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ナラティブとは・意味

会話

ナラティブとは?

ナラティブ(narrative)とは、日本語で「語り・物語」を意味する。1960年代に文芸理論上で提唱された概念だが、現在では海外・国内ともに医療現場や企業経営など様々な場面で使われている。ナラティブとストーリーはどちらも「物語」と訳されるのでその意味を混同しがちだが、ナラティブは物語を語る方法や視点、構造のことである。つまり、誰がどのように物語を伝えるかという手法を指す。一方、ストーリーは物語の具体的な内容や出来事そのものを指す。

「一方的にできあがった物語を語る」ことや「物語」の意味を指すのがストーリーであるのに対し「一人ひとりが個人的な経験に基づいて物語を語る」という意味を指すのがナラティブという言葉だといえる。

ナラティブが重視されるようになった背景

ナラティブが重視されるようになった背景には、スマートフォンやSNSの普及と、SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)への関心の高まりが大きな影響を与えている。

スマートフォンやSNSの登場により、情報の発信と共有が容易になり、物語性のあるコンテンツが人々の注目を集めやすくなった。これにより、ブランドや企業は単なる情報提供ではなく、共感を呼び起こすストーリーを重視するようになった。さらに、SDGsやESGの推進により、企業や団体は社会的責任や持続可能性を伝えるために、具体的で感情に訴えるナラティブを用いることが重要とされている。

ナラティブの活用事例

日本国内では、このナラティブを活用したアプローチが特に医療や介護などの分野で用いられており、ナラティブ・アプローチ、もしくはナラティブセラピーと呼ばれている。この方法は1980年代後半に提唱されはじめたが、今も確定的な定義はなく、実践の領域や研究者によって考え方や具体的な方法は異なる。

ナラティブアプローチでは、専門家が相談者に対して上の立場に立つのではなく、相談者が語る「物語」を聞くことを中心とする。そしてそこから、問題の解決につながる新たな物語を再構築し、その人らしい解決法を一緒に見つけていく。

ナラティブ・アプローチの実践の場としては、以下の例が挙げられる。

・心理・医学の臨床の場
・社会学や文化人類学
・キャリア・コンサルティング
・司法領域

企業にも必要とされるナラティブ

ナラティブは昨今、企業においても非常に求められている。

例えば、スポーツブランドNikeは、アスリートのストーリーを中心にしたマーケティング戦略を展開。キャンペーン「Just Do It」は、個々のアスリートの挑戦や成功の物語を通じて、ブランドのメッセージを伝えている。特に、Nikeの「Dream Crazy」キャンペーンでは、選手の逆境を乗り越える物語をナラティブとして使用し、感情的な共鳴を生み出した。

Patagoniaは環境保護とサステイナビリティを中心にしたナラティブを展開している。「Don’t Buy This Jacket」という広告キャンペーンでは、消費を減らしリサイクルを促進するというメッセージをストーリー仕立てで伝えた。このアプローチは、ブランドの倫理的価値観を強調し、消費者との深い関係を築く手助けとなっている。

これまでは、企業が一方的にミッションに基づいた自社のストーリーを語ることが求められてきた。しかし、情報が多く顧客が企業の発するメッセージを厳しく見ている時代においては、自社のストーリーがあった上で、顧客と共に「どうありたいか」を議論できる土壌を用意し、顧客と共にブランドをつくっていける、ナラティブが必要とされている。

あらかじめ脚本のあるストーリーと違い、ナラティブは一人ひとりが語ることで生まれていくものである。今後企業には、プロダクトやサービス、社会課題への取り組みなどを通じ、一貫性のある、顧客との双方向のコミュニケーションの機会を持ち続けることが求められる。




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