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林間放牧(シルボパスチャー)とは・意味

放牧

林間放牧(シルボパスチャー)とは?

林間放牧とは、森林の下層植生を飼料として林内に家畜を継続的に放牧しながら、林木の林業利用を行う作業形態のことを指す。林業サイドからは、混牧林とも言われ、英語ではシルボパスチャー(silvopasture)と呼ばれる。

家畜の林間放牧は日本では古くから行われているが、育林作業の省力化と低コスト肉牛生産を両立させることが可能であると言われている。

林間放牧のメリットとデメリット

畜産サイドのメリットとして、家畜生産費を削減できることや、繁殖牛および子牛の発育が良好になること、放牧中の糞尿処理が不要になる、といった点が挙げられる。中でも最大のメリットは、家畜の飼料を森林下草で代替することによる生産費の削減であるという。

林業サイドのメリットとしては、下草刈りや施肥、野ネズミ防除、天然更新の促進などが家畜の力で行われる点が挙げられる。また、林業の労力軽減という側面もあり、約70%の労力が軽減されたという事例もあるという。

畜産サイドのデメリットとしては、監視や捕獲などの日常管理労力の増加、育成牛の発育不良、借地料の増加、放牧中の堆肥利用ができない、牧柵・捕獲施設などのコスト、といった点が挙げられている。

一方で林業サイドでは、林木被害、土壌保全、伐採作業の障害といった点がデメリットとして挙げられている。

家畜の糞尿に関してはメリット、デメリットの両側面があり、糞尿処理が不要といったメリットが、逆にその期間中の堆肥利用ができないというデメリットとなっている。一方で、近年は農家当たりの飼育頭数増加のために糞尿処理が全体的な課題となっているため、林間放牧のメリットの方が大きいと言えるだろう。

家畜の生産性については、放牧条件によって結果は様々であり、一般化することは難しいという。

林間放牧の事例

ここでは、国内で行われている林間放牧の事例を紹介する。

大分県 朝地町温見(ぬくみ)

大分県の久住山麓にある朝地町温見(ぬくみ)では、1950年代から牛の林間放牧が行われている。シイタケ栽培に利用するクヌギの木は、ヤマイモのつるなどが巻きつくとシイタケ原木としては価値が落ちてしまうが、牛がツル草などを好んで食べてくれるため、シイタケの栽培にとって都合が良い。また、牛が雑草の下草を食べたり蹄で土を適当に耕し、さらに糞尿も肥料として山林に還元されるため、クヌギの育ちも良くなるという。大分県では、林地の管理も兼ねた循環型農業の典型的な形態であるとし、「おおいた型放牧」としてこれを推進している。

宮崎県 諸塚村

総面積の95%を林地が占める宮崎県諸塚村では、林野と畜産を結合させた「林畜複合システム」として産業化している。諸塚村では、1995年から畜産の省力化を目的とした林地の畜産利用の模索が始まり、徐々に「畜産的放牧」から、牛が森林を管理する「育林放牧」の考え方へと変化した。また、諸塚村では、荒廃した保安林に牛を放牧し、人が作業しやすい状況になったら翌年に保安林としての機能を持つ混交林を育てるという放牧利用も行われている。

島根県 鹿島町

島根県松江市の中山間地域である鹿島町では、地元の畜産農家の組合と海岸部の漁業組合が協力し、松枯れのために荒廃した森林に和牛を放牧して雑草を食べさせている。作業しやすい環境になったら不用木を伐採し跡地に植林をすることにより、森林の再生を促しているという。これにより、森から海へ豊かな栄養分が注がれ、プランクトンや海藻類の生育が促進されるとし、「森林再生型放牧」として推進している。

林間放牧の可能性

上述のように、林間放牧は古くから実践されてきている方法であるが、生物多様性やリジェネラティブ農業(環境再生型農業)が注目される昨今において、そのポテンシャルが見直されつつあると言えるのではないだろうか。

【参照サイト】肉用牛による森林利用の可能性 : 21世紀に向けた林間放牧の方向性と課題(2000)
【参照サイト】農業協同組合新聞「牛の放牧により中山間地域の農業を蘇らせよう」
【参照サイト】「おおいた型放牧」のすすめ
【参照サイト】近畿農政局「肉用牛放牧の手引き」改訂版(増版)




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