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脱炭素社会とは・意味

男性と風力発電

脱炭素社会とは?

脱炭素社会とは、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出量が実質ゼロとなった社会のこと。主にCO2の排出削減を目指し、取り組みが行われている。

“実質ゼロ”とは、温室効果ガスの排出量から森林保全活動や植林などによる「吸収量」を差し引いて、排出量をゼロにする「カーボンニュートラル」を指している。

世界の平均気温は1850〜1900年の産業革命以前からすでに約1℃上昇しているといい、地球温暖化による気候危機や資源エネルギー問題が深刻化している。こうした環境課題の解決に向け、世界各国が脱炭素社会の実現を目標に掲げている。

日本政府は2020年10月に、2050年までにカーボンニュートラル・脱炭素社会の実現を目指すことを宣言した。日本国内では現在、年間12億トンを超える温室効果ガスが排出されており、環境省はこれを2050年までに実質ゼロとすることを目標に様々な対策を行っている。

パリ協定と脱炭素社会

脱炭素社会は2015年のパリ協定以来、実現に向けた取り組みが加速している。

2020年以降の気候変動問題に対する国際的な枠組みを定めたパリ協定では、大きく下記の取り決めが行われた。

  • 世界の平均気温の上昇を産業革命前から1.5〜2℃未満に抑える。
  • カーボンニュートラルを目指し、21世紀後半には世界の温室効果ガスの排出量と吸収量のバランスをとる。

この目標を受け日本では、2030年までに温室効果ガスの排出を2013年度比で26%削減という中期目標を定め対策を行なっている。

同様に米国は2025年までに2005年比で26〜28%、EUは2030年までに1990年比で40%の温室効果ガス削減を目指している。それぞれ基準年度や指標は異なるものの、日本の掲げている目標は世界各国と比較しても高い数値となっている。

脱炭素社会実現に向けた日本の課題

脱炭素社会を実現するにあたり、日本では温室効果ガス排出量が多い以下の3分野が課題となっている。

エネルギー産業

日本のエネルギー産業は石炭、石油、液化天然ガス(LNG)といったCO2排出量の多い化石燃料に大きく依存している。資源エネルギー庁が発行した「日本のエネルギー2020」によると、2018年の化石燃料への依存度は85.5%を占めている。

運輸業

運輸業は飛行機や自動車を使用するためCO2の排出量が多く、日本のCO2排出量の約18%を占めている。運輸業の脱炭素化に向けては、電気自動車の導入や燃費改善、物流の効率化などが進められているが、欧米に比べると対策が遅れている。

鉄鋼業

日本の一大産業である鉄鋼業は製造にあたり大量のエネルギーを消費するほか、鉄鉱石を鉄に還元する過程で石炭を消費し、CO2を排出する。製造工程上、CO2排出は避けられないのが現状だが、石炭の代わりに水素を使用して排出量を抑える研究などが進んでいる。

脱炭素社会実現に向けた日本の取り組み

日本では脱炭素社会の実現に向け、政府、自治体、企業などが様々な対策を行っている。その一例が、以下のような取り組みだ。

ゼロカーボンシティに向けた取り組み

日本政府は、脱炭素社会実現への取り組みは地域課題の解決や地域創生にもつながるとしており、地域の脱炭素対策についてまとめた「地域脱炭素ロードマップ」を作成した。

これにあわせ推進しているのが、「ゼロカーボンシティ」の取り組みだ。ゼロカーボンシティとは、2050年までにCO2排出量の実質ゼロを表明した地方公共団体のことをいう。

ゼロカーボンシティを掲げた自治体は、脱炭素社会実現に向け、温室効果ガス排出量の把握や脱炭素化に向けた長期目標の設定、再生可能エネルギー普及のためのPR活動などを行う。

2022年5月31日時点で、東京都、京都市、横浜市をはじめとする42都道府県、415市、20特別区、189町、36村がゼロカーボンシティを表明している。政府はゼロカーボンシティを推進する取り組みとして、情報基盤整備、計画等の策定支援、設備導入などを一貫して支援している。

エネルギーミックス

化石燃料に大きく依存した現在のエネルギー供給を見直し、複数の発電方法を組み合わせて電力供給を行う「エネルギーミックス」の対策も進んでいる。

これは、火力発電の持つ安定性に再生可能エネルギーが持つクリーン性など、各発電方法の特徴をうまく組み合わせて安定的な電力供給を行いつつ、CO2排出削減を目指すものだ。原子力発電を含めた再生可能エネルギーの割合を現在の14.5%程から44%程度にまで引き上げることを目標としている。

COOL CHOICE(クールチョイス)

一般消費者が脱炭素社会の実現につながる賢い選択を取れるよう促す取り組みで、省エネ電化製品やエコカー利用、冷暖房の設定温度を上げる等の選択を促す啓蒙活動を行なっている。また住宅の脱炭素化や電気自動車の導入支援なども実施している。

ESG投資の推進

環境省は脱炭素社会を目指して「金融のグリーン化」を掲げ、従来の投資に環境・社会・ガバナンスの3の観点を加えた投資活動「ESG投資」の普及啓発、地域のESG金融促進などを行っている。

カーボンプライシング

CO2削減対策の一環として、カーボンプライシングの導入も検討されている。

「炭素の価格づけ」を意味するカーボンプライシングは、企業や法人のCO2排出に課税を行う制度である。現在検討されている課税方法としては「炭素税」、「排出枠取引」、「国境調整措置」の3つがある。

脱炭素社会に向けた世界の取り組み

一方、世界各国では脱炭素社会の実現に向けて以下のような取り組みが行われている。

アメリカ

2035年までに発電部門の脱炭素化を目指しており、洋上風力発電の倍増、国土と海洋の保全活動などを行うとしている。

イギリス

グリーン成長戦略として、2024年までに温室効果ガスの削減対策を行っていない石炭火力発電所を廃止するとしている。これにあわせて、再生可能エネルギー関連の事業者を積極的に支援している。また、2040年までにガソリン車とディーゼル車の新車販売を停止すると表明している。

中国

中国は2060年までのカーボンニュートラルを目指しており、補助金などを取り入れることで、新車販売における新エネルギー車の割合を引き上げるとしている。

脱炭素社会実現のためにできること

このように脱炭素社会の実現に向けては、政府が主体となり大規模な取り組みが行われている。しかし、日本の温室効果ガス排出量は、約60%が国民の衣食住や移動などの日常生活に起因するという分析もあり、国民一人ひとりの対策も欠かせない。

そこで環境省は「ゼロカーボンアクション30」という個人向けの脱炭素社会に向けた行動指針を示している。

内容は、電気エネルギーの節約や再生可能エネルギーへの切り替え、住居への太陽光パネル設置、省エネリフォーム、ゼロカーボンドライブ、フードロス対策、サステナブルファッション、ゼロウェイスト、環境活動などだ。

こうした指針を参考に、「2050年までのカーボンニュートラル・脱炭素社会実現」という目標を国民一人ひとりが意識して生活していくことも重要である。

【参照サイト】ゼロカーボンアクション30―日常生活における脱炭素行動と暮らしにおけるメリット|環境省
【参照サイト】脱炭素ポータル「国の取り組み」|環境省
【参照サイト】脱炭素ポータル「カーボンニュートラルとは」|環境省
【参照サイト】日本のエネルギー2020|経済産業省資源エネルギー庁
【参照サイト】地球環境・国際環境協力|環境省




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