Browse By

デジタル製品パスポート(デジタルプロダクトパスポート)とは・意味

サーキュラーエコノミー

デジタル製品パスポート(デジタルプロダクトパスポート)とは?

デジタル製品パスポート(Digital Product Passport:以下、DPP)とは、デジタル技術により、個別の商品に関する原材料調達からリサイクルに至るまで、ライフサイクル全体にアクセスできるデータのことをいう。

現在、製品のライフサイクルに沿った、トレーサビリティの確保が求められている。社会の要請に従いDDPを導入することにより、エネルギー利用・再生材含有率・環境負荷物質(SOC)、修理可能性や耐久性など、製品のサステナビリティ・循環性に関する情報がこのデジタル製品パスポートを通じてサプライチェーン全体に共有される。サーキュラーエコノミー実現の鍵となるとも言われている。

例えば、消費者が廃棄した製品を混合回収し、コンベヤー上でセンサーによって種別や特性を瞬時に識別することも可能。そして、メカニカルリサイクル(※1)による再生ペレット化やケミカルリサイクルによる油化の効率を飛躍的に高めることができる。

※1 メカニカルリサイクル(物理的再生法)とは、マテリアルリサイクルの工程に高温・減圧等の高度処理を導入し、不純物を除去する方法のこと。

DPPが注目されている背景は?

欧州委員会は、2022年3月にEU全域にサーキュラーエコノミーを加速させるための計画「サーキュラーエコノミーアクションプラン(循環型経済行動計画)」の要となる「持続可能な製品イニシアティブ(SPI)」を発表。SPIは、EU市場に投入される製品が持続可能なものになるよう、製品の標準化を進める施策が盛り込まれたものだ。

主に下記5つの施策で構成される。

1. エコデザイン規則案(各業界でのエコデザイン要求事項、デジタル製品パスポートの導入、売れ残り品の廃棄防止、
2. グリーン公共調達必須要件の設定、市場監視の強化、廃棄物抑止と削減など)。「指令」から、加盟国内の政府・企業・個人に適用できるより拘束力の強い「規則」に格上げ。
3. エコデザインおよびエネルギーラベル作業計画 2022-2024
4. サーキュラーファッション戦略
5. 建設資材規制の改正案
6. グリーンウォッシュを禁止するEU消費者法改正案

同規則案により、欧州委は産業界に主に下記を促すとしている。

1. 耐久性・再利用性・アップグレード性・修理可能性の促進
2. 循環性を阻害する製品、環境負荷物質の規制
3. 製品のエネルギー・資源効率化、再生材含有率最低基準の設定
4. 易解体性、易リマニュファクチャリング性、易リサイクル性の促進
5. カーボンフットプリント・環境フットプリントを含むライフサイクル評価、廃棄物抑止・削減

これらSPIで発表された持続可能な製品の標準化に関するパッケージのうち、DPPの導入促進が注目されている。DPP導入により、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーの領域でEUが先行しようとすることにあるといわれている。

DPPの導入例

DPPとしてデータ化された商品の1つに、EUの研究開発支援プログラムであるHorizon2020のBAMB(Building As Material Bank)の建築物がある。

BAMBは、Cradle to Cradle®認証を受けた部品の接合方法を示し、建築物のDPPを作成した。Cradle to Cradle®認証は、生産時水消費量やカーボンフットプリントなど環境負荷を明示させる。そのため、構成部品だけでなく、それを使用し建築物を作っている過程も情報の透明性が確保されるのだ。そして、建築物自体がCradle to Cradle®認証を取得できる。

BAMBの建築物がCradle to Cradle®認証を取得したことは、透明性の非常に高いトレーサビリティを確保したことと同義であるといえる。

DPP導入の課題

DPPの導入は、EUを中心にいくつかの国で進められてはいるが容易ではない。導入に向け、解決すべき課題が大きく3つある。

    1. 情報セキュリティの新システム導入
    2. 情報開示プラットフォームの立ち上げ
    3. コスト面の負荷

DPP作成のため、新たに開示する情報には、それに紐づくさらなる情報が存在する。より多くの機密情報を安全に管理するには、それに見合う新システムを導入しなければいけない。

またシステムで守られた情報を開示する、プラットフォームも必要となる。既存のプラットフォームをベースに、機能を拡張することが現実的だ。

システム導入とプラットフォーム構築のどちらにも必要なのが、それに応じたコストだ。これらのマイナス面をどう克服し、DPPを導入していけるだろうか。

今後の展望

現在DPPに関する情報開示を、法によって定めようと話し合いが進められている。循環型新ビジネスのデジタル基盤構築のため、法遵守の監視を効率化するためだ。

現時点では、蓄電池、電子機器、ICTなど電化製品が優先的な法の適用対象と考えられている。「Sustainable Development Report 2022」でも、日本で目標達成に大きな課題が残るとされていたのが、電子廃棄物の分野だ(※2)

法制化が進み、DPP導入が促進されれば、社会の持続可能性はまた少し高まりそうだ。

※2 Sustainable Development Report 2022
【参考サイト】欧州におけるCEの最新情勢<下>法制化目指すデジタルプロダクトパスポート
【参考サイト】プロダクトパスポート:株式会社日立計画研究所
【参考サイト】EU新循環経済行動計画のポイント その5~持続可能な製品政策枠組み1~
【参考サイト】サーキュラーエコノミーハブ 理解しておきたい10の課題
【参考サイト】MATERIALS PASSPORTS BAMB
【参考サイト】「デジタル製品パスポート」や成形機の電動化が欧州のトレンドに




用語の一覧

あ行
か行
さ行
た行
な行
は行

ま行
や行
ら行
わ行
A
B
C
D
E
F
G
H
I
J
L
M
N
O
P
Q
R
S
T
V
W
X
数字

FacebookTwitter