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カーボンテックとは・意味

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カーボンテックとは

カーボンテックとは、余分なCO2を回収し、有用で市場性のある素材や製品に変える技術のこと。「Carbon-to-value(カーボン・トゥ・バリュー)」とも言われる。

ロイター通信の調べによると、カーボンテック関連の企業は、2021年に8億ドル以上を調達し、その投資額は前年の3倍以上となっている。この調査では、CO2を回収する「Carbon Capture(カーボンキャプチャ)」とCO2を有効利用をする「Carbon Utilization(カーボンユーティライゼーション)」への過去10年間の投資額を分析。中でも後者の「Carbon Utilization」への投資が著しい伸びを見せている。

また、環境NGOのCarbon180によると、その市場規模は6兆ドルとも試算されている。パリ協定で掲げられた気候変動に対する目標を達成するためにも、今後ますます注目される分野である。

なぜカーボンテックなのか

これまで大気中からCO2を抽出するには膨大な費用がかかり、企業の負担にもなっていた。しかし今、カーボンテックによって生み出される技術は、CO2を削減するだけでなく、企業にとって利益や成長につながる大きな可能性を秘めている。

たとえば、サーキュラー・カーボン・ネットワーク(CCN)が発表したマーケット全体のレポートによると、過去10年間で積極的に炭素除去や、カーボンテックに取り組んでいる約330の企業のうち、65%が2010年以降に設立された新しい組織だという。さらに、中でもCCNが注目している107社のうちの約50%はすでに利益を上げていると報告されている。

また、その活用範囲も、食品・飲料をはじめ、建築材や農業・水産業向け技術、合成燃料やプラスチックなどに使用する化学物質の代用品などと幅広く、今後も新たなスタートアップの参入が増えていくことが見込まれている。

カーボンテックに対する世界的な動き

ニューヨーク州

2021年7月に、前州知事のアンドリュー・クオモ氏が、カーボンテックの研究や開発を支援する900万ドルの基金『カーボンテック起業家フェローシップ・プログラム』を立ち上げた。ニューヨーク州は、2050年までに排出量を85%削減するという目標を掲げており、カーボンテックのイノベーション・ハブとなるべく名乗りを上げている。

Carbon X Prize

『Carbon X Prize』は、アメリカのエネルギー会社NRGとカナダの企業間組織Cosiaが出資する、CO2のアップサイクルの技術を競うコンペティション。2021年にイーロン・マスク氏が1億ドルを出資し『XPRIZE Carbon Removal』を開催することで注目された。今後4年間かけて参加団体が競い合うことで、ネガティブエミッション技術の向上を図る。

デジタル企業の参入

デジタル決済企業のStripeは、顧客が収益の一部を炭素除去プロジェクトに転用できる計画を発表。またStripe自体も、炭素隔離コンクリート(CarbonCure)、地中貯留(Charm Industrial)、空気直接回収(Climeworks)、海洋鉱物化(Project Vesta)といった、今後可能性のある4つのプロジェクトに100万ドルを投入している。

一方、多国籍Eコマース企業であるShopifyも、炭素除去やカーボンテックに焦点を当て、気候変動対策に年間500万ドルを投じる「Sustainability Fund」を設立。販売店には、購入者が取引中に選択できるオフセットのオプションを追加できるようにするなど、その動きを加速させている。

カーボンテックに取り組む企業

Aether(アメリカ)

Aetherは、高度な技術で、大気中のCO2からダイヤモンドを生成しているほか、製造工程での節水や低エネルギー消費を実現するなど、世界で最もサステナブルなファインジュエリーとして注目されている。また、天然ダイヤモンドの製造では、労働搾取や水質汚染、森林破壊といった様々な課題が指摘されてきたが、そうした社会問題にも向き合いながら、コンフリクトフリー(紛争のない)な環境づくりにも力を入れている。

CarbiCrete(カナダ)

コンクリートの原料でもあるセメントはその生産時に多くのCO2を排出する。Carbicrete
では、不要な鉄鋼スラグを使用することでセメントを使用せず、さらにコンクリートの硬化にCO2を用いることで、カーボンネガティブなコンクリートを製造している。『Carbon X PRIZE』のトップ10ファイナリストの一社としても名を連ねる。

Made of Air(ドイツ)

Made of Airは、炭素を多く含む農作物や森林廃棄物からバイオプラスチックを製造。この素材は90%が炭素でできており、プラスチック1トンに対して2トンのCO2を吸収する。家具や建材としてさまざまな用途に使用可能なほか、ファッションブランドのH&Mと共にカーボンネガティブなサングラスの限定生産なども行い、その活動を発信している。

Lanza Tech(アメリカ)

Lanza Techは、製鉄所や製油所から出た排ガスからエタノールを生成する発酵技術を開発した。人口増に伴う食糧危機や持続可能性などの観点からも、非可食原料由来のバイオ燃料の開発が求められており、今注目の分野だ。その用途も幅広く、ウォッカやポリエステル糸、自動車や航空燃料など、様々なものへ転換されている。また、Lanza Tech社のバイオジェット燃料は、Virgin Atlanticなどの世界の航空会社で採用され始めている。

まとめ

気候変動対策という分野では、これまで技術を開発するスタートアップの企業などへの商業的な支援は少なく、公的な研究資金や助成金に頼らざるを得なかった。しかし、現在では民間投資家や新興企業などが積極的に参入し、地球の気温上昇を抑えると共に収益も上げることができる可能性が広がっている。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の2018年版報告書によると、気候災害という地球存亡のリスクを回避するためには、今後15年間で炭素収支を大幅に削減する必要がある。これからますます、カーボンテックはこの分野での新たな潮流となっていくだろう。

【参照サイト】Reuters | Made-from-CO2 concrete, lululemons and diamonds spark investor excitement
【参照サイト】Wunderman Thompson | The carbontech boom
【参照サイト】Greenbiz | Carbontech is getting ready for its market moment
【参照サイト】Dezeen | New York State aims to become leading “carbontech” innovation hub
【参照サイト】Storm4 | What Is CarbonTech? A Detailed Overview
【参照サイト】Forbes | The Rise Of CarbonTech – CO2 Finds Market Value




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