トランジションデザイン

トランジションデザインとは？

トランジションデザインとは、「地球規模の巨大な問題に対して社会規模の価値観の移行をデザインする新たなデザインの実践・研究」である。デザイン研究を行うカーネギーメロン大学（CMU）で、テリーアーウィン教授やキャメロン・トンキンワイズ氏らによって2012年に提唱された。日本語では「移行のデザイン」や「変容のデザイン」と言われる。

ここで言う「問題」とは、気候変動、生物多様性の喪失、天然資源の枯渇、格差の拡大などを指し、持続可能な開発目標（SDGs）で焦点が当てられている問題とも一致する。

このデザイン理論では、私たちが生きている現在は「過渡期」であり、持続可能な社会への移行の必要があるという考え方が前提にあり、具体的には知識やアイデア、スキル、文化などを共有や交換できるグローバルコミュニティを構築することが目的である。

トランジションデザインの特徴

従来のデザインが、既存の社会・経済システムや今の私たちにとって「当たり前」とされている価値観のなかで問題を解決することに主眼を置いているのに対し、トランジションデザインは、長期的な未来に向けてシステムそのものを根本的に変革していく必要性に着目している点が特徴だ。

トランジションデザインのフレーム

上の画像は、トランジションデザインの立ち位置を説明するものとしてよく知られている図である。一番左端が、建物や交通システム、通信やその他のインフラなど、人間のニーズを反映して作られた世界観「ビルトワールド」。一方、一番右端は、動植物といった自然界の世界観「ナチュラルワールド」だ。その間にあるのが、既存のシステムのまま、製品やサービスを開発する「Design for Service（サービスのためのデザイン）」、既存のシステムのまま社会の課題に取り組む「Design for Social Innovation（ソーシャルイノベーションのためのデザイン）」そして、そもそもシステムから再構築するデザイン「Transition Design（トランジション・変革のためのデザイン）」だ。

また、トランジションデザインには、科学や哲学、心理学、社会科学、人類学などのデザイン以外の知識による情報を使用し、デザインの方法をより深く追求するという特徴がある。また、歴史の中で大規模な社会・技術移行がどのように起こったかを研究し、世代を超えて持続的な生活を設計してきた先住民社会の知恵を利用する。他にも、以下のような特徴がある。

トランジション・デザイナーには、移行のための戦略を策定することや、ステークホルダーとの対話や議論を促進すること、また小さな社会的運動をサポートし相互のネットワークを構築することなど、これまでのデザインの領域に当てはまらない多岐にわたる役割が求められる。

まとめ

近年の日本は度重なる自然災害を受け、気候変動に関しても危機感を抱いている人が多いかもしれない。また、格差や人種差別などの問題は遠くで起きていることのように感じられるかもしれないが、実は身近にも立ち向かうべき問題はたくさんある。しかも、そうした課題は相互に影響し合い、複雑に絡み合っていることが特徴だ。

こうした「厄介な問題」を解決し、持続可能な社会へ向かうための視点の集まりがトランジション・デザインなのだと、キャメロン・トンキンワイズ氏は語る。

これまでのデザインはデザイナーの役割だったかもしれないが、より良い社会を目指すトランジション・デザインを行う主体はデザイナーとは限らない。　ビジネスにおける決定権を持つ人をはじめ、私たち全員がシステムやその問題点に目を向け、システムから変革していく意識を持つことが重要だ。

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【参照サイト】About Transition Design
【参照サイト】What is Transition Design?

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