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バイオエコノミーとは・意味

バイオテクノロジー

バイオエコノミーとは?

バイオエコノミーとは、再生可能な生物資源とデータサイエンスを融合させた持続可能な経済のこと。植物、動物、微生物などのはたらきを活用する「バイオテクノロジー」の発展により、経済成長と地球環境などの社会問題の解決も期待されている。

バイオテクノロジーは以下の5つの産業に分けられる。

1. 食品産業、農林水産業:機能性食品、培養肉、人工肉など
2. 環境・エネルギー産業:バイオ燃料、生分解性プラスチックなど
3. 化学産業:機能性化学品など
4. 健康・医療産業:バイオ医薬品、ワクチン、再生・遺伝子治療など
5. 研究基盤産業:解析ソフト、顕微鏡、分析機器など

バイオエコノミーが生まれた背景

世界経済は、第1次産業革命以前から現在の第4次・5次産業革命まで、資源や産業構造が大きく変化してきた。バイオエコノミーは最新の第5次産業革命にあたる。

  • 産業革命以前(1600年代頃):産業エネルギーを木材に頼る
  • 第1次産業革命(1700年代半ば):石炭を主力に蒸気機関が発達
  • 第2次産業革命(1800年代後半〜1900年代前半):石油の台頭で機械、鉄鋼、造船などの重工業と化学繊維や肥料、医薬品などの化学工業での技術革新
  • 第3次産業革命(1900年代後半):電子工学の進歩
  • 第4時産業革命(現在):IoT(Internet of Things)、AI(人工知能)、ビッグデータの活用
  • 第5次産業革命:(現在):バイオテクノロジーとデジタルテクノロジーの融合により生命現象を解明、生物機能を産業へ応用可能にすること

    バイオエコノミーが注目を浴びる前にも遺伝子組み換えや細胞融合などの技術があったが、2010年以降に台頭した「合成生物学」により新たな可能性を見出している。例えば、DNA配列を読み解く「シーケンサー」の性能向上により、ヒトゲノム(ヒトの遺伝情報)の解析への時間とコストの削減に大きく成功した。

    日本のバイオエコノミー戦略

    バイオ戦略の全体目標は、「2030年に世界最先端のバイオエコノミー社会を実現」すること。そのために、「国内外からの人材、投資を呼び込むための戦略」「バイオエコノミー形成のための戦略」を掲げている。バイオ戦略2020は、3つの柱に重点を置く。

    市場の拡大

    2030年時点で国内のバイオ市場規模を92兆円にすることを目指す。そのうちの53.3兆円(2018年 : 32.5兆円)を高性能バイオ素材、バイオプラスチックが占める。

    バイオコミュニティの形成

    バーチャル事業創出を見据えて「グローバルコミュニティ」を、企業や大学と連携して地域活性化を目指す「地域コミュニティ」の形成を図る。

    データ連携の促進

    市場創出を目的に政府全体の共通ルールを前提として連携。「バイオものづくりプラットフォーム」「ゲノム・データ」など幅広い分野を網羅する。

    バイオテクノロジーの具体例

    株式会社ユーグレナ(日本):ミドリムシで環境問題と食料問題に挑む

    株式会社ユーグレナは、微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)を世界で初めて食用屋外大量培養することに成功。ユーグレナを食品や化粧品に加工して販売している。ユーグレナの光合成で生育する特性を生かし、火力発電所から排出される二酸化炭素を利用して育てている。また、ユーグレナを原料としたバイオ燃料を動力にする船やバスの実用化も行っている。

    ホクサン株式会社 産業技術総合研究所(日本):イチゴで作る、イヌ歯肉炎の薬「インターベリーα®︎」

    歯肉炎を軽減する成分を含むイチゴの開発を行うホクサンが開発した「インターベリーα®︎」は、1歳を過ぎたイヌの80%が罹患しているという歯肉炎を自宅で治療するために開発された薬。遺伝子組み換え植物の果実そのものを原薬(有効成分)として用いており、世界で初めて承認された医薬品である。

    「食べるワクチン」と呼ばれるこの領域では、大豆の種子から作るアルツハイマー病ワクチンなど、ヒト用医療品の開発にも期待が高まっている。

    TMRW LIFE SCIENCES(アメリカ):体外受精のための卵子や胚の管理を自動化したプラットフォーム

    世界中の体外受精クリニックでは、数百万個の卵子や胚を冷凍保存しており、その数は今後数年で数千万個になると予想される。多くのクリニックでは、検体を手作業で扱ったり患者のデータを紙に記録したりと、これまで管理の面で課題があった。

    TMRW LIFE SCIENCES社が開発したプラットフォームは、無線自動識別(RFID)技術やロボット工学を使用し、卵と胚の追跡や低温で安全に保管することを可能にした。

    まとめ

    OECD(経済協力開発機構)によると、バイオ市場は2030年にGDPの2.7%(約180兆円)に成長するとされており、そのうちの39%をインダストリアル・バイオ(工業)、36%をグリーン・バイオ(農業)、25%をメディカル・バイオ(健康・医療)が占めることが予測されている。

    また、バイオエコノミーは、化石資源を大量に使用したことで問題となっている気候変動、天然資源枯渇、食糧不足、少子高齢化などあらゆる地球規模の問題解決と経済成長の両立が期待されている。

    ますます注目されるバイオエコノミー。古来より発酵技術があり、微生物などからヒントを得て豊かに暮らしてきた日本だからこそ、貢献できることは多いかもしれない。バイオテクノロジーで世界をリードするという国家戦略の今後の動向に注目だ。

    【関連記事】バイオテクノロジーとは・意味
    【参照サイト】経済産業省 バイオエコノミー社会の実現に向けて
    【参照サイト】内閣府政策統括官 バイオ戦略2020
    【参照サイト】神戸大学先端バイオ工学研究センター 部門概要
    【参照サイト】METI Journal バイオの新常識が世界を変える。日本の活路を探る
    【参照サイト】経済産業省 BIO ECONOMY 2030
    【参照サイト】TMRW Safeguarding the world’s most precious cells for life




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