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Green Climate Fund(緑の気候基金)とは・意味

green climate fund

Green Climate Fundとは?

開発途上国が、温室効果ガスの抑制・削減(緩和)と気候変動による影響に対処(適応)するための活動を支援する国際基金のこと。「GCF」や「緑の気候基金」とも言われる。気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)に基づく資金の調達や運営を委託されている。

政府からの公的支援以外に民間からの投資も対象とし、開発途上国の支援を通じて、気候変動における世界的な目標達成のためのパラダイムシフトを引き起こすことを目指している。

設立の経緯

現在に至るまで、温室効果ガスの多くは、アメリカやヨーロッパなどの先進国によって排出されてきた。そして、それが今気候変動を加速させる要因となっている。そのため、先進国はその責任を負うべきであり、気候緩和のためのコストの大部分を負担する義務がある、という議論がこれまで繰り返されてきた。

そうしたなか、2009年にデンマークのコペンハーゲンで開催されたUNFCCC締約国会議(COP15)において、GCFの概略のコンセプトが提言された。

その後、翌2010年にメキシコ・カンクンで開催されたCOP16にて設立が決定。さらに、2011年開催の南アフリカ共和国・ダーバンにおけるCOP17で運営規程が採択され、正式に委託期間として指定された。

2015年5月には、日本が15億米ドルの拠出を確定したことにより、支援に対する資金配分の目処が立ち、実際の運用と支援活動が開始された。

GCFの組織と運営

GCFは理事会と事務局という組織で成り立っており、本部は韓国の仁川市松島(ソンド)に置かれている。

  • 理事会(Board):運営方針を決定する最高意思決定機関。テーマ別資金枠を利用して、途上国締約国のプロジェクトなどの活動を支援し、COPに対する説明責任を持つ。先進国と開発途上国から半数ずつ選出される24名の理事と24名の理事代理によって構成され、途上国からの理事には小島嶼開発途上国(SIDS)及び後発開発途上国(LDCs)の代表も含まれる。理事の任期は3年で、日本からは理事及び理事代理に各1名ずつ選出されている。
  • 事務局(Secretariat):本部のある松島にて、完全に独立した組織としてGCFの通常業務を遂行する。理事会に対してサービスを提供し、理事会に対する説明責任を負う。現在の事務局長は2019年に就任したYannick Glemarec(ヤニック・グレマレック)氏で、その下に200人を超える本部スタッフが従事している。

    資金の動員及び供与について

    2015年〜2018年の初期拠出では開発途上国を含む43か国が103億米ドル、2020〜2023年の第1増資では、29か国が100億米ドルの拠出を表明している。日本の拠出は最大で約30億米ドルで、累積拠出順位は英国に次いで第2位。

    資金供与に関しては、緩和及び適応への支援に50:50の割合で配分されることを目指している。また適応への支援の半分は、小島嶼開発途上国(SIDS)、後発開発途上国(LDC)及びアフリカなどの気候変動による影響に特に脆弱な国への配分とすることを目標に定めている。

    支援の申請と承認のプロセス

    GCFの資金への申請は、理事会が承認した機関(Accredited Entities:AE)を通じて行う。また申請時には、事業実施国のNDA(国家指定機関)または、フォーカルポイントから承認を得た同意書(No objection letter)の提出も求められる。プロポーザルは事務局、独立技術審査パネル(independent Technical Advisory Panel:iTAP)、理事会による審査を経て承認が決定する。審査を通過した案件にはGCFの資金がAEを通じて提供され、AEの管理の元プロジェクトが実施される。

    これまでに114の機関がAEとして承認されており、代表的なものは世界銀行(WB)、アジア開発銀行(ADB)、国連開発計画(UNDP)、国連環境計画(UNEP)などがある。日本では国際協力機構(JICA)、三菱UFJ銀行(MUFG)、三井住友銀行(SMBC)が承認されている。

    GCFによる資金支援を決定する際に考慮される審査基準、支援対象の優先分野、支援手法と規模は以下のように定められている。

    審査基準

    ①インパクト(Impact Potential)
    対象となるプロジェクトまたはプログラムが、GCFの目的や成果分野の達成に貢献する可能性があるか。

    ②パラダイムシフト(Paradigm shift Potential)
    GCFの支援により、ひとつのプロジェクトやプログラムへの投資を超えてどの程度のインパクトをもたらすか。

    ③持続可能な開発の可能性(Sustainable Development Potential)
    環境、社会保障、経済的コベネフィットやジェンダー配慮を含む開発効果など、より広い範囲での利益や優先事項があるか。

    ④被支援国のニーズ(Recipients needs)
    プロジェクトは受益国・受益者に資金ニーズを提供しているか。代替となる資金源が存在しないか。

    ⑤カントリーオーナーシップ(Country Ownership)
    プロジェクトやプログラムに対し、受益国にはオーナーシップと実施能力があるか。
    また、その国の既存の政策や気候変動戦略等と合致しているか。

    ⑥ 効率性と効果(Efficiency & Effectiveness)
    対象となるプログラムやプロジェクトの経済面や資金面で健全か。また費用対効果が良く、民間の追加資金を引き出せる可能性があるか。

    支援対象優先分野

  • 緩和(mitigation)
  • 交通・運輸、ビル・都市・産業・家電、発電とアクセス、森林・土地利用

  • 適応(​​adaptation)
  • 健康維持・食糧・水の安全保障、住民の生活とコミュニティ、インフラと建築環境、エコシステム

    支援手法と規模

    GCFのプロジェクト支援は、「贈与(grant)」「融資(loan)」「保証(guarantee)」「出資(equity)」のいずれかの金融手法によって提供され、資金の規模は下記の4種に分けられる。

  • 極小規模(micro):総事業費1,000万米ドル以下
  • 小規模(small):総事業費1,000万~5,000万米ドル
  • 中規模(medium):総事業費5,000万~2.5億米ドル
  • 大規模(large):総事業費2.5億米ドル以上

    GCFの実績と成果

    2015年からこれまでに200を超えるプロジェクトがGCFの理事会によって採択され実施されている。これにより、20億トン以上のCO2の排出量削減につながり、7億人近い人々がその恩恵を受けているとされる。

    実施されているプロジェクトの傾向としては、支援額は緩和分野の方が若干多く、贈与と融資の割合が大きい。また支援の規模は中規模、小規模を合わせて約70%となっている。

    日本の認証機関によるもので採択された事例としては、三菱UFG銀行(MUFG)による「チリにおける太陽光・揚水水力発電(2019年7月)」、「サブサハラ・南米7か国における持続可能な民間森林事業支援(2020年3月)」、国際協力機構(JICA)の「東ティモールの森林地帯コミュニティ支援(2021年3月)」、「モルディブの気候変動に強じんな島づくり支援(2021年7月)」などがある。

    GCFの今後の課題

    上記のように、GCFの活動によって一定の効果は現れているものの、まだまだ課題も残っている。これまでに採択された案件のうち、8割近くは先進国の認証機関により提出されたものだ。こうした場合、資金供給側が主導する形となり、実際にプログラムを実施する開発途上国のニーズに合致しないものが採択されることや、需要に合った資金配分がされないなどの歪みを生み出している。

    また、SDGsではターゲット13の中で、2020年までにあらゆる供給源から年間1,000億ドルを共同動員し、GCFを本格始動させるという目標を掲げている。しかし、初期拠出の段階では目標のわずか2%程度の達成、第1増資においてもまだまだ目標達成には程遠い。

    世界の平均気温は産業革命以前より1.1度上昇していると推定されている。この傾向に基づくと、今世紀の後半の早い段階で上昇値が2度を超えてしまう可能性があると予想されている。目標値である1.5度の上昇に抑えるためにも、GCFへの投資の影響は大きいとされ、本格的な稼働が喫緊の課題となっている。

    【参照サイト】Green Climate Fund
    【参照サイト】外務省 | 緑の気候基金
    【参照サイト】環境省 | 緑の気候基金(Green Climate Fund:GCF)について | 地球環境・国際環境協力
    【参照サイト】環境省 | 緑の気候基金(GCF)の概要と採択案件・活用パターン
    【参照サイト】公益財団法人地球環境センター | 緑の気候基金 (Green Climate Fund: GCF) について
    【参照サイト】気候変動適応情報プラットフォーム | 緑の気候基金(GCF)の近年の動向に関する調査




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