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社会正義(Social Justice)とは・意味

社会正義(Social Justice)

社会正義(Social Justice)とは?

社会正義(Social Justice)とは、社会の構成員である人々が平等に扱われ、社会全体の福祉の保障と秩序の維持を実現すること。また、そのために社会の構成員である一人一人が持つべき考え・心のあり方や、守るべき社会ルールを指す。

社会正義の歴史

社会正義という言葉が登場したのは、イギリス産業革命やフランス革命が起きた18世紀のヨーロッパである。専制君主制から近代社会への転換期として、「個人」と「社会」という概念が形成された。そして、「富者と貧者」「強者と弱者」「主人と奴隷」といった社会的不平等が、ルソーら思想家により指摘されたのだ。またイギリスでは、産業革命を通して「労働者」という新たな階級が生まれた。そして、資本家による労働者搾取に対する抗議や、社会的生産物を平等に分配する社会の在り方が議論されるようになったのだ。

19世紀に入り、産業革命と共に労働問題がヨーロッパ大陸中に拡大する中、社会正義は革命的スローガンとして広まっていった。やがて、労働組合がイギリスで設立されるなど、労働者の権利を守る社会の動きは加速。劣悪な労働環境や子どもの就労を規制する国際労働法の必要性が認められ、1919年には国際労働機関(International Labour Organization、ILO)が設立された。ILO憲章の冒頭には、以下のように社会正義が掲げられている。

「世界の永続する平和は、社会正義を基礎としてのみ確立することができる」

このように、世界の労働問題、不平等、貧困問題に立ち向かう上で、社会正義は基本的な概念である。

社会正義と現代の労働問題

しかし、「社会正義」の概念が登場してから3世紀たった現在も、労働者の保護や不平等・格差の是正が世界で実現したとは言い難い。現在も日本を含む各国で、様々な課題が残っている。

  • 病気や障害などを理由とした就労機会や職業選択の制限
  • 結婚、出産、育児、介護等、性的役割分担を理由とした就労機会の制限
  • 人種や性的マイノリティであることを理由とした職場での偏見や差別
  • 貧困、地域、学歴等を背景とした就労格差

キャリア支援に求められる社会正義

不平等や格差を是正するため、キャリア支援の観点からも社会正義は近年注目を集めている。例えば、キャリアカウンセリング関連の国際学会では「社会正義(Social Justice)」や「公平性(Equity)」がテーマに取り上げられるようになった。従来、キャリアカウンセリングは、労働市場における自由競争の促進といった新自由主義の側面が強いという批判があった。しかし、社会的弱者を支援し、公平な社会を実現するという観点から、キャリア支援の在り方が見直され始めたのである。

  • 教育、職業訓練、労働市場における多様性(Diversity)・公平性(Equity)・社会的包摂(Inclusion)の促進
  • 社会的弱者やマイノリティに属する人々の抱える葛藤や苦労に耳を傾ける、カウンセリング支援
  • 社会的弱者やマイノリティに属する人々に重点を置いた教育機会や職業訓練の提供、また自身が課題を解決できるようにするための手段の提案、エンパワーメント活動
  • 自治体や企業の制度や仕組みに対する改革支援、アドボカシー活動

まとめ

社会正義と聞くと、一見難しい問題のように聞こえるかもしれない。しかし、職場や学校等、日々の生活における不平等や格差、またそれにより生じる葛藤や矛盾を解決するための取り組みが、社会正義である。普段の生活で何か行動を起こすときや、何かを決めるとき、「これは不公平ではないだろうか」「排他的ではないだろうか」「より多くの人に良い結果をもたらすにはどうしたらよいか」等、ふと立ち止まって考えることが、社会正義の第一歩となるだろう。

【参照サイト】社会的正義について -正義の現代的意義-(菊池 勇夫)
【参照サイト】社会正義とILO(国際労働機関(International Labour Organization))
【参照サイト】キャリアコンサルティングと社会正義(独立行政法人労働政策研究・研修機構)
【参照サイト】『ソーシャルジャスティス (社会正義のキャリア支援) 』について思うこと(特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会)




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