たちの社会的地位を輝かせるための新しいラグジュアリーが発達していく。それはモノのスペックだけでなく、そのモノを着こなす、使いこなすための知識やマナーをともなうものだった。
安西洋之、中野香織『新・ラグジュアリー ――文化が生み出す経済 10の講義』(クロスメディア・パブリッシング<インプレス>、2022年)であげられている具体例には、貴族や富裕層の男性たちの社交の場だったジェントルマンズクラブでの作法や19世紀半ばのイギリスで生まれた“紳士服のフォーマルウェアを取り巻く複雑で煩瑣なルールや作法”が紹介されている。
ラグジュアリーの定義が消費者に委ねられるように
従来のラグジュアリーはエリート層によって定義されていた。たとえば彼らが購入するモノやラグジュアリーファッションメゾンがそうと定めたモノこそが「ラグジュアリー」だったのだ。これまでのラグジュアリーファッションは、多くの場合、細部にまでこだわった職人技、高級な品質、強いステータスと結びついていた。この独占性のおかげで高価な価格帯を伴っていたのである。
しかし今日、動物の毛皮、高級デパートといった豪華なイメージと結びついていたかつてのラグジュアリーは、社会的トレンド、より広い社会的見解、ソーシャルメディアなどによって従来と異なる定義がされ始めた。
デジタル化の加速や持続可能性への意識向上などの影響から、「ラグジュアリー」の定義が日常の消費者に委ねられるようになったのだ。デジタルをベースにした購買行動をする世代が情報提供の透明化を求めるようになり、企業活動に持続可能性や社会的責任を問うようにもなった。
ニューラグジュアリーの消費者は何より、購入に際して感情的な充足感を求めている。従来のラグジュアリーにも共通する本物であることやユニークであること、限定的であることのほか、倫理的であること、パーソナライズされた経験を、さらに環境意識が高い消費者であれば持続可能性があることも求めている。
ニューラグジュアリーの具体例
ニューラグジュアリーは、消費者の生活を本質的に豊かにするモノ・コトであり、一般的な消費者にもアクセスしやすいものである。昨今重視されている価値観は自分のため、他者のため、社会のためになっているかどうか。消費者は自分が大切だと思う分野にはお金を惜しまない傾向が高まっている。
安西洋之、中野香織『新・ラグジュアリー ――文化が生み出す経済 10の講義』(クロスメディア・パブリッシング<インプレス>、2022年)では、ニューラグジュアリーに位置する日本のブランドがいくつか紹介されている。その中でも代表的なものとしてMOTHERHOUSEを取り上げる。
MOTHERHOUSE
2006年にバングラデシュで設立されたMOTHERHOUSEは、発展途上国に力を与えるというビジョンから生まれたファッションブランドだ。創業者の山口絵理子氏は、発展途上国の素材や職人の技術を活用することで、発展途上国の可能性を示すことに専念してきた。
MOTHERHOUSEは、ファストファッションの再定義から持続可能性の促進まで、業界に新たな基準を打ち立てている。
たとえばMOTHERHOUSEでは環境への取り組みの一環として、顧客の革製バッグをリサイクルして再利用するRINNEシリーズのバッグやアクセサリーを提供している。RINNEシリーズでは、顧客の使い古したバッグを預かり、革を処理して回復させ、分解して、最後に必要な箇所にカラーリングを施すといった丁寧な仕事によって、リサイクル素材であっても高い品質を保っている。
またMOTHERHOUSEでは商品のストーリー性を重視してブランディングを行っていることから、セレクトショップへの卸しや提供を一切行っていない。顧客は直営店のみで商品を購入することができる。
従来のラグジュアリーブランドの名前も
先述したベルリンに拠点を置くカルチャーブランドHighsnobietyは、ニューラグジュアリーの定義を試みた書籍『The New Luxury: Defining the Aspirational in the Age of Hype』を刊行しており、その中でグッチ、バレンシアガ、プラダ、ルイ・ヴィトンなど、有名ブランドにも言及している。これらは、従来のラグジュアリーファッションと聞いて多くの人が思い浮かべるであろうブランドだが、Highsnobietyの編集ディレクターであるジアン・デレオン氏は、若い消費者がブランド名だけに留まらない価値を求めていることを強調している。
新たな価値観へ
ラグジュアリーはかつて、独占性によって定義された社会的地位を示す象徴だったが、今では消費者の意見や若者のトレンドに影響されるものとなった。ラグジュアリーとは、もはや高価な価格帯に囲い込まれたものではなく、誰もがアクセスできるものなのである。
そして今やラグジュアリーな商品の価値を示すのは、襟に縫い付けられたブランド名や衣服に施された装飾品だけではない。製品の背景にある品質、ストーリー、持続可能性といった信頼性を考慮することで、その製品らしさが生まれ、全体的な体験が生まれるのだ。
【参考文献】安西洋之、中野香織『新・ラグジュアリー ――文化が生み出す経済 10の講義』(クロスメディア・パブリッシング<インプレス>、2022年)
【参照サイト】Why ‘Luxury’ Doesn’t Mean the Same Thing to Modern Consumers
【参照サイト】How Highsnobiety Defines The New Luxury
【参照サイト】What is New Luxury Brands | IGI Global
【参照サイト】The Future Of Luxury: 7 Trends To Stay Ahead In 2023
【参照サイト】A history of luxury
【参照サイト】「ニューラグジュアリー」型ブランドの創造
【参照サイト】The Worldfolio: Revolutionizing fashion: MOTHERHOUSE’s journey from Bangladesh to global recognition
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た行
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- ダークパターン
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- 代替肉(フェイクミート)
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- タイニーハウス
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- 他者化(Othering)
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- 脱炭素社会
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- チーフ・ハピネス・オフィサー(CHO)
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- デザイン人類学
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- デジタルウェルビーイング
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- デジタルシティズンシップ
- デジタル製品パスポート(デジタルプロダクトパスポート)
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- デジタル・ディスラプション
- デジタルデトックス
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- デジタルトランスフォーメーション(DX)
- デジタルニュートリション
- デジタルメディスン
- デジタル倫理
- デジタルファッション
- データドリブン
- テックラッシュ
- ディーセント・ワーク
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- デミセクシャル(デミセクシュアル)
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- 電子廃棄物
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- 都市農業
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- BAME
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D
E
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- e-ヘルス(e-Health)
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F
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G
- GHG排出ピークアウト
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H
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J
L
- LAC(Living Anywhere Commons)
- LCA(ライフサイクルアセスメント)
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M
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N
O
P
Q
R
S
- SaaS(Software as a Service)
- 里山イニシアチブ
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