環境教育(Environmental Education)とは・意味
環境教育(Environmental Education)とは?
環境教育(Environmental Education)とは、環境問題に対する理解を深め、持続可能な社会を実現するために必要な知識やスキル、態度を育む教育のことを指す。これは単に環境に関する知識を教えるだけでなく、問題解決能力や批判的思考を養い、積極的な行動を促すことを目的としている。
また、環境教育は学校や地域社会での実践を通じて、次世代が環境保護への意識を高め、具体的な行動を取る力を育てることを目指す。
現代社会において、気候変動や生物多様性の喪失、資源の枯渇などの環境問題は年々深刻化しており、個人や社会全体が環境への理解を深め、責任ある行動を取ることが求められる。そのため、環境教育は非常に重要な教育分野の一つといえる。
環境教育の意義
環境教育には、人々に環境問題への理解を深めさせ、その結果として責任ある行動を促す、という意義がある。
文部科学省の指針では、持続可能な社会の構築に向け、環境負荷を減らしながら経済的な発展を実現するために、個々人が環境問題について学び、積極的に環境保全活動に取り組むことが重要だとされている。特に次世代を担う子どもたちへの環境教育の役割は大きく、未来を見据えた行動を取るための基盤となる知識や価値観を育むうえで非常に重要だ。
米国環境保護庁(EPA)も同様の立場をとっている。さらに、EPAの指針では環境問題について多様な視点から考える力を養い、個々が自らの意思で行動を選択できるよう支援することも重視している。
環境教育の構成要素
環境教育は、いくつかの重要な構成要素から成り立つ。
環境への認識と感受性
環境問題に対する認識を高めることは、環境教育の第一歩だ。たとえば、気候変動や森林破壊、海洋汚染などの問題を知り、それが自分自身や社会にどのような影響を与えるかを理解することが重要だ。
環境問題に関する知識と理解
環境教育は、単なる事実やデータの提供にとどまらない。環境問題の原因や結果について深く学ぶ機会を提供することで、問題の本質を理解し、適切な対応策を見出す力を養うことができる。
環境への関心と行動意欲
環境教育では、環境に関する知識を身につけるだけではなく、それをもとに行動を起こす意欲を持つことが求められる。多くの環境教育プログラムでは、地域社会や学校での実践活動を通じて、学習者が具体的な行動を取る機会を提供する。
問題解決のためのスキル
環境教育は、問題を特定し、それに対して有効な解決策を見つけ出すスキルを育てる。これには、科学的な知識に基づく分析力や批判的思考が含まれ、環境問題に対する包括的な理解が求められる。
活動への参加とコミュニティへの貢献
環境教育において、もう一つの重要な要素が地域社会やコミュニティへの参加だ。個人や集団が協力して環境問題に取り組むことで、より大きな成果を生むことができる。たとえば、清掃活動や植樹運動などの地域活動を通じて、環境への関心を深めることができる。
環境教育と環境に関する情報の違い
環境教育においても、環境問題について理解するうえで、環境に関する情報(事実やデータ)は必要になる。だが、先述した通り、環境教育はただ単に環境に関する情報を学習者に提供することではない。
環境教育と環境に関する情報の違いをまとめると以下のようになる。
環境教育 |
環境に関する情報 |
・環境問題に対する国民の意識と知識を高める ・批判的思考を身につける ・問題解決能力や意思決定能力を高める ・特定の見解を主張しない |
・環境問題に関する事実や意見を提供する ・必ずしも批判的思考を教えるものではない ・必ずしも個人の問題解決能力や意思決定能力を高めるものではない ・特定の視点を擁護する場合もある |
環境教育のメリット
まず、批判的思考力と創造的思考力が高まる点があげられる。環境問題は様々な要素が絡み合って引き起こされているため複雑だ。環境教育では、そんな複雑な環境問題について、子どもたちなど学習者がその問題について調査し、物事がどのように、なぜ起こるのかを調べ、自分自身で判断することを促す。それにより、問題の多面的な側面を理解し、自らの考えを形成する力を養うことができる。
さらに、環境教育は複数の学問分野にまたがった学習の促進にもつながる。環境教育では、科学、数学、社会科など、さまざまな教科が結びつくことで、より深い学びが得られる。たとえば、自然環境について学ぶだけでなく、その保全が経済や社会にどのような影響を与えるかについても学ぶことができるのだ。
また環境教育は、教室の外で体験学習の機会を提供したり、実社会で学習したことを結びつけて応用したりすることも可能にする。その結果、学習者が環境教育を通じて、社会的、生態学的、経済学的、文化的、政治的問題が相互に関連していることを認識することにつながる。
加えて、環境教育には生徒たちの健康や生活の質を向上させる効果もある。自然の中で過ごす時間が増えることで、ストレスの軽減や体力の向上、さらには心の健康が促進されるからだ。こうした健康的なライフスタイルの奨励は、現代の子どもたちにとって非常に重要といえよう。
環境教育の具体例
日本では、文部科学省が総合的な学習の時間や道徳教育の中で、環境保全に関する教育を積極的に推進している。たとえば、小学校では、身近な自然環境やエネルギー資源の活用について学ぶ機会が提供されており、これによって子どもたちは持続可能な社会の構築に向けた意識を高めている。
日本教育新聞で取り上げられている事例によると、名古屋市の幼稚園では、ゴミの分別やリサイクルに関する教育が行われている。幼い子どもたちが、自分たちの日常生活と環境問題との関係を理解し、リサイクル活動を通じて環境保全に貢献する姿勢を育むことが目的だ。こうした取り組みは、幼少期からの環境意識を導くことに貢献している。
なお、環境省は下記のWebページにて環境教育の具体的な活動事例を公開している。
加えて、環境省は環境教育に役立つ情報サイトとして「環境学習STATION」を公開しており、環境教育の実践例を動画で視聴することができる。活動事例を動画で視聴したい場合におすすめだ。
<海外の事例>
環境教育の今後の課題
環境教育は多くのメリットを提供するが、その効果を最大限に引き出すためには、いくつかの課題も存在する。まず、学習者間での理解度や関心のばらつきが問題となり得る。すべての学習者が同じレベルで環境問題に関心を持つわけではないため、個々の関心や価値観に合わせた教育が必要とされる。
また、教育の場だけでなく、地域社会全体での取り組みが不可欠である。環境教育は学校などの教育機関だけで完結するものではなく、家庭や地域での活動を通じて、より深い学びと実践が促進されるべきと考えられる。
最後に、環境教育を推進するためには、教育者自身の意識や知識も重要だ。教員が環境問題に対して深い理解を持ち、情熱を持って指導できることが、効果的な環境教育のカギとなる。したがって、教育者への研修やサポートも今後の課題としてあげられる。
まとめ
先述した通り、環境教育は単なる環境知識の教育にとどまらない。問題解決能力や意思決定能力を育むためのプロセスであり、特定の価値観を押し付けるものではない。むしろ、環境問題に対する多面的な視点を提供し、批判的思考を通じて個々が自発的に行動できるよう支援するものである。
環境教育は、持続可能な未来を実現するための重要な手段だ。個々人が環境問題に対する理解を深め、責任ある行動を取ることを促す役割を果たしている。学校や地域社会での実践を通じて、環境問題への関心を高めること、解決に向けた行動を奨励することが求められることから、今後も環境教育の重要性は増し続けると考えられる。教育システム全体での取り組みがさらに進展していくことに期待したい。
【参照サイト】環境教育:文部科学省
【参照サイト】What is Environmental Education? | US EPA
【参照サイト】About EE and Why It Matters | North American Association for Environmental Education
【参照サイト】環境教育の重要性とは 未来を託す子どもたちに何を教えるべきなのか
【参照サイト】新学習指導要領における「環境教育」に関わる主な内容
【参照サイト】Top 10 Benefits of Environmental Education – Project Learning Tree
【参照サイト】環境学習STATION
【参照サイト】環境教育・ESD実践動画100選
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- First Movers Coalition(FMC)
- Flight shame
- FOMO(Fear of missing out)
- FSC認証
- FtM(Female to Male)
- FTSE4Good Index(フッツィー・フォー・グッド・インデックス)
G
- GHG排出ピークアウト
- GNR革命
- GovTech(ガブテック)
- Green Climate Fund(緑の気候基金)
- Green Dating
- GRI(Global Reporting Initiative)
H
I
- IaaS(Infrastructure as a Service)
- IIRC(国際統合報告評議会)
- Inner Development Goals(IDGs)
- InsurTech(インシュアテック)
- Internet of Abilities(能力のインターネット)
- Internet of Animals(動物のインターネット)
- Internet of Behavior(行動のインターネット)
- Internet of Customers(顧客のインターネット)
- Internet of Human(ヒトのインターネット)
- Internet of Skills(スキルのインターネット)
- Internet of Things(モノのインターネット)
- IPCC
- ISSB
- IUU漁業
J
L
- LAC(Living Anywhere Commons)
- LCA(ライフサイクルアセスメント)
- LEAPアプローチ
- LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)
- Learning by doing
- Less is more
- Life-Centered Design
- LOHAS(ロハス)
M
- MaaS(Mobility as a Service)
- MAPA(Most Affected People and Areas)
- MENA(ミーナ)
- Medtech(メドテック)
- MDGs(ミレニアム開発目標)
- MSC認証
- MtF(Male to Female)
N
O
P
Q
R
S
- SaaS(Software as a Service)
- 里山イニシアチブ
- SASB
- SBT(Science Based Targets)
- SBTs for Nature(Science-Based Targets for Nature)
- SDGsウェディングケーキ
- SDGsウォッシュ
- SFDR
- Shecession
- Shecovery
- SOGI(ソジ)
- SPO(Sustainable Public Equity Offering)
- STEAM教育