Browse By

パラレルキャリアとは・意味

パラレルキャリア

パラレルキャリアとは?

本業と並行して、複数の仕事や活動を持つことで、第二のキャリアを築くこと。経営学者のピーター・ドラッカーが1990年に発表した自身の著書『明日を支配するもの』の中で提唱した。ひとつの仕事や企業だけに捉われない、これからの社会での生き方や考え方として注目されている。

副業との違い

一般的に副業は副収入を得ることを目的とした、サブ的な仕事として位置付けられている。一方で、パラレルキャリアは趣味やボランティア、プロボノ活動など非営利なものまで含み、本業では得られない知識、経験、スキルなどを得ることで、自分の市場価値を高め人生を豊かにしていくことを目的としている。「副業」に対し「複業」と呼ばれることもある。

パラレルキャリアが注目されている背景

人生100年時代と言われる長寿化や少子化問題、また終身雇用や年功賃金といった制度の終了など企業の雇用形態の変化などが進む中、働き方改革の一環として、2018年に政府が副業・兼業を解禁する方向性を示した。それまで副業が禁止されていた公務員の人たちも、2019年3月より認められるようになった。コロナ禍においてリモートワークが広がったことで、さらにその動きは加速している。時間の余裕などが生まれ、自身のキャリアを見つめ直したり、オンライン環境で本業以外の仕事や活動に取り組んだりする人が増えている。

実際に、エン・ジャパン株式会社が2022年に行った調査(※1)では、約7割の人が「本業以外にも第2の活動・仕事をしたい」と回答。また現在は本業以外に取り組んでいることがないと答えた人のうち9割近くの人が「パラレルキャリア/副業に興味を持っている」という結果になっている。

パラレルキャリアがもたらす効果と課題

2017年に経済産業省と中小企業庁が兼業・副業などパラレルキャリアに関する提言(※2)をまとめた中で、企業側(使用者)と従業員(労働者)側のメリット・デメリットとして下記の内容を挙げている。

企業(使用者)にとって

メリット (効果・期待)

  • 人材育成
  • 優秀な人材の獲得・流出防止
  • 新たな知識・顧客・ 経営資源の獲得

デメリット(課題・不安)

  • 本業への支障
  • 人材流出等
  • 従業員の健康配慮
  • 情報漏等、様々なリスク管理
従業員(労働者)にとって

メリット (効果・期待)

  • 所得増加
  • 自身の能力・ キャリア選択肢の拡大
  • 自己実現の追求・幸福感の向上
  • 創業に向けた準備期間の確保

デメリット (課題・不安)

  • 就業時間の増加による 本業への支障等
  • 本業・副業間での タスク管理の困難さ

また、パラレルキャリアに興味がありながらも、実際に行っている人は3-4割程度に留まっている。企業側は就業規則の見直しや、ガイドラインの作成など、従業員側は自己管理能力や倫理観を高めることなども必要だ。こうした双方にとって活動のしやすい環境を整えていくことも今後の課題だろう。

パラレルキャリアを始めるには

パラレルキャリアを始めるにあたって、何か特別な準備は必要ない。自分のやりたいことで小さくスタートできるのもパラレルキャリアの良いところである。ただ、始めた後にトラブルになったり、継続が困難になったりしないように、下記のような点に留意しておくことも大切だ。

  • 目的を明確にする
  • キャリアの棚卸しをして自身の強みを把握する
  • 作業量を把握し、時間的・精神的に対応可能か検討する
  • 本業、パラレルキャリアの就業先双方で就業規則や禁止事項等のルールなど確認する
  • 一定の収入が見込まれる場合は、確定申告など必要な手続きについて調べておく

まとめ

パラレルキャリアという考え方を提唱したピーター・ドラッカーは、彼自身も経済紙記者、アナリスト、大学教授、作家、コンサルタントなど様々なキャリアを持っていた。また、95歳で亡くなるまで、時々好奇心の赴くままに仕事とは全く関係のないテーマ(日本の華道についてなど)の研究を行っていたという。

彼が発表した45冊の著書のうち、その3分の2は65歳を越えて執筆したものだと言われているが、ドラッカーは自分の「強み」を生かし、自己研鑽を続けることで、人は成長し続け、豊かな人生につながるということを自ら実践していたのである。不透明でなかなか先行きの見えにくい時代ではあるが、長い人生を楽しむために、自分が本当にやりたかったことや得意なことは何だろうと、改めて考えてみる機会を持ってみるのはどうだろうか?

※1 エン・ジャパン(en Japan)| ―『ミドルの転職』ユーザーアンケート―
※2 中小企業庁/経済産業省 | 兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する調査事業 研究会提言 ~ パラレルキャリア・ジャパンを目指して ~

【参照サイト】AMA | Living in More Than One World: Peter Drucker on Work/Life
【参照サイト】Psychology Today United Kingdom | Peter Drucker on Living a Multidimensional Life
【参照サイト】日経ビジネス電子版 | ドラッカーの著作は65歳以降が大半、人は死ぬまで進化できる




用語の一覧

あ行
か行
さ行
た行
な行
は行

ま行
や行
ら行
わ行
A
B
C
D
E
F
G
H
I
J
L
M
N
O
P
Q
R
S
T
V
W
X
数字

FacebookTwitter