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インクルーシブデザインとは・意味

インクルーシブデザイン

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インクルーシブデザインとは?

インクルーシブデザインとは、すべての人々、特に多様なニーズを持つ人々を考慮して設計されたデザインのアプローチ。インクルーシブデザインは、製品やサービスを誰でも利用可能にすることを目指し、社会的な排除を防ぐためのデザイン戦略である。

ユニバーサルデザインとインクルーシブデザインの違い

ユニバーサルデザインは、最大多数の人々が利用できるようなデザインを目指すものであるが、インクルーシブデザインはより特定のユーザーのニーズに焦点を当て、すべての人々にとって意味のある体験を提供することを重視する。インクルーシブデザインは、ユニバーサルデザインの理念を受け継ぎつつも、特に多様なバックグラウンドや能力を持つユーザーを中心に考える点で異なる。

デザインプロセスとアプローチ

それでは、インクルーシブデザインはどのように実現していくのか、デザインプロセスとアプローチを見ていきたい。

ユーザー中心設計

ユーザー中心設計(UCD)は、デザインプロセスのすべての段階でエンドユーザーのニーズと期待を考慮するアプローチ。ユーザーの視点から問題を定義し、その解決策をデザインすることで、最終的な製品やサービスがユーザーにとって使いやすく、満足度の高いものとなる。

コ・デザイン(共創デザイン)

コ・デザインは、デザイナーとエンドユーザーが共同でデザインプロセスに参加するアプローチ。これにより、ユーザーのニーズや期待がより具体的かつ正確に反映される。また、ユーザー自身がデザインの一部に関与することで、よりエンゲージメントが高まり、製品やサービスに対する満足度も向上する。

エンパシーマップ

エンパシーマップは、ユーザーの感情、思考、行動、ニーズを視覚的に表現したツール。これを使用することで、デザインチームがユーザーの視点に立って考えることが容易になり、よりユーザーの実際の体験に即したデザインが可能になる。

デザインシンキング

デザインシンキングは、問題解決のためのイノベーティブなアプローチで、共感、定義、アイデア出し、プロトタイピング、テストという5つのステップから成る。ユーザーのニーズを中心に据えたクリエイティブな問題解決方法で、インクルーシブデザインのプロセスにおいても非常に重要な手法だ。

ユーザー多様性の理解

なお、インクルーシブデザインにおいてはそのデザインプロセスだけではなく、ユーザーのことをどれほど理解できるかと言う視点も重要だ。ここでは、ユーザー多様性の理解に必要な考え方を記していく。

ペルソナとエッジケース

ペルソナは、ターゲットユーザーの代表的な特徴を持つ架空のキャラクターを作成することで、ユーザーのニーズや行動パターンを理解しやすくする手法。エッジケースは、標準的なユーザーとは異なるニーズや行動を持つユーザーを指し、これらのケースを考慮することで、より広範なユーザー層に対応できるデザインが可能になる。

ユーザーリサーチとエスノグラフィ

ユーザーリサーチは、ユーザーのニーズ、動機、行動を理解するための調査手法で、インタビュー、観察、アンケートなどが含まれる。エスノグラフィは、ユーザーの自然な環境での行動を観察し、深く理解するための手法で、インクルーシブデザインにおいて特に有効である。

バリアと障壁

バリアは、ユーザーが製品やサービスを利用する際に直面する物理的、認知的、または感情的な障害を指す。これらのバリアを特定し、解決することは、インクルーシブデザインの重要な要素であり、すべてのユーザーが等しくアクセスできる体験を提供するために不可欠である。

インクルーシブデザインの事例

Apple’s VoiceOverとその他のアクセシビリティ機能

Appleは、視覚障害を持つユーザー向けにVoiceOverというスクリーンリーダー機能を提供している。VoiceOverは、画面上のテキストや要素を読み上げるだけでなく、ジェスチャーを使用して操作することも可能にしている。また、Appleは色覚異常のユーザー向けに、ディスプレイの色調整オプションや、耳の不自由なユーザー向けに多様な聞こえ方をサポートするオーディオ機能など、さまざまなアクセシビリティ機能を搭載している。

IKEAの「ThisAbles」プロジェクト

IKEAは、イスラエルのNGOと協力して「ThisAbles」というプロジェクトを立ち上げ、障害を持つ人々のために家具をより使いやすくするアクセサリーを提供。このプロジェクトでは、オンラインで無料ダウンロードできる3Dプリント可能なデザインを提供し、ユーザーが自宅で簡単に家具をカスタマイズできるようにしている。これにより、より多くの人々がIKEAの製品を自分に合った形で利用できるようになった。

LEGOの点字ブロック「Braille Bricks」

LEGOは視覚障害を持つ子どもたちのために点字ブロックを開発。これらのブロックは、標準的なLEGOの形状を持ちつつ、点字を表す突起が付いているため、視覚障害のある子どもたちが遊びながら点字を学ぶことができる。これにより、遊びの中で学びの機会を提供し、インクルーシブな教育環境をサポートしている。

関連する規格とガイドライン

ここでは、インクルーシブデザインに関連する規格およびガイドラインを紹介する。

Web Content Accessibility Guidelines(WCAG)

WCAGは、ウェブコンテンツのアクセシビリティを確保するための国際的なガイドライン。これらのガイドラインは、視覚や聴覚、運動能力に障害のあるユーザーを含む、すべての人がウェブコンテンツにアクセスしやすくするための基準を提供する。

Americans with Disabilities Act(ADA)

ADAは、アメリカ合衆国における障害者の権利を守るための法律で、公共の場やサービスにおいて障害者が差別されないようにするための基準を定めている。インクルーシブデザインにおいても、この法律に基づいて、製品やサービスがすべてのユーザーにとってアクセス可能であることを保証する必要がある。

まとめ

インクルーシブデザインは、すべての人々が平等にアクセスし、利用できる製品やサービスを提供するための重要なアプローチだ。それは単なるアクセシビリティの改善にとどまらず、より包括的な視点でユーザー体験を向上させる。

すべてのユーザー、特に多様な背景や能力を持つ人々にとって、製品やサービスが利用しやすくなることは、社会的な「インクルージョン」の促進に直結している。これにより、企業や組織はより広い顧客層にリーチし、ユーザーエクスペリエンスを向上させることで、ブランドの信頼性や価値を高めることもできるだろう。

【参照サイト】インクルーシブデザインによるソーシャル・インタラクションの設計可能性についての素描| 21世紀社会デザイン研究学会
【参照サイト】Inclusive Design Tool Kit| University of Cambridge
【関連ページ】バリアフリーとは・意味
【関連ページ】ユニバーサルデザインとは・意味

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