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カーボンニュートラル(気候中立)とは・意味

CO2のイメージ画像

カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラル(気候中立)とは、ライフサイクル全体で見たときに、二酸化炭素(CO2)の排出量と吸収量とがプラスマイナスゼロの状態になることを指す。

この言葉は大きく分けて2つの文脈で使われる。1つはエネルギー分野において、植物由来のバイオマス燃料などに関し、「燃焼するときにCO2を排出するが、植物の成長過程で光合成によりCO2を吸収しているので、実質的にはCO2の排出量はプラスマイナスゼロになる状態」のこと。もう1つは、社会や企業における生産活動において、「やむをえず出てしまうCO2排出分を排出権の購入や植樹などによって相殺し、実質的にゼロの状態にすること」。 以降は、後者の文脈の「カーボンニュートラル」について述べる。

なお、環境省ではカーボンニュートラルを以下のように定義している。

市民、企業、NPO/NGO、自治体、政府等の社会の構成員が、自らの責任と定めることが一般に合理的と認められる範囲の温室効果ガス排出量を認識し、主体的にこれを削減する努力を行うとともに、削減が困難な部分の排出量について、他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量等を購入すること又は他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動を実施すること等により、その排出量の全部を埋め合わせた状態をいう。(カーボン・オフセット フォーラムより)

なお、カーボンニュートラルよりさらに進んだ「CO2の吸収量がCO2の排出量を上回る状態」を、カーボンポジティブという。同様の状態を、カーボンネガティブと呼ぶこともある。

カーボンニュートラルを目指す上での取り組み

国や企業がカーボンニュートラルを目指す際、一般的に以下のようなことが実施される。

  • 再生可能エネルギーへの切り替え(化石燃料を使わない)
  • 廃棄物の削減
  • 輸送削減のため、より局所的な生産をサポート
  • 輸送の電化
  • 森林再生などのプロジェクトへの資金提供によるカーボンオフセット

カーボンニュートラルをめぐる世界の動き

「カーボンニュートラル」という言葉は、21世紀に入ってから特によく聞かれるようになった。2007年にはノルウェーのイェンス・ストルテンベルク首相(当時)が、2050年までに国家レベルでカーボンニュートラルを実現する政策目標を発表。同年、コスタリカのオスカル・アリアス大統領(当時)も2021年までの実現を目指したカーボンニュートラル宣言を行った。

2017年にパリで開かれたワン・プラネット・サミット(One Planet Summit)において、ニュージーランドとマーシャル諸島のイニシアチブでカーボンニュートラル宣言(Declaration of the Carbon Neutrality Coalition)が発表された。

この宣言では2050年までに国の温室効果ガス排出をネットゼロに抑えることを「政策公約」とすることを参加資格としており、署名した国は「カーボンニュートラル連合(The Carbon Neutrality Coalition)」の一員となる。2024年12月時点で、参加国は日本を含む30か国。また、733の都市、31の地域、3,067のビジネスなどが、Race to Zero campaignのもと、2050年までのカーボンニュートラル達成に取り組んでいる。

また、2021年4月までに125か国・1地域が2050年までのカーボンニュートラル実現を表明。中国も、2060年までにカーボンニュートラルを実現することを2020年9月の国連総会で表明した。

カーボンニュートラルに関する日本の動き

日本においては、2020年10月の臨時国会で、当時の菅総理が「2050年カーボンニュートラル」を宣言。2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにし、脱炭素社会の実現を目指すことを表明した。

同年12月には、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定。この戦略では、洋上風力、水素、自動車・蓄電池など、14の重要分野を設定し、企業の脱炭素化への取り組みを促進する。

さらに2021年6月には、脱炭素へ「移行」していくための行程と具体策をまとめた「地域脱炭素ロードマップ ~地方からはじまる、次の時代への移行戦略~」を決定。5年間の集中期間に政策を総動員し、少なくとも100か所の脱炭素先行地域を創出、重点対策を全国で実施する「脱炭素ドミノ」により脱炭素を全国に伝搬させていくこととしている。

カーボンニュートラルに取り組む企業や自治体

グローバル企業もこうした動きに賛同しており、すでにカーボンニュートラルを達成している企業も存在する。

マイクロソフトは2012年にカーボンニュートラルを達成。さらに、2030年までにカーボンネガティブ(同社においては、CO2吸収量がCO2排出量を上回る状態のこと)、2050年までに創業以来排出してきたすべてのCO2を除去する計画を打ち出している。

米マイクロソフト、2050年までに創業以来排出した全CO2を除去すると宣言

Googlは2007年からカーボンニュートラルを維持。取り組みをさらに強化し、データセンターの冷房に機械学習を応用して、冷房システムによるエネルギー使用を30%削減するなどの対策を続けている。またAmazonは2019年に2030年までに商品輸送の50%をカーボンニュートラルにするという目標を発表するなど、大手IT企業が取り組みを進めている。

2030年までに商品輸送の50%をカーボンニュートラルに。アマゾンが打ち出す新たなミッション

このようにカーボンニュートラルをすでに達成した企業では、さらに「CO2吸収量がCO2排出量を上回る状態(カーボンポジティブもしくはカーボンネガティブと呼ぶ)」を目指したり、さらなるエネルギー使用の削減を進めたりするところも出てきている。

日本企業では、パナソニックがCO2排出量削減に貢献するソリューションの提供や自社の排出量を実質ゼロにすることなどを通して2050年までにグループのバリューチェーン全体でカーボンニュートラルを達成することを目指している。また、花王は2040年までにカーボンゼロ(カーボンニュートラル)、2050年までのカーボンネガティブを掲げているなど、取り組みを始める企業が増えてきている。

イギリスでは大手スーパーのモリソンズがカーボンニュートラルな卵を売り出したり、サマセットのチーズメーカーWyke Farmsが世界初のカーボンニュートラル認証を受けたチェダーチーズを売り出すなど、特定の商品の製造におけるCO2排出量をゼロにしようとする動きも広がる。

また、カーボンニュートラル宣言をする都市や地域も増え続けている。2023年には、フィンランドの小都市・ラハティが、数年以内にカーボンニュートラルを実現する見込みだと発表した。

フィンランドの小都市ラハティ、数年でカーボンニュートラル達成へ

カーボンニュートラルの課題と今後

このように官民問わずカーボンニュートラルを目指す動きが推進されているが、カーボンニュートラルの達成に課題は多い。

例えば、多くの企業や自治体が、使用する電力を化石燃料の由来のものから再生可能エネルギー由来のものに変えることでカーボンニュートラルを達成しようとしているが、再生可能エネルギーを作り出す設備(太陽光パネルなど)を作ることが自然を破壊したり地域に悪影響を及ぼす可能性もあるため、注意が必要である。

また、植林活動や森林保護を通して大気中のCO2の吸収を促す「森林吸収系」のカーボンオフセットも同様にカーボンニュートラル達成のために頻繁に用いられる手法であるが、オフセットの信頼性に注意する必要があること、またオフセットはあくまで排出量削減を行なってもやむを得ず出てしまうCO2に対して行われるべきであるという点も忘れてはならない。

今後はこうした課題を乗り越えながら、カーボンニュートラルが推進されていく必要がある。

【関連記事】三井化学×IDEAS FOR GOOD「欧州のバイオマスプラスチック採用事例」ホワイトペーパーを無料公開
【参照サイト】カーボン・オフセット フォーラム(環境省)
【参照サイト】カーボンニュートラル連合(The Carbon Neutrality Coalition)
【参照サイト】Climate positive, carbon neutral, carbon negative: What do they mean?(FAST COMPANY)

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