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リジェネレーションとは・意味

自然

リジェネレーションとは

「再生的」「繰り返し生み出す」といった意味を持つ言葉。

人口増加に伴う地球資源の枯渇や、気候変動といった危機に直面する中、このままの環境を維持する、という意味での「持続可能(サステナブル)」では地球資源の枯渇に間に合わないとして、環境を良い状態に「再生」する概念として生まれた言葉だ。

気候変動やサステナビリティに意識を向ける人々の間で、地球規模の社会課題を解決するための新しい概念として注目されている。地球環境の持続可能性だけを追求するのではなく、地球環境を再生しながら、生態系全体を繁栄させていく考え方を指す。

リジェネレーションのほか、形容詞のリジェネラティブという言葉も用いられる。

サステナビリティの限界

リジェネレーションと似た言葉として、サステナビリティ(持続可能性)が挙げられる。これは「sustain(持続する、保つ)」と「-able(~できる)」を組み合わせた言葉で、環境や社会、人々の健康、経済などあらゆる場面において「将来にわたって機能を失わずに続けていくことができることシステムやプロセス」を指す。「SDGs(持続可能な開発目標」は、それをさらに具体的なテーマに分けたものだ。

しかし、ストックホルム・レジリエンス・センターが提唱するプラネタリーバウンダリーやケイト・ラワース氏によるドーナツ経済学のモデルが示すように、地球上の持続可能性は私たちが想像している以上に脅威に侵されている。

たとえばプラネタリー・バウンダリーでは安全域や程度を示す限界値を有する9つのプロセスを定めているが、2009年の時点で気候変動、生物多様性の損失、生物地球化学的循環は限界を超えたといわれており、2022年時点では気候変動、生物多様性の損失、生物地球化学的循環に土地利用の変化、新規化学物質が追加された計5つのプロセスが限界あるいは安全域を超えているといわれている。

人類が地球システムに与えている負のインパクトは限界に達している。そのうえ、もし今すぐに地球上のCO2排出をゼロにできたとしても、限界に達している地球システムがすぐに修復されるわけではない。そのような状況下で「sustain(持続する、保つ)」という概念のみで行動することはできない。

またサステナビリティという概念では、地球に対するネガティブな影響を減らすことが行動の中心で、プラスの側面を生み出すことに繋がらなかったり、人間が地球環境を外側から見て課題を解決しようとするため、人と自然が切り離された状態でのアプローチになっていたりするという限界がある。

リジェネレーションはそんなサステナビリティに次ぐ概念として生まれた。リジェネレーションという概念では、地球システムに付加価値が生まれる仕組みを追求するため、生命体全体を成長させることに繋がる。また、地球システムの一端に組み込まれた人間が地球とともに繁栄していくという発想のため、自然との相互の繋がりを感じながら共生を目指すことができる。

現在の危機的な状況を変えていくためには、単に「sustain(持続する、保つ)」という概念だけで行動するのではなく、むしろ積極的に「regenerate(再生する)」しながら将来の世代が生きる未来を作っていく必要がある。

リジェネレーションとサーキュラーエコノミーとの関係

リジェネレーションはサーキュラーエコノミーの重要な要素の1つである。

サーキュラーエコノミーとは日本語で「循環型経済」または「循環経済」と訳される。サーキュラー・エコノミーは、気候変動、生物多様性の損失、廃棄物、汚染などの地球規模の課題に取り組むシステムソリューションの枠組みである。

現在の経済では、地球の資源を採掘して製品を作り、最終的に廃棄物として捨てるという直線的なプロセスを経ているが、サーキュラー・エコノミーでは、廃棄物を出さないようにする。サーキュラーエコノミーは経済システムに投入した原材料や製品の価値をできる限り高く保ったまま、循環させ続ける事で自然を再生すること、人々のウェルビーイングや環境負荷と経済成長を分離することを目標としている。

英国に本拠を置くサーキュラーエコノミー推進機関エレン・マッカーサー財団は、サーキュラーエコノミーの3原則のひとつとして「Regenerate(再生する)」を挙げている。

  • Eliminate waste and pollution(廃棄物や公害をなくす)
  • Circulate products and materials (at their highest value)(価値を高く保ったまま製品・素材を循環させる)
  • Regenerate nature(自然を再生する)

第3の原則であるRegenerateでは、従来の直線的な経済(資源を取る・製品を作る・廃棄物を捨てる)からサーキュラーエコノミーへ移行することで、自然のプロセスをサポートすることができ、自然が繁栄するための余地を残すことができるとしている。

リジェネレーションの取り組み事例

アウトドアウェアのブランド・パタゴニアは、リジェネラティブ農業に関して先進的な取組を実施している企業のひとつだ。リジェネラティブ農業は、農地の土壌をただ健康的に保つのではなく、土壌を修復・改善しながら自然環境の回復に繋げることを目指す農業を指す。パタゴニアは土壌を耕さない不耕起栽培、あるいは省耕起栽培、コンポストを活用するなどの方法で、製品に使用するコットンと食材の製造方法を見直し、環境に貢献している。

英国発祥のフレッシュハンドメイドコスメブランド・LUSHは商品開発、原材料の仕入れ、製造、出荷、販売とすべて自社で手がけており、2016年頃から「リジェネラティブ・バイイング」という独自の調達活動を大切にしている。

ラッシュジャパン・バイイングチームへのインタビュー記事によると、リジェネラティブ・バイイングは購買を通じて環境や社会にポジティブな影響を及ぼすことを指す。原材料や製品を買わないことで事業活動がもたらす負の外部性をゼロにするのではなく、買うという行為で環境や社会にポジティブな変化をもたらす新しい購買概念だ。

リジェネラティブ・バイイングを体現したラッシュのプロジェクトには、原発事故の被害を受けた福島県・南相馬で育った菜種油を使ったソープ「つながるオモイ」、絶滅危惧種のイヌワシが棲む群馬県赤谷の森の再生に取り組む「イヌワシ・プロジェクト」、日本の里山と生物多様性の再生を目指し、渡り鳥・サシバを追って日本各地の里山を訪れながら原材料を探す「サシバ・プロジェクト」などがある。

オランダ・アムステルダム北区の官民一体型サーキュラーエコノミー実験区「De Ceuvel」は、汚染された造船所の跡地を使用し、アップサイクルされた古いハウスボートがオフィス&コワーキングスペース、研究ラボ、イベントスペース、ホテル、カフェなどとして活用されている。施設全体でサーキュラーエコノミーが実践されており、たとえば各ボートにはソーラーパネルやコンポストトイレが設置されている。キッチンシンクからの排水は砂や砂利、貝殻などの固形物や水生植物などの天然素材だけで構成されたヘロフィートフィルターで処理される。コンポストトイレで集められた有機ゴミは堆肥化され、カフェ用の野菜やハーブの生産には、従来の水産養殖と作物の水耕栽培を組み合わせたシステム・アクアポニックスが用いられている。

組織や個人のあり方にも活かせる概念

地球レベルのリジェネレーション(再生)は最も包括的な目標だが、よりミクロなレベルで個人の生き方や組織のあり方を探求する場合にも、リジェネレーションという概念から学べるものは多い。

たとえば個人が心と体を再生したり意識を変えたりするためには、家族や友人など多様な繋がりに意識を向け、そのシステムの一部である自分を観察しながら、感情や身体性を含めた自分自身を受け入れるところがスタートとなる。自分の外側にあるものと繋がりながら、自分の内側を整えていくことができるのだ。

また、企業経営やビジネスの文脈で組織のレジリエンスを高めるには、組織を構成する一人一人が成長しやすい空間を創出し、多様な個人が目的意識を持ちつつ組織に貢献できるシステムを作れるかが重要な鍵となる。組織の繁栄は、組織を構成する一人一人の生命としての繁栄を大切にするところから始まるのだ。

アフターコロナ時代の経済システム、社会システム、医療システムなどを考える際も、システムを以前の状態に戻すという発想を超えた、再生と繁栄のための新たな挑戦が必要になるのではないだろうか。

【参照元】サステナビリティから「リジェネレーション」の時代へ | サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan
【参照元】What is a circular economy? | Ellen MacArthur Foundation
【参照元】Circular economy principles: Regenerate nature
【参照元】「サステナブル」では不十分!?パタゴニアやLUSHがさらに踏み込んだ「リジェネレーション」に取り組む理由
【参照元】リジェネラティブ・オーガニック(RO) | パタゴニア | Patagonia
【参照元】人を大事に、想いをつなぐ。LUSHのリジェネラティブ・バイイング【ウェルビーイング特集 #15 再生】 | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD
【参照元】「渡り鳥のように原材料を調達する」LUSHがリジェネラティブなビジネスに取り組む理由 | Business Insider Japan
【参照元】東日本大震災から5年、福島で継続した復興に取り組む人々に想いを届ける『#つながるオモイキャンペーン』3月1日(火)より日本全国のラッシュ店舗で実施 。投稿画像は、「LUSH郡山駅店」にて掲示
【参照元】渡り⿃プロジェクト – サシバを追え! – We Are Lush — Japan
【参照元】サステナビリティの先にある概念「リジェネレーション」とは?
【参照元】De Ceuvel
【参照元】Vertical helophyte filters | Urban green-blue grids.

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