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マイノリティとは・意味

マイノリティ

マイノリティとは?

全体を構成する二つのもののうち少数のもの、少数派を表す言葉のこと。「少ない、重要ではない」という意味を持つ英語のminor(マイナー)に由来している。現在では単に数が少ない少数派ということではなく、人種・民族、性別・性的志向、宗教、社会的階級などにおいて権力を持つ側ではなく、不当に扱われたり、不利益を被る立場である社会的少数派を指すことが多い。

マイノリティに対する言葉としてマジョリティ(多数派)がある。必ずしもどちらかに属するということではなく、誰しもあるコミュニティではマジョリティであっても、時代や状況、環境によってマイノリティになる可能性を持っている。

マイノリティに対する国際的取り組み

人々の間で格差が生まれ、支配関係の構造が作られていったのは古く農耕社会が広がったことに始まる。その後長い歴史の中で、宗教や経済、カルチャーなど様々な側面において、多数派と少数派に分かれ、世界各地で差別や虐待などが行われてきた。現在では世界のおよそ10億人の人々がマイノリティと言われるグループに属していると言われている(※)

20世紀に入り、第二次世界大戦後の1948年に国連総会で世界人権宣言が採択され、すべての人間が生まれながらに基本的人権を持っているということが、初めて公式に認められた。

それから半世紀近くを経て採択されたのが、1992年に「民族的または種族的、宗教的および言語的少数者に属する者の権利に関する宣言(マイノリティ権利宣言)」だ。これはこれまでにあった同化を前提とした平等ではなく、マイノリティの人々を否定せず、尊重すべき存在とするという考えが示された。さらに2007年に「少数者問題に関するフォーラム」が設置され、マイノリティ権利宣言の具体的な実施を促すために様々な取り組みが行われている。

マイノリティの事例

現在でも世界のあらゆる場所で、また様々な場面でマイノリティに関する問題は存在している。ここでは私たちの周りでマイノリティとされている事例をいくつか紹介する。

エスニックマイノリティ

民族・人種的に少数派の人々。アイヌやネイティブアメリカンなどの先住民族はその文化や言語などが否定され、同化政策がとられるなど差別や迫害を受けてきた。また移民、難民などは外国人として扱われ、雇用や教育、受けられるサービスなどで制限を受けることも少なくない。一方、かつて南アフリカで行われていたアパルトヘイトでは人口的には大多数だった黒人が権力を持った白人によって迫害されるなど、数的有利に限らない差別も行われていた。

性的マイノリティ

LGBTQといった性的指向や性自認が多数派と異なる人々。差別やいじめの対象となったり、職業上で不当な扱いを受けたりするなど偏見による不利益を被ることがある。また同性愛者同士の結婚が認められていない地域では受けられる公的サービスなども制限される。

一般的な性的マイノリティとは異なるが、人口的に過半数を占める女性に対しても様々な社会格差が存在し、男性に対してマイノリティとされている。

障害や病気を持つ人々

身体、知的、精神障害を持つ人々は教育や就労の場面においていわゆる健常者の人と異なる環境に置かれることが多い。世の中の施設やサービスなどもバリアフリーに対応していないものもまだ多く、暮らしづらさを感じることや行動を制限されることもある。

また、ハンセン病やエイズ、新型コロナウイルスなど感染病を患う人々に対し、正しい知識を持たず偏見や差別が行われてきたことも事実だ。

宗教的マイノリティ

ナチスドイツによるユダヤ人の虐殺、ミャンマーでのロヒンギャや中国でのウイグル族弾圧など世界各地において宗教が原因で迫害の歴史が繰り返されている。一方、宗教上の食事制限に対応したメニューを提供するお店が少ないことや、宗教的価値観に反するといった理由で映画の上映が禁止されるなど、日常的な側面で起こりうる宗教的な差別も存在する。

被差別集落

歴史的に身分制度などによって立場が低いとされてきた集落や集団に対する差別。日本における士農工商制度から続く同和問題(部落差別)や在日コリアン問題、インドでのカースト制度による差別などがこれにあたる。

上記に挙げた例以外にも右利きに対する左利きや、両親のどちらかが外国人であるハーフの人々、一人親家庭など、日常の身近な場面でもマイノリティの問題は存在している。

マイノリティとマジョリティが共に生きやすい社会にするために

マイノリティとマジョリティの間に格差を生じさせるのは、双方の認識のギャップや、マジョリティが無意識に持つ特権などと言われる。現在はダイバーシティ&インクルージョンの考えの普及、教育による正しい知識の習得や国や組織単位の制度の改善、アファーマティブ・アクション(積極的格差是正措置)など、こうした格差をなくしていこうという動きも始まっている。

しかし一方で、アファーマティブ・アクションはマイノリティ側に行き過ぎた優遇を行うことで、その恩恵を享受できない人にとって逆差別を生むといった考え方もある。特権と差別は表裏一体で、誰しもそのどちらの立場にもなりうる可能性を孕んでいる。SDGsのターゲット10.2にも掲げられているすべての人が平等で、社会的、経済的、政治的に取り残されない社会を作るために、意思決定の場に双方の立場の人を置くことや、それぞれが共に異なる視点を持って対話を重ねていくことが必要だ。長い歴史の中で行われてきた構造的差別を一朝一夕に解決することは難しいが、マイノリティもマジョリティも自分らしさを持ち共に生きやすくなる未来を目指したい。

国連広報センター | 少数者の権利

【参照サイト】OHCHR | Forum on Minority Issues
【参照サイト】UNHCR | Minorities and indigenous peoples
【参照サイト】国連広報センター | 少数者の権利
【参照サイト】ヒューライツ大阪(一般財団法人アジア・太平洋人権情報センター) | マジョリティ側が陥りやすい「多様性」の罠
【参照サイト】こここ | 差別や人権の問題を「個人の心の持ち方」に負わせすぎなのかもしれない。 「マジョリティの特権を可視化する」イベントレポート
【参照サイト】日本財団ジャーナル | LGBTQなど性的マイノリティを取り巻く課題。私たちにできること
【参照サイト】国連広報センター | 障害を持つ人々
【参照サイト】在日米国大使館・領事館 | 信仰の自由に関する国際報告書(2022年版)-日本に関する部分
【参照サイト】東京都総務局人権部 | 東京都の人権課題
【参照サイト】withnews | 部落・在日コリアン…差別がよみがえった 20年取材した記者の驚き
【関連ページ】アファーマティブ・アクションとは・意味
【関連ページ】ダイバーシティ(多様性)とは・意味

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