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ベーシックインカムとは・意味

ベーシックインカム

ベーシックインカムとは?

ベーシックインカムは、すべての市民に対して無条件で定期的に支給される一定額の現金を指す。この支給は、収入の多少や労働の有無にかかわらず行われ、基本的な生活の保障を目的としている。

ベーシックインカムの目的と理念には以下が挙げられる。

  1. 貧困削減: ベーシックインカムは、貧困層の生活を安定させ、生活の質を向上させることを目的としている。
  2. 経済的自由: 市民が生計のために過度に働く必要がなくなり、創造的な活動や自己啓発、ボランティア活動などに専念できるようになる。
  3. 労働市場の変革: 技術革新や自動化によって失業リスクが高まる中で、基本的な経済的安定を提供し、労働市場の変化に適応できるようにすることを目指している。

ベーシックインカム導入検討の時代背景

近年、AI(人工知能)技術とロボット工学の進化が急速に進み、多くの職業がこれらの技術によって自動化されつつある。自動運転車、製造業のロボット、AIによるデータ解析など、さまざまな分野での技術革新が労働市場に大きな影響を及ぼしており、将来的には多くの職業が失われると予測されている。この状況下で、ベーシックインカムは最低限の生活保障の手段として注目されているのだ。AI技術の進展により、仕事が減少し、失業率が高まる可能性があるため、ベーシックインカムが安定した生活を確保するための重要な政策選択肢と見なされている。

ヨーロッパでは、過去20年間、従来の失業保険や社会保障制度が経済の変化に対応しきれない状況が続いてきた。特にリーマンショックや欧州債務危機などの経済的困難が、既存の失業政策の限界を浮き彫りにした。このため、学者や社会団体はベーシックインカムを社会政策の一環として真剣に検討してきたのである。ベーシックインカムは、貧困の削減と経済的な安定を実現するための方法として注目されており、貧困対策と完全雇用の達成を同時に目指せる唯一の方法とされている。

また、ベーシックインカムは政治家や経済学者、グローバル企業のCEOなど、広範な層からの支持を集めている。ノーベル経済学賞受賞者や著名な経済学者も、この政策の導入によって社会全体の福祉が向上し、経済の安定が図られると期待している。しかし、その一方で、巨額の財源をどのように確保するか、また「無条件でお金がもらえること」によって仕事へのモチベーションが低下する可能性についても議論がされている。

実験的に導入してきた国

ベーシックインカムの導入に向けた動きは、特に2010年以降、世界各地で草の根レベルで活性化してきた。各国では、経済や社会の変化に対応するため、または貧困や失業対策としてベーシックインカムの試験的導入が進められている。以下に、代表的な事例を紹介する。

フィンランド(2017年)

フィンランドはヨーロッパで初めてベーシックインカムの全国規模の実験を行った。対象は2,000人の失業者で、毎月560ユーロ(約7万円)が無条件で支給された。この実験は2年間続けられ、参加者の生活満足度や仕事への意欲が向上するかどうかが評価された。結果として、受給者の精神的な健康や生活の質が改善されたものの、雇用の増加には直接的な効果が見られなかったとされている。

フィンランドがベーシックインカムの調査結果を発表。雇用状況は変わらずも、幸福度に変化

スイス(2016年)

スイスでは、国民投票を通じてベーシックインカム導入の賛否を問う試みが行われたが、導入には至らなかった。しかし、スイスのジュネーブでは市単位でのベーシックインカムの実験が行われ、地域住民の生活の質や経済的安定の改善が試験された。

オランダ(2017年)

オランダのユトレヒト市では、ベーシックインカムの実験が実施された。この実験では、収入が低い家庭に対して一定額が支給され、生活の安定性や心理的な健康状態の改善が評価された。実験は地域ごとに異なる条件で行われ、データ収集が進められている。

ケニア(2016年)

ケニアでは、非営利団体「GiveDirectly」がベーシックインカムの長期実験を行っている。農村部の住民に対して無条件で現金を支給し、生活の改善や地域経済への影響を調査。この実験は10年間の長期プロジェクトであり、受給者の経済的な自立や教育の改善などが報告されている。

貧困をなくせるか。ケニアで始まった、史上最大規模のベーシックインカム実験

ナウル共和国(2018年)

ナウル共和国では、ベーシックインカムの導入に関する実験が行われた。同国では経済的な困難が続いており、政府は社会的な支援の一環としてベーシックインカムを試験的に実施した。実験の結果、貧困層の生活の質が向上し、経済的な安定が得られるという評価がされている。

タイ(2024年)

タイでは、デジタル通貨を用いたベーシックインカムの実験が始まった。政府は市民に対してデジタル通貨で支給し、経済のデジタル化と市民の生活安定を目指している。この実験では、デジタル経済の推進とベーシックインカムの両立を図り、効果や課題を評価している。

技術の進展と政策の進化

ベーシックインカムの導入と実験が進む中、今後の展望についてはさまざまな視点から検討されている。世界中で実施されているベーシックインカムの実験は、各国の経済状況や社会構造に応じた多様な形で行われている。フィンランドのような先進国から、ケニアのような途上国、タイのデジタル通貨プロジェクトまで、その形式や影響はさまざまだ。これらの実験から得られるデータは、ベーシックインカムの効果を理解し、適切な政策設計に役立てるための貴重な情報源となる。

ベーシックインカムは、社会的な課題に対する新しいアプローチとして注目されているものだ。実施の形態や影響は地域や試みの内容によって異なるが、基本的な理念としては、全ての市民に経済的なセーフティネットを提供し、より公正で持続可能な社会の実現を目指している。

デジタル通貨やAI技術の進展により、ベーシックインカムの導入や管理がより効率的になると期待されている。また、政策の進化によってより多くの国や地域で実施が進む可能性がある。今後も多くの国で新たな試みが行われていくだろう。

【参照サイト】Basic Income Earth Network
【参照サイト】Thailand is piloting a universal basic income. Here’s what to know
【参照サイト】Money for nothing: is universal basic income about to transform society?




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