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フィジカルインターネットとは・意味

物流拠点と人

フィジカルインターネットとは?

フィジカルインターネットとは、インターネット通信の考え方を物流システムに適用して、物流の効率化を目指す仕組みのこと。具体的にはトラックなどの輸送手段や倉庫などの物流拠点を複数の企業でシェアすることにより、積載率や稼働率を上げ、燃料消費を抑えることを目的としている。

現在の物流システムではトラックや倉庫を企業ごとに所有し稼働する自社配送が基本となっており、荷台に空きがある状態でトラックを走らせたり、遠方の倉庫から荷物を輸送しなければならなかったりと無駄が多い状態だ。フィジカルインターネットが実現すれば、こうした無駄を減らすことができるという。

またフィジカルインターネットにより物流が効率化できれば、脱炭素社会の実現に向けた温室効果ガスの排出削減にもつながるといわれている。

フィジカルインターネットの動向

フィジカルインターネットの議論は、物流資産の有効活用や温室効果ガス削減目標の達成のため、2010〜2013年頃に欧米で始まった。2013年には欧州の130の企業・研究機関等が参加し、フィジカルインターネットを研究するALICE(欧州物流革新協力連盟)が設立されている。

日本でも物流業界が抱える様々な課題の解決につながるとして、近年議論が加速している。2021年には経済産業省と国土交通省がフィジカルインターネット実現会議を開催し、2040年までのシステム構築を目指してロードマップが策定された。

フィジカルインターネットの仕組み

フィジカルインターネットは、インターネット通信で回線を効率的に使用するために採用されている「パケット交換方式」を物流に当てはめたものだ。

パケット交換方式とは、一つの通信のみで回線を占有するのではなく、データを小分けにして複数送受信することで回線利用効率を上げる仕組みである。

これと同様の仕組みでトラック、倉庫、集積所、データなどを各企業が占有するのではなく複数社で共有することにより、一つのトラックでより多くの荷物を輸送できたり、より最適なルートで配送ができたりと物流を効率化することができる。

フィジカルインターネットが注目される背景

近年フィジカルインターネットが注目される要因として、下記のような背景があげられる。このような背景により日本では、2014年頃から物流サービス価格が年々高騰する「物流コストインフレ」が起きている。

宅配便利用の急増

近年インターネットが普及し、Eコマース市場が拡大したことで宅配便の利用が急増している。中でも一般家庭への小口配送が大幅に増えたことで、輸送や荷物の上げ下ろしなど配送の負担が増加している。

物流ドライバー不足

規制緩和による競争の激化でドライバーの労働環境が悪化した結果、2000年代後半以降、ドライバーの数が急減している。日本ロジスティクスシステム協会(JILS)が発表した「ロジスティックスコンセプト2030」によると、2027年にはドライバー数が24万人不足し、2030年には物流需要の約36%が運べなくなるとの試算もある。2021年4月より適応されるトラックドライバーの時間外労働に対する上限規制や少子高齢化の影響もあり、ドライバー不足は今後も深刻化すると予想されている。

脱炭素対策のコスト上昇

2019年度の日本のCO2排出量のうち、貨物自動車が占める割合は約6.8%といわれており、物流業界は輸送などでCO2を多く排出する。

このため政府が目標とする2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、省エネルギーや脱炭素エネルギー利用といった対策推進が強く求められており、今後も物流コストの上昇やサービス供給が不足することが予想されている。

フィジカルインターネットの事例

現在フィジカルインターネットの構築に向け、国内外で各企業が様々な取り組みを行っている。

米国Amazonによる配送拠点の共有

Amazonはドイツの物流大手ドイツポスト(DHL)と空港の物流拠点を共有する取り組みを実施している。アメリカとヨーロッパでは時差により物流の稼働ピークが異なるため、一つの拠点を時間を分けて使用することで有効活用できるという。その他、自社がもつ独自の配送網を他社にも開放し共有することで効率化を図っている。

国内コンビニ大手3社による共同配送

2020年8月にセブンイレブン、ローソン、ファミリーマートの3社は経済産業省の支援により共同配送センターを設置し、各社店舗への商品の納入を共同のトラックで行う実証実験を行った。これにより配送距離が短縮され、トラックの回転率・積載率の向上やCO2排出削減などの効果が見られたという。

佐川急便による協業

佐川急便はJR西日本・JR九州と連携し、新幹線に受託荷物を積み込む「貨客混載輸送」の試みを行っている。佐川急便側は時間に正確な鉄道を輸送に活用することで集配効率を高めることができ、JR側は余剰スペースを有効活用することで収入を上げることができるという。

また佐川急便はCO2削減や環境負荷軽減の目的で、ヤマト運輸との共同配送も行っている。荷物の引き渡しや集荷を相互で協力して行い、生産性の向上や集配業務の効率化、働き方改革などにつなげている。

フィジカルインターネットの今後

フィジカルインターネットは物流の業務効率化だけではなく、CO2削減や省エネといった脱炭素対策にも効果が見込まれる。また企業同士の連携が強化されることにより、災害時などにも滞りなく物資を流通させることができ、社会インフラの強化にもつながるといわれている。

しかし現時点では、まだ実装に向けた開発段階のため、新しい物流システムの構築やハブとなる物流拠点・プラットフォームの設計、共通ルールの形成など複雑な課題も多くある。また、今後さらにフィジカルインターネットの構築が進んだ先には、物流ビジネスモデルのあり方の変革、働き方改革、人材育成といった側面についても検証や対策が必要となるだろう。

フィジカルインターネットは企業だけでなく、消費者、社会、環境など多方面に影響する取り組みである。だからこそ、システムの構築においては国内外の動向や事例を参考にしつつ、官民が協力して意見を出し合いながら進めていくことが大切だ。

【参照サイト】物流危機とフィジカルインターネット
【参照サイト】フィジカルインターネットの歴史と海外動向
【参照サイト】フィジカルインターネット・ロードマップ 2022年3月 フィジカルインターネット実現会議
【参照サイト】物流を取り巻く動向について
【参照サイト】フィジカルインターネットとは?物流業界の課題解決につながる新しいコンセプト




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