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カーボンリサイクルとは・意味

CO2

Image via Pixabay

カーボンリサイクルとは?

カーボンリサイクルとは、地球温暖化の原因とされているCO2を炭素資源と捉えて回収し、多様な炭素化合物として再利用することで、CO2排出量を減らすことをいう。エネルギーへのアクセス改善と気候変動問題の2つの課題を同時に解決するための方法として、注目されている。

大気中のCO2を削減する手法として、CO2を分離・回収して地中に貯留する技術「CCS(Carbon Capture and Storage:CO2の回収と貯留)」や分離・回収したCO2を利用する「CCU(Carbon Capture and Utilization:CO2の回収と利用)」などの研究も進んでいる中で、こうしたCO2の利用を促進するための取り組みをカーボンリサイクルという。(※1)

※1 経済産業省 資源エネルギー庁

カーボンリサイクルの利用先

CO2の主な利用先としては、下記が想定されている。

①化学品(ウレタン・ポリカーボネート)
②燃料(バイオ燃料・ジェット燃料)
③鉱物(コンクリート)
④その他(ブルーカーボン)

①〜④は、これまでにも各分野で研究開発が進められ、製品となっているものもある。たとえば、CO2を使ったコンクリート製品がすでに開発されているが、通常のコンクリートよりも酸性に近い性質を持つことから錆びやすく、用途が限られる。そのため、現在は道路ブロックとしてしか使えていないなどの課題がある。

日本のカーボンリサイクルの歩み

2019年1月、ダボス会議において安倍元首相がCO2リサイクルの必要性について言及し、2月には資源エネルギー庁にカーボンリサイクル室が設置された。そして同年6月、これまで述べてきたような各分野で進んでいた技術研究をまとめ、知識を共有することで開発をさらに進めることを目的とし、「カーボンリサイクル技術ロードマップ」が経済産業省によって取りまとめられた。

 

【フェーズ1】 〜2030年ごろまで:さまざまな技術開発

    特に水素が不要な技術や高付加価値製品を製造できる技術については2030年ごろから普及が期待できるため、重点的に取り組む。

【フェーズ2】 2030年〜2050年ごろまで:CO2利用拡大

    ポリカーボネート(熱可塑性プラスチックの一種)や液体のバイオ燃料はこの頃には普及しはじめ、道路ブロックのような小さなコンクリート製品は普及しはじめると予想。さらに需要の高い汎用品をつくる技術開発に重点的に取り組む。CO2を分離・回収する技術も、2030年頃までには低コスト化をはかる。

【フェーズ3】 2050年以降:さらなる低コスト化

    CO2を分離・回収する技術は現状の4分の1以下のコスト、ポリカーボネートなどの既存の製品は消費の拡大を見込む。さらにガス燃料、汎用品のコンクリート製品はこの頃から普及しはじめることを予測。

カーボンリサイクルの課題

カーボンリサイクルの技術は生産コストも高いため、まだ一般的な製品としては実現しておらず、広く実用されていくにはまだ時間がかかるとされている。

カーボンリサイクル普及のためには、大量かつ安価なCO2フリー水素が必要だとロードマップでは述べられている。CO2フリー水素は現在、天然ガスから生成しており、この生成のためにCO2を排出している。生成する過程でCO2を排出してしまってはCO2削減にならないため、CO2を排出しないゼロエミッション電源(原子力や再生可能エネルギーに基づく電源)を利用し、CO2フリー水素を生成する技術が重要とされている。(※2)

※2 経済産業省 資源エネルギー庁

カーボンリサイクルの技術事例

いま、さまざまな企業でカーボンリサイクルの研究が進められているところだ。経済産業省のホームページでは、カーボンリサイクルの事例が紹介されている。

微細藻類バイオ燃料技術開発(株式会社IHI)

本事業では、微細藻類の光合成により油脂分を生産する能力を活用し、ジェット燃料を生産するプロセスを開発。自然エネルギーと排ガス等のCO2から持続的にエネルギー源を創出し、温室効果ガスの排出を抑制する。

石油由来のジェット燃料と比較すると、温室効果ガスの排出量を50%未満に抑える代替燃料となり、炭素循環に積極的に貢献する再生可能なエネルギーとして期待されている。ICAO(国際民間航機関)のカーボンオフセット義務導入に合わせて実用化を目標。

CO2有効利用技術開発(日立造船株式会社)

CO2と水素を触媒を用いてメタンに高速変換する「メタネーション」はカーボンリサイクルの有望技術の1つ。メタンは既存の天然ガスインフラに適用できるエネルギーキャリアー(※3)である。CO2削減効果として、日本が輸入している液化天然ガス10%代替した場合は約0.25億トン、100%代替した場合は約2.5億トンが見込まれており、日本のCO2排出量12.3億トン(2015年)のうち約20%を削減できるポテンシャルを持つ。

※3 気体のままでは貯蔵や長距離の輸送の効率が低い水素を、液体や水素化合物にすることで効率的に貯蔵・運搬する方法。

廃棄物資源化技術開発(積水化学工業株式会社)

本事業では、化石資源代替の有力候補であるにもかかわらず、現状焼却処分されている廃棄物を資源化することを目的とする。廃棄物由来のCO/H2を原料にプラスチック原料等の基幹化学品を製造するプロセスを開発。

廃棄物焼却+発電と比較し、本事業の場合は、1メガジュールのエネルギーを得る際に排出されるCO2を250グラム程度削減することが見込まれる。また、廃棄物からのエネルギー回収率は50%弱程度と予想。

カーボンリサイクルが日本の温室効果ガスゼロへの鍵となる

2019年12月に開幕した「国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)」では、欧州各国などから石炭火力発電の利用継続を基本方針とする日本が激しい批判にさらされたが、トップクラスの環境技術を持つ日本が地球温暖化対策のために果たせる役割は大きいといわれている。その注目技術のひとつがこのカーボンリサイクルであり、脱炭素社会に向けた切り札として期待されている。

研究開発の促進に向けて、2020年10月には経済産業省と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)により「第2回カーボンリサイクル産学官国際会議2020」が開催され、日本はアメリカとカーボンリサイクルについて研究開発を加速させる方針を固めた。覚書には、最先端の開発を進める両国の企業を橋渡しすることや、専門家を相互に派遣することが盛り込まれている。(※4)

日本政府は、2020年10月26日に「2050年までの温室効果ガスの排出実質ゼロ」を目指す方針を発表したが、これに向けて化石燃料の利用に伴うCO2の排出を大幅に削減するためには、技術のイノベーション重要だ。日本は、ほとんどの化石燃料を海外輸入に頼っている。資源の乏しい日本において、化石燃料ではないクリーンエネルギーを生み出すカーボンリサイクルを進めていくことが温室効果ガスゼロへの鍵となるのではないだろうか。

※4 経済産業省

【参照サイト】 経済産業省「カーボンリサイクル技術ロードマップ」
【参照サイト】 経済産業省 資源エネルギー庁「カーボンリサイクルについて」
【参照サイト】 カーボンリサイクル技術事例集
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