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ウォーカブルシティとは・意味

ウォーカブルシティとは?

ウォーカブルシティ(Walkable City)とは、直訳すると「歩きやすい(歩いて行ける)街」。自動車を使用せずに歩いて移動できる(バスなど公共交通機関の利用を含む)街のこと。

Institute for Transportation and Development Policy(ITDP)の研究によると、街をウォーカブル(歩きやすい)にすることは、人々の健康や環境、経済活性化のため、そしてより強固な地域コミュニティのために必要不可欠だとされている。

実際に、より安全で気軽に歩行できる街では、大気汚染の影響や交通事故が少ないほか、肥満人口が少なく子どもたちが遊ぶ時間は長いとされている。さらに、人々が街を歩き回るためローカルビジネスの経営状況が好調であること、格差の小ささも報告されている。

「公共交通の充実」と「まちの賑わい」がウォーカブルシティ実現のポイントだと言われており、この2つが互いに作用することで、「公共交通によるアクセスの確保→回流人口の増加→まちの賑わいの創出→更なる集客」という好循環が生まれる。地域経済の活性化だけでなく、交流促進によるソーシャルキャピタルの向上や歩行量の増加による健康寿命の延長、過度な自動車依存から脱却することによる排気ガスの削減や道路や橋梁などのインフラの長寿命化など、様々な相乗効果(クロスセクターベネフィット)の創出が期待できる。

海外の事例

地域のウォーカブル度合いを測る際に以下のような指標がある。公園など車のないスペースや歩行者向けの通りや広場、医療機関や教育機関が自宅から100メートル圏内にある人の割合の多さ、また都市の中の区分けの小ささによってウォーカブルな街の評価付けを行っている。

2020年、世界のウォーカブルな街に選ばれたのは、ロンドン、パリ、コロンビアのボゴタ、香港だった。パリは特に有名な事例であり、アンヌ・イダルゴ市長が「15分間都市計画」を発表し、職場や学校、病院、公園などの機能に徒歩や自転車で15分以内にアクセスできるよう、市内の交差点や駐車スペースを、歩行者天国や公園に置き換えた。これにより歩行者を増やし、車への依存を軽減したのだ。

一方、コロンビアのボゴタでは、「公共スペースをバイクより子どもたちのためのもの」にしようと努めており、バスや自転車の利用、徒歩に焦点を当てている。

その他の事例として、アメリカでは、かつて渋滞や大気汚染に悩まされていたポートランドが、問題解決のために都市区域を制限したり、区域内に機能を集中させたりすることで、職住近接を実現、最も住んでみたい街や持続可能な街と形容されるようになった。しかし同国では、ウォーカブルシティが富裕層や高学歴の人々の居住エリアにとどまっているという指摘もあがっている。

ウォーカブル推進都市

令和元年6月26日、国土交通省による「都市の多様性とイノベーションの創出に関する懇談会」において、”WE DO” [Walkable(歩きたくなる), Eyelevel(まちに開かれた), Diversity(多様な人の), Open(開かれた空間が心地いい)] をキーワードとした「居心地が良く歩きたくなるまちなか」というまちづくりの方向性が打ち出された。背景には、人口減少社会における付加価値の創出と地域課題の解決の場となる都市のあり方についての議論などがある。

この官民連携の新たなまちづくりを進めるにあたり、国内外の先進事例などの情報共有や、政策づくりに向けた国や地方のプラットフォームへの参加に積極的に取り組み、ウォーカブルなまちづくりを共に推進する「ウォーカブル推進都市」が随時募集されている。2024年9月時点では、382の自治体がウォーカブル推進都市となっている。

ウォーカブルな街づくりのこれから

今後のまちづくりの方向性としては、以下のようなものが挙げられる。

  • 都市再生の取り組みを進化させながら、官民のパブリック空間(街路、公園、広場、民間空地等)をウォーカブルな「人中心」の空間へ転換させる
  • 民間投資と共鳴しながら、多様な人材・関係人口の出会い・交流を通じたイノベーションの創出や、人間中心の豊かな生活を実現する都市を構築する

 
例えば実際の事例として、千葉県の柏の葉では、ウォーカブルな街づくりのために土地利用の多様性を高めたり、公共交通のネットワークを充実させることなどに取り組まれている。具体的には、住宅やオフィス、学校、商業施設やコミュニティスペースを近い場所に配置すること、バスの停留所を多くすることで利用を促すことなどが挙げられる。

ウォーカブルシティは、まちの環境負荷の低減や、車が減ることによる安全性向上もさることながら、高齢化が進む日本では、シニア世代にとって暮らしやすいまちの構築にも視座を与える。日本社会の文脈に照らし合わせて、住民の暮らしに沿った「公共交通の整備」と「賑わいの形成」が重要となるだろう。

【参照サイト】The Gurdian Study reveals world’s most walkable cities
【参照サイト】国土交通省
【参照サイト】ウォーカブルシティに関する考察
【参照サイト】「歩行者に優しい」都市ほどGDPが高い:調査結果
【参照サイト】ウォーカブルアーバニズム(walkable urbanism)、 ウォーカブルシティ(walkable city)とは?意味や考え方を徹底解説
【参照サイト】国土交通省 WALKABLE PORTAL(ウォーカブルポータルサイト)
【関連記事】パリ市長、職場も買い物にも「15分でいける街」計画を発表
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