エシカル消費とは・意味
エシカル消費とは?
エシカルとは、倫理的・道徳的という意味で、消費者基本計画の中では、「地域の活性化や雇用なども含む、人や社会、環境に配慮した消費行動」がエシカル消費と呼ばれている。
エシカル消費の具体例として、たとえば以下のようなものが挙げられる。
- 地元の産品を購入する(地産地消)
- リサイクル素材やオーガニックコットンなど環境に配慮した商品を購入する
- エシカル消費の認証ラベル・マーク(エコマークやFSC認証)のついた商品を購入する
- 労働者に公平な支払いをするフェアトレードの製品を買う
- 被災地の商品を購入する
- 寄付付き商品を購入する
地消費者庁が定める消費者基本計画にも、エシカル消費と同じような概念として「倫理的消費」について言及されている。
エシカル消費という言葉自体は、1989年にイギリスで創刊された『エシカルコンシューマー(Ethical Consumer)』という専門誌で初めて使われるようになった。この専門誌では、動物の権利や人権、汚染などのさまざまなカテゴリで企業を評価する取り組みが行われ、「値段やデザイン以外の評価軸もある。日々の買い物を見直そうよ」と呼びかけられた。1998年には、エシカル・トレード・イニチアチブという協会も発足している。
また、エシカル消費は近年、国際社会でも話題となっている。2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)の17の目標のうち、目標12は、「つくる責任つかう責任」だ。2030年までには、私たちが誰も取り残されることなく、自然と調和した生活スタイルに関する情報と意識を持ち、そして実際に行動できるようにすることが求められている。
なぜエシカル消費をすることが大切なのか
では、エシカル消費が必要な理由とはなんだろう。それは、私たちの日々の何気ない買い物の選択が、めぐりめぐって世界の不平等・不公正な世界をつくることにつながっているからだ。
世の中には、さまざまな不平等・不公正がある。たとえば、ファッション業界最悪の事故とうたわれるラナ・プラザ崩落事故。2013年にバングラデシュの首都ダッカ近郊で、8階建ての商業ビル「ラナ・プラザ」が崩落した事故で、死者1,127人、行方不明者約500人、負傷者2,500人以上が出た。ここで注目すべきは、その建物には私たちが「安いから」と好んで着るようなファストファッションのブランドの縫製工場が入っており、犠牲者の多くがその労働者だったことだ。
事故の前日に建物に入ったひび割れが発見されたが、建物の所有者は安全のための警告を無視。労働者たちは「翌日まで帰宅するな」と命じられ、避難することもできず、朝のラッシュアワーの間にビルが倒壊した。そして調査が進むにつれ、ラナプラザの工場が典型的なスウェットショップであったことも明らかになった。グローバル展開しているファッションブランドらが、こぞって労働者を低賃金かつ劣悪な環境で働かせることをよしとしていたのだ。労働組合の結成も、認められなかったという。
このように、私たちが深く考えることなく着ているファッションの裏には、途上国の生産現場の過酷な状況があることも少なくない。食品や他の製品をつくる現場でも、自動労働や、環境破壊、動物の違法狩猟などが起こっている。何も知らずに毎日買い物をすることで、私たちは社会の問題を解決するどころか、知らず知らずのうちにその問題に加担しているかもしれない。
また、近年深刻化している気候危機の観点からも、エシカル消費は重要である。私たちが日常的に購入する商品の製造過程では、多くの場合、温室効果ガスが排出される。たとえば、衣類の製造には水やエネルギーが大量に使われ、輸送や廃棄に至るまでの過程でCO2が放出される。こうした環境負荷を減らすためには、持続可能な素材や再生可能エネルギーを用いた製品を選び、できる限り長く使用することが求められる。
気候変動が進むと極端な気象や海面上昇、生態系の変化が起こり、私たちの生活環境も脅かされる。エシカル消費を通じて、持続可能な産業や低炭素な社会を支える必要があるのだ。
だからこそ、日々何かを買い物している私たちが、買い物の選択を少し変えることが大切だ。問題を生み出す商品よりも、問題を解決に近づける商品を選んでいくことは、とてもシンプルだが有効で、明日からできるアクションとなる。
エシカル消費の課題・問題点
認知度が低い
2016年に日本でおこなわれたエシカル消費に関する意識調査では、「エシカル」という用語の認知度は5%以下と低い。しかし、エシカル消費者に対するイメージとしては、ポジティブなものが約半数を占めている。エシカル消費をすることに対しては全体の約40%の人が関心を持っている。
一方で、実際にエシカル行動をしているのは、男女とも50,60代の人が最も多く、次に30代が続いている。購入しない理由として挙げられることが多いのは、「価格が高い」「本当にエシカルかどうかわからない」というものだ。
現在、巷には自然由来配合、や根拠のない「エコ」という文言など、「一見エシカルっぽい」ものもあふれている。このように、環境に配慮しているように見せかけて、実態はそうではなく、環境意識の高い消費者に誤解を与えるようなことをグリーンウォッシュと呼び、とにかくSDGsに取り組んでいるように見せかけるだけの取り組みはSDGsウォッシュという。
社会のシステム自体の変革も重要
エシカル消費を推進するには、市民一人ひとりの行動も重要だが、同時に企業と政府によるシステムの変革が不可欠である。消費者が持続可能で倫理的な選択をしようと思っても、企業がそのような商品を提供していなかったり、政府が環境保護や社会的責任を求める法規制を整備していなかったりすれば、エシカルな選択は限られてしまう。
例えば、環境に優しい素材やフェアトレード商品を選ぼうとしても、通常の商品よりも高価で手に入りにくい場合、誰もが選びやすい状況とは言えない。そのため、企業にはサステナブルな製品のラインアップを増やし、価格面でも競争力を持たせる努力が求められる。また、政府は税制優遇や補助金、規制の強化などを通じて、企業が持続可能なビジネスモデルを採用しやすくする政策を導入する必要があるだろう。
消費者がエシカルな選択をできる土壌を作るためには、こうした企業と政府の支援が重要である。さらに、教育や情報提供を通じて、消費者がエシカル消費の意味や影響を理解できる環境を整えることも大切だ。
エシカル消費の具体例
では、何をもって「エシカル」とするのか。この疑問について、インドの人権活動家でノーベル平和賞受賞者のカイラシュ・サティヤルティ氏はこう言う。
自分にとって良いことが、他の人にとって、また、地球にとって悪いことでなければ、それは倫理的です。自分が人生を楽しんでいても、それが他の人の犠牲やいかなる形であれ、搾取や虐待の上に成り立つものであってはなりません。自然に対する搾取もです。
具体的には以下の分野があるとされる。
-
- 地球環境:エコグッズ、リサイクル、認証ラベルのついた商品
- 人:障害者、児童労働
- 社会:フェアトレード
- 地域:地産地消、被災地産品
【参照サイト】「倫理的消費(エシカル消費)」普及・啓発活動
「消費」することだけがエシカル消費ではない
「エシカル消費」と一言で表現されるものの中には、さまざまな考え方や行動が含まれている。その目的は、単に既存の消費システムの中で「消費」を促すことだけではない。むしろ、生活者が主体となり、持続可能で倫理的な「消費文化」を自ら築いていくことにある。エシカル消費は、社会や環境への影響を考えながら、生活そのものを見直し、持続可能で倫理的な選択をするライフスタイルの実践なのだ。
最近では「アンダーコンシューム(underconsumption)」というコンセプトが広がりつつあり、贅沢品を誇示するのではなく、シンプルで質素な生活に価値を見出す動きが見られる。例えば、美容製品を最後まで使い切ったり、再利用可能なパッケージを選んだり、あらゆるものを節約することに喜びを見出す人が増えている。また、新しい服にお金をかけない、所有物を減らすことで生活を豊かにするなど、消費を控えた中に満足を見出すライフスタイルが支持されている。エシカル消費は、単なる行動ではなく、社会や環境を大切にしながら個人の価値観に基づいた文化の構築へと進化しているのだ。
【参照サイト】What is ‘underconsumption core’? The minimalist trend, explained
【関連記事】雑誌『Ethical Consumer』は、英国のエシカルシーンをどう作っているのか
【関連記事】脱消費主義(デ・コンシューマリズム)とは・意味
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D
E
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F
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G
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J
L
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Q
R
S
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