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ステークホルダー・エンゲージメントとは・意味

ステークホルダーエンゲージメント

ステークホルダー・エンゲージメントとは?

ステークホルダー・エンゲージメントとは、企業が株主や従業員、顧客、地域社会など、自社の活動に関わり影響を受けるあらゆる主体(ステークホルダー)との対話を通じて、その意見や期待を経営や意思決定に反映させていくプロセスのこと。言い換えれば、企業に関わるあらゆる主体が持つ期待や関心を理解するための対話だ。

なぜ今、注目されているのか

2020年のダボス会議では「ステークホルダー資本主義」が主要テーマとなった。これは、株主利益の最大化を重視する「株主資本主義」から一歩進み、すべてのステークホルダーの利益に配慮することを企業の責任とする考え方である。加えて、近年では地球環境そのものをステークホルダーと捉え、企業活動が生態系に与える影響まで考慮する「マルチスピーシーズ」の視点も注目されている。

ステークホルダーエンゲージメントの方法例

最も一般的な手法は「ステークホルダー・ダイアログ」である。これは、企業がステークホルダーと直接対話する場であり、説明会やアンケート、交流会なども含まれる。これらの手法を通じて企業は、課題の把握と改善に取り組む。

各ステークホルダーへの具体的な取り組み

ステークホルダーエンゲージメントの具体例には、次のようなものがある。

  • 顧客:相談窓口やウェブサイト等でサービス情報の提供、満足度調査、セミナー開催
  • 地域社会:地域貢献活動、事業所の一般公開、環境監視
  • サプライヤー:説明会、アンケート、情報交換、ガイドラインの策定
  • 従業員:社内報、意識調査、社内通報制度、労働組合との対話
  • 株主:IR説明会、統合報告書の発行、ウェブサイトでの情報提供、見学会の実施
  • 市民団体:意見交換、交流会の実施
  • 地球環境:関連NPO・NGOとの連携・対話、森林ボランティア、環境負荷の定量評価と情報開示

ステークホルダー・エンゲージメントの原則

ステークホルダー・エンゲージメントに関する原則を3つにまとめた。

信頼を築く継続的な対話

ステークホルダーとの信頼関係を築くことで、不確実性の高いリスクを抑え、問題解決と意思決定をスピードアップできる。早期から継続的に対話を重ね、相手の立場や価値観、行動の背景にある要因を理解することや双方向的なやりとりが欠かせない。

柔軟性のある計画と実行

エンゲージメントは計画性と柔軟性の両立が重要だ。目的や対象を明確にしながらも、変化する状況に応じて柔軟に対応する力が求められる。また、エンゲージメントは個人の業務ではなく、組織全体の責任として取り組むべきプロセスである。

多様性の調整

ステークホルダーは多様であり、期待や価値観も異なる。その中で落としどころを探り、共通のビジョンを描くには、丁寧な合意形成が必要だ。また、三者以上のステークホルダーが合意形成のプロセスに参加することをマルチステークホルダー・プロセスという。

ステークホルダー・エンゲージメントの事例

日本にも、自社のステークホルダー・エンゲージメントを表明している企業が多くある。以下はその一例だ。

ダイキン

空調、建築、エネルギーに関わる有識者と「将来の空調のあり方」について意見交換する場「空調懇話会」を1995年から発足。欧米、アジア、中東、アフリカ等にもその輪を広げ、空調を起点としたカーボンニュートラル化、環境技術を生かした商品開発に役立てている。

LIXIL

毎年10月に実施される「LIXILコミュニティデー」は、世界各国の役員と従業員が、「グローバルな衛生課題の解決」「水の保全と環境保護」「多様性の尊重」といった3つの優先取り組み分野に関する社会貢献活動を勤務時間内に行う取り組みだ。従業員が各チームの活動の企画から実行までを担うこの取り組みは、従業員エンゲージメントの向上やインパクト戦略に対する理解促進につながっている。

ユーグレナ

2019年より18歳以下のCFO(Chief Future Officer:最高未来責任者)を設置してきたが、さらに未来世代との共創を加速するため、2024年より未来を担う将来世代を中心とした「未来アドバイザリーボード」を設置。経営層や実務担当者層との意見交換を実施する。

地球環境をステークホルダーに入れる動き

また、多くの企業が自然や地球環境をステークホルダーに組み込み、NPOなどと連携する動きが広まってきた。下記はその例である。

  • セブンイレブン、積水化学、ANAなど:ステークホルダーに「地球環境」を入れ、サイト上に掲載
  • パタゴニア:創業者であるイヴォン・シュイナード一族が保有する株式をすべて信託とNPO団体に譲渡。株主を「地球」として、配当金が環境保護活動に充てられる。
  • ソウワ・ディライト、BIOTA:微生物、ロバやヤギ、馬などの企業における人類以外のステークホルダーの採用

まとめ

企業活動は、人・社会・環境に大きな影響を及ぼす。その影響を可視化し、透明性を保ち、持続可能な未来を築くためには、ステークホルダーとの誠実な対話が欠かせない。

一方で、形骸化された対話はウォッシングと批判されるリスクがある。単なるCSR活動ではなく、企業の中核的な経営戦略として、ステークホルダー・エンゲージメントを見なす必要がある。

【関連記事】取締役を「自然」にする会社と、株主を「地球」にするパタゴニア。二つの事例から考える、企業のあり方
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【参照サイト】環境省
【参照サイト】Association for Project Management




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