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リジェネラティブ農業(環境再生型農業)とは・意味

regenerative agriculture

Image via Unsplash

リジェネラティブ農業とは?

日本語で「環境再生型農業」とも呼ばれる。農地の土壌をただ健康的に保つのではなく、土壌を修復・改善しながら自然環境の回復に繋げることを目指す農業を指す。

土壌が健康であればあるほど多くの炭素を吸収(隔離)するため、リジェネラティブ農業は気候変動を抑制するのに有用な手法だと考えられている。リジェネラティブ農業の具体例としては、以下のようなものが挙げられる。

  • 不耕起栽培

土を耕さずに農作物を栽培する方法のこと。土を掘り起こさないことで土壌侵食が軽減され、有機物を多く含む豊かな土壌に戻り、空気中の炭素をより多く地中に留められるようにする。

  • 被覆作物の活用

主作物の休閑期に土壌浸食防止や雑草の抑制などを目的として、露出する地面を覆うように植物を植えること。土壌有機物が増加し、土壌への炭素隔離が起きやすくなる。

  • 輪作

同じ土地で異なる作物を、一定の順序で周期的に変えて栽培すること。土の中の栄養素や微生物生態系がアンバランスになるのを防ぎ、炭素を土壌に留める健康な根っこを育てる。

  • 合成肥料の不使用

合成肥料ではなく有機肥料を使用し、土壌の健康を改善する。合成窒素肥料を使わないことで、農業における炭素の発生を抑える効果もある。

リジェネラティブ農業の目的と指標

2019年の国際連合のクライメートアクションサミットをもとにできた、農業の生物多様性に特化したビジネス連合・One Planet Business for Biodiversity (OP2B) は、リジェネラティブ農業の4つの目的と8つの指標を以下のように定めている。

4つの目的

1. 農場とその周辺おける生物多様性の保護と向上
2. 土壌の中における炭素と水の保持能力を高め、植物と家畜、農業の力を活用すること
3. 肥料や殺虫剤の使用を減らしながら作物と自然の回復力を高めること
4. 農場コミュニティの生活サポート

8つの指標

1. 一ヘクタール当たりの地中の炭素量
2. 海の取水量
3. 一ヘクタール、1作物サイクル当たりの作物量
4. 一平方キロメートルあたりの自然生息地の割合
5. 殺虫剤の使用量
6. 肥料の使用量
7. 農家の年間所得
8. 農場コミュニティのための鍵となる社会指標

OP2Bは、リジェネラティブ農業はシステム的アプローチであり、4つの目的と8つの指標は個別に考えられるべきでないと述べている。また、これら8つの指標を並行して測定することによって、より多くの企業がリジェネラティブ農業を取り入れるきっかけにもなりうるとしている。

リジェネラティブ農業に取り組む企業

パタゴニア

アウトドア用品を販売するパタゴニアは、リジェネラティブ農業に関して先進的な取組を実施している企業のひとつだ。同社は2017年に、他社と協力してリジェネラティブ・オーガニック認証を制定し、食品とアパレルの両分野において認証取得を目指している。この認証は米国農務省のオーガニック・ラベルを一層強化する、最も高いオーガニック基準だという。

Tシャツから始まる気候アクション。パタゴニアのリジェネラティブ・オーガニック

ネスレ

世界最大の食品・飲料メーカーのネスレも、2020年12月上旬に発表した気候変動への対策に向けたロードマップにおいて、「リジェネラティブ農業」を盛り込んでいる。具体的には、リジェネラティブ農業を実践する農業従事者とサプライヤーに対してインセンティブを与え、2025年までにリジェネラティブ農業で原料の20%を調達し、2030年までに50%に相当する1,400万トン以を調達する予定だという。

環境を再生すると利益が上がる。ネスレが投資する「リジェネラティブ農業」とは

ウォルマート

世界最大の小売業者・スーパーマーケットチェーンのウォルマート(Walmart)も、2020年秋にリジェネラティブな会社となることを宣言し、2030年までに少なくとも5,000万エーカーの土地と100万平方マイルの海を保護、管理、回復するための具体的な対策を発表している。

地球を再生する小売業へ。ウォルマートの「リジェネラティブ・カンパニー」宣言

このほか、ユニリーバ、スターバックス、マクドナルド、ジェネラルミルズなど、多くのグローバル企業が2020年にリジェネラティブ農業への転換を表明している(※)。

日本の取り組み

日本では、農林水産省が令和3年5月に「みどりの食料システム戦略」を策定し、化学農薬、輸入原料や化石燃料を原料とした化学肥料などの使用量を低減することや、耕地面積に占める有機農業の取組面積の拡大などを目指している。その中で、より持続性の高い農法への転換の推進が重要とされており、産官学民連携でのリジェネラティブ農業の研究や、専門家を招いての勉強会の開催などを行っている。

まとめ

リジェネラティブな取り組みの推進を後押しする非営利団体「ロデール・インスティチュート」の予測によると、「現存の農地が環境再生型有機農業に移行すれば、世界中の毎年の二酸化炭素排出量の100%を土壌に隔離することができる」という。

食物と繊維の栽培は、世界中の年間温室効果ガス排出量の約4分の1を占めるとも言われるなか、リジェネラティブ農業の拡大は気候変動問題の解決の糸口となるのではないだろうか。土壌を劣化させるのではなく、自然へのお返しができる農業を推進していきたい。

農林水産省が「みどりの⾷料システム戦略」策定して先回り

【参照サイト】 リジェネラティブ・オーガニック認証発表(パタゴニア)
【参照サイト】 環境再生型農業をビジネスに取り入れるメリットとは
【参照サイト】 「再生する農業」エレン・マッカーサー財団学習プログラム From Linear to Circular #11
【参照サイト】 なぜ、リジェネラティブ・オーガニックなのか?
【参照サイト】 農業技術辞典
【参照サイト】Scaling up Regenerative Agriculture – OP2B’s contribution

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