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ゼロエミッションとは・意味

ゼロエミッションとは?

ゼロエミッションとは、温室効果ガス(GHG)を含むすべての排出物を実質的にゼロにすることを目指す概念である。1994年に国連大学が廃棄物ゼロの産業システムとして提唱したのが始まりだが、近年では気候変動対策の中心概念として再定義されている。カーボンニュートラルやネットゼロとも重なり合い、単に廃棄物を削減するという発想から、社会・経済全体の構造転換を含む包括的なアプローチへと発展している。

地球環境への負荷が限界に達しつつある中で、もはや従来の「排出ありき」の産業モデルは持続不可能とされる。過剰な資源利用と大量廃棄から脱却し、天然資源の再生と循環を前提とした経済と社会の設計が求められている。気候変動、生物多様性の喪失、資源の枯渇といった複合的な環境危機に対応するためには、生産から消費、廃棄に至る全体のシステムを見直す必要がある。

ゼロエミッションの実現には、製造過程やサプライチェーンにおける廃棄物や副産物の削減・再資源化に加えて、再生可能エネルギーの導入、省エネ技術の普及、カーボンプライシングや炭素回収・利用(CCU)といった技術・制度面での対応が不可欠である。社会全体で排出量を正確に測定・管理し、環境負荷を可視化する仕組みづくりも進んでいる。

ゼロエミッションの歴史

日本政府は1997年度に、ゼロエミッションを地域社会形成のための基本構想として位置づけ、資源循環を通じて産業振興・地域活性化を進める「エコタウン事業」を創設、地域の承認を開始した。各自治体が作成したプランが環境省と経済産業省によって承認された場合、実施される事業について支援を受けられるという仕組みだ。

エコタウン事業実施の背景には、当時の日本では経済成長に伴い廃棄物問題が拡大し、最終処分量の低減や適正処理の推進が必要であったことや、資源を相互利用する技術・設備の導入が素材産業などの事業を拡大し、低迷していた地域経済の活性化に寄与すると考えられたことなどがあるとされる。

1997年度から2005年度までに、以下の26地域がエコタウンとして承認された。これらの地域では、自治体と企業と住民が一体となってエコタウン事業の取り組みを行っている。

北九州市、岐阜県、長野県飯田市、川崎市、福岡県大牟田市、札幌市、千葉県・千葉市、秋田県、宮城県鶯沢町(現栗原市)、北海道、広島県、高知県高知市、熊本県水俣市、山口県、香川県直島町、富山県富山市、青森県、兵庫県、東京都、岡山県、岩手県釜石市、愛知県、三重県鈴鹿市、大阪府、三重県四日市市、愛媛県

その後、エコタウン構想は2010年代以降の「地域循環共生圏」構想や、2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)と接続され、概念的・政策的な展開が図られている。とくに北九州市や富山市などは、エコタウンの取り組みを土台として、2018年以降に「SDGs未来都市」に選定され、ゼロエミッションを含む包括的な持続可能性モデルの構築を進めている。

また、2023年に施行された「GX推進法」により、地方自治体レベルでも脱炭素に向けた投資・事業の促進が進められており、エコタウン的取り組みは、より広範なグリーントランスフォーメーションの一部として再定義されつつある

ゼロエミッションの事例

ゼロエミッションという言葉は現在、CO2の排出実質ゼロの意味でも多く使用されており、世界各地で以下をはじめとするゼロエミッション実現への取り組みが多く進められている。

ゼロエミッション東京

東京都は2019年5月、2050年にCO2排出実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション東京」を実現することを宣言。また、2030年までに温室効果ガス排出量を50%削減(2000年比)する「カーボンハーフ」を表明し、実現に向けて、2019年のゼロエミッション東京戦略をアップデートしながら、取組を加速させている。

近年では、都内の新築建物に対して太陽光発電設備の設置を義務化する条例が2025年4月に施行され、家庭・事業者レベルでの再エネ導入が加速している。都庁はEV(ゼロエミッションビークル)の導入拡大や、プラスチック資源循環方針に基づく削減行動などを含め、都市全体での環境負荷低減を推進している。

その他の国内外の動向

日本政府は2020年に「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、経済産業省を中心にゼロエミッション実現のための「GX(グリーントランスフォーメーション)戦略」を展開している。2023年の「GX推進法」では、企業の脱炭素投資を後押しする枠組みや、カーボンプライシングの段階的導入が制度化された。

また、経済産業省は、国立研究開発法人NEDOや経団連と連携して、脱炭素化に挑戦する企業を支援する「ゼロエミ・チャレンジ」プロジェクトを継続しており、革新的な技術の社会実装を支援している。

海外では、カリフォルニア州が2035年までに州内で販売される新車をすべてゼロエミッション車にする方針を維持しており、EUでも同様に自動車部門の電動化が加速している。グローバル企業や自治体による「ネットゼロ宣言」も急増しており、ゼロエミッションは世界的な企業・政策戦略の軸となっている。

【参照サイト】Governor Newsom Announces California Will Phase Out Gasoline-Powered Cars & Drastically Reduce Demand for Fossil Fuel in California’s Fight Against Climate Change
【参照サイト】東京都環境局 ゼロエミッション東京
【参照サイト】循環型社会の構築を目指して
【参照サイト】エコタウン関連
【参照サイト】エコタウンの歩みと発展
【参照サイト】ゼロエミッション東京戦略の策定~気候危機に立ち向かう行動宣言~
【参照サイト】脱炭素社会の実現をイノベーションで切り拓く企業の取組を応援します




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