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サステナブルウェブデザインとは・意味

Website Development

サステナブルウェブデザインとは?

サステナブルウェブデザインとは、社会や地球環境に配慮したウェブデザインのこと。地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出を極力減らしつつ、ユーザーにとっての利便性も確保したウェブサービス設計を目指す。

アメリカのデジタルエージェンシーMightybytes社によって提唱され、近年Web業界を中心に注目されている。

インターネットが生み出す環境問題

現代社会は、ペーパーレス化やリモートワークの発達により、これまで資源の使用を必要としてきたものがデジタルに置き換わることで一見エコになっているようにも見える。しかし、インターネットの使用は、見えにくいだけで実は大きな環境負荷を伴っている。

インターネット上にはウェブサイトから暗号通貨まで、さまざまな製品・サービスが存在している。これらの数は、インターネットの普及と共に増え続けており、データセンター、通信ネットワーク、エンドユーザーデバイス(ラップトップ、スマートフォン等)を通して大量のエネルギーを消費する。そして、このエネルギーが化石燃料から作られたものである限り、それに伴う環境負荷は避けられない。

Lean ICT Reportによれば、インターネットに関連するCO2排出量は世界で排出される全体の量のうち約3.7%を占めている(※1)。これは、航空業界の排出量に匹敵する量であり、中国・インド・米国の排出量の次に多い。さらにこの量は2025年には2倍になると予想されており、2025年にはインターネット関連のCO2排出量は世界のどの国のCO2排出量よりも多くなるという(※2)

※1 Lean ICT Report
※2 Internet Health report

サステナブルウェブデザインの可能性

ウェブサイトの作り方やデザインを工夫することでサイトをできるだけ軽くし、エネルギーの消費を節約することで上記のような環境負荷を減らすことが、サステナブルウェブデザインの目的だ。以下は、具体的な方法の一例だ。

  • 画像や動画の使用を減らす・最適化する
  • 多くのデバイスに入っている標準のフォントを使う
  • 環境負荷の低い色を使用する
  • SEOを最適化する
  • ユーザーエクスペリエンス(UX)を改善する
  • ユーザー情報の不要なトラッキングを避ける
  • 再生可能エネルギーを使用するサービスプロバイダーを使う

上記を見てみると、ウェブサイトデザインにおけるさまざまな選択肢が狭められるように感じるかもしれない。しかし、これらの改善を行うことは、電力消費を削減するだけなく、ウェブサイトの読み込み速度を上げることにもつながる。そのため、環境だけではなく、サイトを訪れるユーザーにとってもメリットになることを覚えておきたい。

また、画像やフォントなど、ひとつひとつのコンテンツを精査し、情報の伝達に本当に必要な要素だけを残していくことで、環境にも優しく、より効率的に本来の目的を達成するウェブサイトを構築することができるようになるのも、サステナブルウェブデザインのポイントだ。

サステナブルウェブデザインの事例

世界ではすでに、上記のような点に配慮してウェブサイトを改善したり、環境負荷を極限まで抑えたウェブサイトをデザインスタジオが公開したりと、さまざまな事例が出てきている。

例えば、イギリスの建築・デザイン情報メディア「Dezeen」は、コードの変更や画像形式の変更などを通してウェブサイト運営の大幅なCO2削減に取り組んでいる。2021年には、実際に改善の実施から2週間で、1ページあたりのCO2排出量を21グラムから7.18グラムに減らすことに成功したと発表。同時に、サイトの平均読み込み時間も58.3%短縮されたという。

また、イタリアのデザインスタジオ「Formafantasma(フォルマファンタズマ)」は、2021年にCO2排出量を削減するために意図的に簡素化したWebサイトを公開した。大きな画像を使わず、フォントには一般的に使われるTimes NewRomanやArialを使用。これによりコンピューターやスマートフォンにデータをダウンロードするために必要なエネルギーが少なくて済み、CO2排出量の削減を実現している。

環境負荷が2番目に大きいと言われるファッション業界では、デンマークのウェアブランド「Organic Basics」が、環境負荷を抑えつつデザイン性も妥協しないウェブサイトを公開している。

Organic Basicsのウェブサイト。

私たちにできること

上記にあげたウェブサイトの具体的な改善方法についてより詳しく知りたい人は、2023年10月に非営利団体のWorld Wide Web Consortiumによって公開された「ウェブ・サステナビリティ・ガイドライン(WSGs)」や、サステナブルウェブデザインを牽引するイギリスの制作会社Wholegrain Digitalのブログなどを参照してみると良いだろう。同社の共同設立者トム・グリーンウッドによって2021年に公開されたEブック「Sustainable Web Design」では、ウェブ製品が環境に与える影響から、デザインや開発でできる実践的なアクション、さらにはウェブプロジェクトでサステナビリティを売り込む方法、気候変動がウェブサービス自体に与える影響まで、重要な概念を解説している。

また、まずは自身が運営するウェブサイトの環境負荷を知りたいという人は、Website Carbon calculatorや、Ecograderといったツールを使ってみることをおすすめする。どちらも無料で使うことができ、該当のウェブサイトが1PV(ページビュー)につき何グラムのCO2を排出しているのか、改善のためにはどんなアクションをとる必要があるのかなどを簡単に知ることができる。

さらに、以下のサステナブルなウェブの構築に必要な以下の6つのキーワードを専門家たちがマニフェストとしてまとめた「Sustainable Web Manifesto」は、上記の環境的な側面に加え、社会的な面も含めてこれからのウェブサイトがどうあるべきかをわかりやすく提示している。今後のウェブサイト構築の指針にしてみても良いだろう。

1. Clean(再生可能エネルギーを使う)
2. Efficient(最小限のエネルギーと資源を使う)
3. Open(アクセスしやすく、開かれた情報交換ができ、使用者が自分の情報を管理できる)
4. Honest(デザインや内容において、使用者を誤解させたり搾取したりしない)
5. Regenerative(地球と人々のためになる経済をサポートする)
6. Resilient(人々が最も必要とする時と場所で機能する)

まとめ

前述のウェブ制作会社Wholegrain Digitalのヴィニータ・グリーンウッド氏は、「2Gしか使えない環境に住んでいる、災害で最低限の電力消費しかできない、など高速のネット環境が整っていない人は、通信負荷の高いサイトを閲覧できない可能性があります。しかし、そういった人こそ、情報を必要としているかもしれません。必要な情報を必要な人に届けるためにも、Webサイトのデザインを工夫する意義はあるのです」と語る。

このように、サステナブルウェブデザインに取り組むことは、環境負荷を下げると同時に、より多くの人にとってアクセシビリティの高い、包括的なインターネット環境を構築することにもつながるのだ。

生活のあらゆる場面でインターネットが欠かせなくなり、これからますますデータ消費量が増加すると考えられている今。だからこそ新しい技術・サービスの開発も含め、サイトを掲載する側、ユーザー、地球環境全てにとって持続可能なウェブデザインのあり方を模索していくことが大切だろう。

【参照サイト】Sustainable Web Design
【参照サイト】Internet Health Report 2018
【参照サイト】サステナブルWebデザイン ソリューション|ミツエー
【参照サイト】Mightybytes
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