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代替たんぱく質(alternative protein)とは・意味

代替タンパク質

代替たんぱく質とは?

「代替たんぱく質(alternative protein)」とは、家畜由来の食品に代わるたんぱく源のこと。代替たんぱく質には、大豆など植物由来、細胞培養、発酵由来、昆虫食の主に4つの種類がある。

代替たんぱく質の世界市場におけるシェアは足元で1%程度にすぎないが、市場規模は2025年には179億ドル、2040年には1.1兆ドルに達し、食肉全体の約60%が代替たんぱく質に置き換わるとの予測もある。

    代替たんぱく質の種類

  • 植物由来
    大豆からつくる代替肉、大麦からつくる代替ミルクなど
  • 細胞培養
    動物から採取した細胞を培地で生育し、培養・成形した牛肉・魚肉など
  • 発酵由来
    微生物や菌糸の働きを用いてつくった食品・飲料
  • 昆虫食
    コオロギ、イナゴなどの昆虫

代替たんぱく質が注目される理由

代替たんぱく質が注目されている主な理由は次の3つだ。

第一に、世界人口と食肉需要の増加。2050年に世界の人口が100億人に達すればたんぱく質の需要は現在の2倍になると言われているが、供給のめどはたっていない。

次に環境問題。家畜の放牧地や飼料となる作物の耕作地への転用による森林減少(deforestration)に歯止めを掛け、牛のげっぷなど家畜生産に由来する温室効果ガスを削減することが急務となっている。

最後は家畜への抗生物質の過剰投与だ。世界で使用されている抗生物質の実に66%は主に豚や鳥などの家畜向けである。WHOは抗生物質の過剰投与が耐性ウイルスの出現やヒトへの感染の可能性を高めると警鐘を鳴らしている。

代替たんぱく質市場を牽引するフードテック企業

こうした代替たんぱく質市場を牽引しているのは、フードテックと呼ばれるベンチャー企業で、フードテック企業の成長を支えているのがベンチャーキャピタルだ。2013年頃から、まずは植物由来の代替肉に関連する企業への投資が増加し、その後、2019年頃から細胞培養や発酵による代替たんぱく質関連企業への投資も急速に増加している。

代替たんぱく質関連企業へのベンチャーキャピタル投資の推移

図表:代替たんぱく質関連企業へのベンチャーキャピタル投資の推移(単位:百万ドル 出典:世界経済フォーラム)

こうしたフードテック企業を国ぐるみで支援しているのがシンガポールだ。アジアの小さな都市国家であるシンガポールは、食料の約9割を輸入に依存しており、食料安全保障の観点から同国政府は2019年3月、栄養ベースでの食料自給率を2030年までに30%へ引き上げる目標「30×30」を策定した。その具体的なアクションとして、植物由来の代替肉や培養肉に関する規制緩和、関連企業への投資、研究・製造拠点の集積を進めている。

シンガポールにおける代替タンパク質に関する食品製造施設の設置の主な動き

シンガポールにおける代替タンパク質に関する食品製造施設の設置の主な動き (出典)各種報道発表、シンガポール地元紙「ビジネスタイムズ」、食品情報サイト「Food Navigator Asia」を基にJETRO作成

シンガポール、2030年までに食料自給率3倍へ

技術革新と畜産業の適切なコスト負担が代替たんぱく質普及のカギ

2013年に世界で初めてつくられた「培養肉バーガー」の製造コストは1個あたり3,000万円超であった。足元では数千円~数万円まで下がってきているが、それでも割高であることに変わりはない。植物由来の代替肉はヴィーガンベジタリアンを中心に急成長を遂げたが、さらなる成長には価格競争力が不可欠だ。発酵由来や昆虫食も同様の状況であり、普及には技術革新による製造コストの大幅削減が急務だ。

もう一つの普及のカギは、畜産業への温室効果ガス排出コストの適切な賦課である。世界有数の酪農大国であるニュージーランドが2025年までに家畜の「げっぷ税」を導入すると発表した。こうした動きが各国・地域に広がれば、代替たんぱく質の相対的な割高感は多少なりとも解消され、普及を後押しするであろう。

ニュージーランド、牛の「げっぷ税」を導入へ

足元では、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻や世界各地で頻発する異常気象などにより、世界はいまアグフレーション(食料品のインフレーション)に直面している。食料危機は遠い将来のリスクではなく、まさに「目の前にある危機」である。代替たんぱく質をめぐる今後の動向に注目だ。

【関連記事】アグフレーション(agflation)とは
【参照サイト】FAIRR Building ESG into Food Tech 
【参照サイト】Techno Procucer 【図説】代替タンパク質の最前線 ~市場拡大を牽引する企業・スタートアップと、代替肉・培養肉のイノベーション事例を紹介
【参照サイト】効率的で、持続可能な食料システムの構築の鍵となる「発酵」(世界経済フォーラム)
【参照サイト】植物性代替肉や培養肉企業の集積加速 シンガポール、代替タンパク質の一大拠点へ(前編)(JETRO)
【参照サイト】日経クロステック 製造業の新たな市場になるか、「培養肉」10の疑問




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